SSSランク冒険者
ギルマスの執務室まで来た。中は意外と質素。まあ、ギルマスは元冒険者でドワーフだからっていうのもあるだろうけど。
「さて、お主を呼んだ理由じゃがな、本当にお主があの多頭龍を倒したのか疑問に思っての。多頭龍が倒れた後には魔石も素材も落ちていなかったらしいからの」
なるほど。つまり伝わった情報が嘘かもしれないから確かめたいという事か。まあ、魔石を見せればいいんだけど、あの魔石、ちょっと訳アリだから回収したんだよな。
「本当に倒したのなら、その証拠を見せてくれんかの?」
眼光を鋭くして聞いてくるギルマス。
「あの魔石は、危険」
「何を言っておるんじゃ? 魔石が危険? 倒した証拠がないから言い訳じゃなかろうな?」
面倒臭い。素直に信じてればいいのに。まあ、いいか。見せてあげるよ。
「何をする気じゃ!」
俺が自分の周囲に結界を張ったことに驚いて声を荒げるギルマス。お前が見せろと言ったから見せるんだ。後悔しても知らないぞ。
俺は[無限収納]から多頭龍の魔石を取り出す。
「な、なんじゃ、それは」
俺が取り出した多頭龍の魔石の大きさは直径四十センチ程で紺色をしている。そして、魔石の周囲には黒い靄が漂っている。
その靄の正体は瘴気。人を飲み込み、狂化させたり腐らせたり、アンデットにしたりする。また、ある程度力がある者でも気を失ったり正気を無くしたりする。
今、俺の張った結界の内側は瘴気が溢れており、黒い霧が発生したような状態になっている。
「だから言った。この魔石は危険」
俺はそう言って魔石を[無限収納]に収納して、[森羅万象]を使って結界内の瘴気を浄化してから結界を解除する。
「す、すまなかったな。多頭龍を倒したなんて、それもたった一人の冒険者が倒したなんて、信じられなかったのじゃ」
まあ、普通はそうだろうな。この人、根は優しいから、心からの詫びの言葉を言っている。
「いい。それが普通」
「そう言ってくれると有り難い。ところで、お主の冒険者ランクは何じゃ?」
嘘を吐く必要性を感じないし、本当の事でいいか。
「Cランク」
眼を見開いたまま固まった。いや、驚くのも分かるけど今更感が凄いっていうか、だって、一体だけで国を亡ぼせる程の魔物なんて、高難易度迷宮にはよくいるし。
「ほ、本当なのか? そこまでの力を持っているのにCランクというのは」
ギルカを見せれば早い話だな。
「これは......はぁ」
という訳で渡してみた。ら、疲れたように溜息を吐いた。
「お主、どんな魔石を持っておる? 少しそれを見せてくれ」
え? いや、無理じゃない? ここじゃ、多頭龍並の大きさの魔石を千個以上なんて無理だから。
「多い」
「む? どのくらいの魔石を持っておるんじゃ?」
「千個以上」
「は?」
ギルマス、再びのフリーズ。いや、可笑しいぐらい持ってるのは分かってるけどさ。
「起きて」
「あ、ああ、すまないな。それじゃあ、持っておる魔石を数個ほど見せてくれ」
じゃあ、何にしようかな。持ってる中でも中間位のを三つでいいか。
「こ、これは?」
今、ギルマスの目の前には多頭龍より一回り大きい魔石が一個。眼に見えて大きい魔石が二個。
「これが、ケルベロスの魔石」
そう言って俺はケルベロス(SSランク)の魔石を指さす。大きさは多頭龍の魔石より一回り大きいくらい。色は漆黒の魔石。
「こっちが、ナーガの魔石」
大きさは直径四十五センチ程の深緑色の魔石。因みに、ナーガのランクはSSとSSSの間だからちょっと微妙な位置にいる魔物。
「これが、マシリスウルフの魔石」
大きさは直径五十センチ程で、赤色の魔石。マシリスウルフのランクはSSSランクだけど、その中でも最弱に位置付けられる魔物。
「どこでそんな魔石を......?」
ギルマスが聞いてくるが、俺は既に[無限収納]に魔石を収納して終わっている。
それに、教える気はないし。
「用がないなら、行く」
俺はそう言って踵を返そうとする。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!」
そんな俺を、ギルマスは慌てたように呼び止めた。
なにを言いたいかは大体予想出来るけど、しっかりと聞く。
「お主が本当に多頭龍を倒した事が証明されたからの、冒険者ランクを表向きはSランク、実際にはSSSランクとしたいのじゃが、どうじゃ?」
理由は分かってる。一人でSSランクの魔物を倒せる者がSSSランク冒険者になっても可笑しくないからな。
だが、一般的にはSSSランク冒険者は伝説上の勇者のみとされ、更には冒険者ギルドに対して絶対的権限を持つ。
だから一般的にはSSランク冒険者が最高であり、俺がいきなりSSランク冒険者となるのは不自然だから表向きはSランク冒険者とするのだろう。
「なる」
「分かった。手続きはこっちで済ませておく。用がある時は呼ぶから、これを持っておいてくれ」
そう言ってギルマスは透明な青色のクリスタルを渡してきた。
〔リターズクリスタル〕
対となるクリスタルが存在し、一方に魔力を流すともう一方が反応して発光する。
中々に使い勝手がよさそうな魔道具だ。だが、どうやら数は少ないらしい。
俺は受け取ったクリスタルを[無限収納]に収納して、執務室から出た。




