閑話 夏SP part1 ホラー
本編とは一切関係ないです。
思いつきの勢いで書いたので、突っ込みは無しの方向でお願いします。
若干キャラ崩壊が入っているかもしれません。
何故こんなものを描いたのでしょうか......不思議です。
――ゴロゴロォォ!!
激しく降る雨の音と共に近くで鳴り響く雷の音で目を覚ました。
「......何処の屋敷だ? 此処」
ベッドに寝ていた体を起こし、周囲を見渡して呟く。明かりは点いておらず、かなり暗い部屋。キングベッドに一人だけ寝ていた様だ。
横の方を向けば、設置された窓から外が見える。豪雨に雷を伴っていて、暴風に晒される木々が激しく揺れている。
室内に置かれた調度品は高価な物で、ベッドの傍には机と花瓶、それに活けられた黒百合やスノードロップがある。
「力は......使えないのか。どうなってるんだ?」
掌を上に向けた状態で力を使おうとするも、光が弾けるだけで何も起こらない。視ることが出来るのもこの部屋だけ。
警戒度を引き上げながらベッドから降り、窓際へと向かう。
豪風と豪雨が窓を叩き付ける音と雷の音を聞きながら、軽く腰を落とし、右腕を引き絞る。
「シッ」
――ドガァン!!
突き出された右拳は窓に当たり、凄まじい音を鳴らすが罅すらも入らない。
「本気じゃないけど......壊せないか」
特に感情の籠っていない声で呟き、部屋に存在する唯一の扉に目を向ける。キングベッドの正面に有る両開き扉。白色の木製のそれは金色の取っ手が付いている。
何の前触れも無く取っ手が回りガチャっと音がして両開き扉が開いた。咄嗟に気配を消し何時でも動けるように身構える。
ドシンッドシンッと音を立てながら入って来たのは、全長二メートル、四本の腕を持った黒く禍々しく醜い鬼。角は無く、だが鬼だと分かる凶悪な姿をしている。
ネオが寝ていたベッドの前まで来ると確認するかのように見た。
暫く眺め、ネオが居ないのを確認すると周囲を見回し始めた。右、左、と忙しなくキョロキョロと見回し、ネオの方を見た。
ジッと見て来る。目を合わせている訳では無いが、その醜い顔を向けて来る。
暫くその状態が続いた。ネオはその鬼を観察し、どう動いても対処できるようにしていたが、バァン!! という雷の音を合図に、鬼は踵を返した。
緩慢な動きで両開き扉を開き、ガチャっと音を立てながら出て行った。
「面倒臭い......」
鬼の気配を覚えたのは良いが、扉から出て行った瞬間にその気配が途切れた。恐らく、感知できる範囲が限られているのだろう。部屋ならその部屋だけ。廊下ならその廊下だけ、という様に。
それを確認する為に警戒しながら扉を開け、廊下に出る。扉が閉まると、部屋の中が感知できなくなり、代わりに廊下の全体を感知できるようになった。
どうやら扉や階段を境として感知できる範囲が限られる様だ。
廊下は右に一つ、左に二つの扉があり、二方向に分かれた廊下の右の角には下へ行く階段と上へ行く階段がある。右の廊下を真っすぐ行けば、奥の突き当りに扉が一つ。その手前に扉が一つ。
左の廊下には手前から二つの扉があり、奥の突き当りには扉が一つある。
まず、手前から順に扉に触れて行く。が、角に着くまでに有る三枚の扉はどれも開かなかった。
右に曲がり扉に触れる。突き当りに有る扉は開かなかったが、その手前にある扉は開いた。
その中は書斎になっていた。壁には所狭しに本が並んでおり、部屋の中央には机が置かれてあった。その机の上には手帳と羽ペンとインクがあり、無造作に転がっていた。
近付いてよく見てみると、羽ペンのペン先は折れ曲がっており、真面に使えた物ではない。インクの方は中身が入っておらず、周りに少しだけシミがあった。
肝心の手帳は焦げ茶色の見た目をしている。開いてみるが何も書かれていない。ペラペラと捲っていくと、一ページだけ書かれてあるのが見つかった。
『xxxx年六月二日
・失敗した ・すべて逃げ出した ・保護を行う』
それだけが書いて有り、他のページには何も書いてなかった。
そのページだけを破り取り仕舞う。そして机の引き出しを開け、中に有った鍵を取り出した。無骨な造りのそれはこの階の物でないのは分かった。
鍵を仕舞って部屋から出る。そしてそのまま左側の通路まで行き扉に触れるが、どの扉も開かなかった。
仕方なく階段を使って下の階に降りる。
階段を降りて正面には玄関があり、そのおかげで屋敷の一階だと分かった。
降りた階段から左に向かう。左には奥の突き当りに扉が一つあるだけで他は何もない。
扉に触れる。その扉は開いたので中に入る。中は書庫になっていた。規則正しく並んだ本棚にはしっかりと本が詰め込まれている。
本には触れず、奥へ進む。特に何かある訳でも無く、左側に扉が一つあるだけ。
その扉に近付き、鍵穴に鍵を差し込む。カチッと音がして鍵が開いたことを確認し、ゆっくりと警戒しながら扉を開けた。
「はっ!!」
中に入ると、唐突に蹴りが飛んで来た。当たる寸前に足首を掴み、放す。
「シルニアか」
「お兄様、ですか?」
「......シルニア。此処が何処か分かる?」
「いえ、分かりません。気付いたらこの部屋に閉じ込められていて......」
「俺と似た様な感じか。武器は?」
「持っていません」
二人は会話している間も警戒を怠っておらず、周囲に気を配っていた。
ネオはそれに加えてこの部屋を感知して......見つけた。
「あの、お兄様?」
ネオはシルニアの後ろに有った本棚に近付き、一冊の本を少しだけ引いた。すると、ズズズ......と音を立てながら本棚が左にズレた。
ズレた後の壁に触れて、少し横の方に動かすと、僅かに段差がある事が分かった。
少し力を込めて押すと、ガコッと音がして壁が動いた。その先は外に出れるようになっている。位置的に中庭か何処かだろう。
「シルニア、行くよ」
「あ、はい。分かりました」
二人で同時に外に出た瞬間、ネオはシルニアを抱えて前方に飛び出した。
シルニアを降ろして振り返ると、そこには異径が居た。
こちらを向いている六の狼の顔。その反対側にも同じく六つの顔が付いており、二十四本の脚を持った狼の様なナニカ。
「あの、お兄様。あれは何でしょうか?」
「......暫定的に怪狼とでも呼ぼうかな......」
「お兄様! そう言っている場合ではっ!」
「「「「「「ガルルァアァァアア!!」」」」」」
「逃げるよシルニア!」
「分かりました!」
合計十二の顔で吠えた怪狼は二十四本の足を器用に動かし、かなりの速度で逃げるネオとシルニアを追いかける。豪雨で視界が悪く、暴風とぬかるんだ地面で走りにくいが、そんな事気にしていられない。
「お兄様! まだ追いかけてきます!」
「もう少し!」
ネオはシルニアの手を引きながら怪狼から逃げ、隠れられる場所まで向かう。
少しすると、小さな小屋が見えた。ネオとシルニアは咄嗟にその小屋の中に飛び込み、内側から扉を抑えた。
一分程そのままの体勢で居たが、何もない事を確認してネオは身を離す。シルニアはそのまま扉に靠れて座り込んだ。
ネオは小屋の奥の方へ行き、置物の裏側を見ると丸まって震えている黒い物体があった。正確には、それはセラだ。
「セラ」
「ひっ!」
「セラ。大丈夫だから。俺だよ。ネオだ」
「......兄?」
「そう。だから大丈夫」
「兄! 兄! 兄!」
セラはネオに抱き着いてグリグリとネオの(無い)胸に額を押し付ける。シルニアはそんなセラの姿を見て、ほんの少しムッとしたが、特に何も言わなかった。
「落ち着いた?」
「......うん」
「良かった」
「お兄様。セラ。そろそろ行きませんか?」
「シルニア、居たの?」
「居ました」
「......そろそろ行こうか」
セラはシルニアのジト目から逃げる様に顔を逸らし、ネオはそんな二人を見て若干呆れながらも小屋の扉に近付こうとして、足を止めた。
「お兄様?」
「兄?」
ネオは小屋の壁に嵌めてある窓から外を凝視していた。セラとシルニアも気になってネオの視線を追い、無意識にネオのコートを掴んだ。
その窓から見える位置は中庭であり、ネオ達が見ていたのはそこに居る、赤黒いワンピースを着て、膝裏まである長い黒髪を持った少女だ。こちらを向いていない為顔は見えないが、ネオは嫌な予感しかしない。
ネオ達の視線の先からその少女が消えた。
――ドンッ!! ドンドンドンドンドン......!!
「ヒヒヒヒヒヒヒ!! ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
「ひっ!!」
「いやぁ!!」
「......これはちょっと無いかなぁ」
少女が消えた一瞬後には、口の裂けた少女がそのまま嗤い、更に血走った両目を限界まで見開き、両手で窓を叩いた。
赤黒いワンピースだと思ったモノは所々が白く見える事から、そう言う事だろう。
セラはネオに抱き着いて顔を埋め、シルニアはネオの背に隠れた。
――パリッパキキッ
「セラ、シルニア、逃げるよ!」
ネオは罅が入り始めた窓を見ながら、反応の薄いセラとシルニアを引っ張って小屋を出た。直後、パリンッ! と音がして、ドンッ! という音と共に小屋の扉が開いたのが分かった。
後ろを視ると、手足の関節をあり得ない方向に曲げ、裂けた口で笑いながら四つん這いで追いかけて来る少女が居た。
ネオはセラとシルニアの手を引きながら走るが、感知できる範囲に何もない。
それでも走っていると、突如、前方に気配が発生した。
進路を横に変えてから後ろを視ると、猛スピードで突っ込んで来た黒い鬼が居た。緩慢な動きで方向を変え、猪の如く直線を猛スピードで駆けて来る。
少女は四つん這いで動き、どういう原理か進行方向を直角に変えながら追いかけて来る。
それでも逃げていると、横方向から突っ込んでくる気配を感じ、ネオは二人を抱えてその場から飛び退いた。
すると、怪狼が飛び掛かり終わる所であり、その場所に黒鬼と少女が来る所が視えた。
セラとシルニアを抱えながら逃げる。
黒鬼は猪突猛進し、少女はジグザグに追いかけ、怪狼は気配が消えたと思ったら突如横に現れ飛び掛かって来る。
それぞれを躱しながら逃げる事数分。
ネオの感知範囲の中に、階段が現れた。地下行きの石造りの階段。
ネオは其処に向かって走る。少女も黒鬼も怪狼も避けながら逃げる。
更に走り、石造りの階段まで来たネオはそのまま飛び込む。
灯りが無く暗いが、ネオにはそんな事関係ない。
途中階段を足場にまた飛び降りるという事を三回繰り返して、下まで着いた。
階段の上の方からダダダダダ......と音がするが、ネオは気にせず通路を駆ける。
後ろを気にせず走り続け、扉の前まで来た。
ネオはその扉を蹴り開け中に入る。
そして扉を閉じ、傍に有った棚を置いて塞ぐ。
――ドンドンドンドンドン......!!
扉をたたく音が聞こえるが、無視する。
いつの間にか気絶していたセラとシルニアを再び抱え、床を踏み抜く。
すると、ゴガンッ! と音を立てて回転し、ネオ達は穴の中に落ちた。
落ちて一分程すると、光輝く魔法陣が見えた。
ネオ達がその魔法陣に触れると、魔法陣諸共ネオ達の姿が消えた。
――――――――――
ある丘の上。光輝く魔法陣が出現し、その上にネオ達が姿を現した。
「......こんなドッキリ、もうやらないでよ? 二人共気絶したし」
ネオが独り言のように呟く。
「......その程度で気絶するならまだまだだ。それに、幾ら貴様でも、私の行動は縛らせない」
風に乗って、そんな返事が聞こえてきた。
ネオはその返事に肩を竦めながら苦笑すると、シルニアとセラと共に姿を消した。




