第33話 ドラゴンゾンビとの戦い
「何事もなく到着っと……」
ボス部屋の前まで到着。またワープで飛ばされないか不安だったが、それは杞憂に終わった。
相変わらずでかい扉だなぁ。見た感じ重そうなのに、ちょっと手で押しただけで開くのが不思議だ。
十分休んだし待つ必要はない。全身を軽く動かして気合を入れなおした後、俺は扉に手をかける。
ゴゴゴゴゴ……
(さーて、何が出てくる?)
開いていく扉に身を任せる。
同時にワープナイフを握りしめ、周りを警戒。
そして部屋の中へ移動した後、中央に四つん這いで鎮座するモンスターの姿が見えた。
「ォオオオオオ……」
巨大なドラゴン。トラックよりデカい。
そして全身はゾンビのように腐っている? 周りにハエをまとわせ、軽く動いただけで肉体がポロポロ崩れ落ちていく。
耐久力はあまりない感じか? あれだけ肉が落ちるということは、再生能力が高そう。
名前は多分、ドラゴンゾンビ。
いずれにせよボスだ。
今まで以上に厄介な相手に違いない。
ボン!! ボン!! ボン!!
「わわっ」
破裂音のようなものがしたかと思えば、壁際に設置されている灯籠らしきものに火が付いていく。
そしてドラゴンゾンビの全身が震えたかと思えば、肉片をまき散らしながら口を大きく開く。
「ォオオオオオオオオオ!!」
迫力のある咆哮。ついにボス戦が始まったか。
まずはお試しにスキルを……
「”ファイアボール”」
最早、お馴染みとなった”ファイアボール”による牽制。
ある程度、結末は見えているが今回はどうだ?
カキィン!!
「えっ」
弾かれた? ”ファイアボール”がドラゴンゾンビの周りに展開されたオレンジ色のバリアに防がれた。
見た感じ、バリアはドラゴンゾンビを覆うように展開されている。
低耐久をバリアで補っているのか……ずるくね?
「ォオオオオオオオ!!」
「あぶなっ!!」
すかさずドラゴンゾンビの口から紫色の炎が放射状に吐かれる。
俺は自身に”武身強化”をかけ、炎とは反対側へと飛び込んで回避。
チラッと後ろを見れば、炎が吐かれた場所がドロドロに溶けていた。
俺の”酸液”みたいだ。スキルの範囲も俺のとはケタ違いに広いが。
「……これもダメか」
物理攻撃ならと、ワープナイフをドラゴンゾンビへ振り下ろすも、再び謎のバリアによって阻まれる。
挙動を見る感じ、防御力が高すぎて効かないというより、そもそも攻撃が無効化されているみたい。
バリアはドラゴンゾンビの周りに隙間なく展開されている。
穴を突くことはできない。
何か突破方法があるのか?
俺は辺りを見回し、怪しい場所をくまなく探していく。
何か変わった場所……場所は……
「灯籠?」
突然、明かりのついた灯籠。
全部で三つ、壁際に囲うように置かれている。
今のところ怪しい場所はここしかない。
……ぶっ壊してみるか。
「”ファイアボール”」
俺はドラゴンゾンビの後方に配置された灯籠へ”ファイアボール”を発射した。
すると……
「ォオオオオオオオ!!」
灯籠が破壊されると同時にバリアへヒビが入る。ドラゴンゾンビも明らかに嫌そうな声をあげている。
なるほど。灯籠を全部壊せば、ドラゴンゾンビのバリアが消えるってことか。
ギミック付きのボスなんて面倒なヤツを用意しやがって。
ま、弱点が分かってよかった。これで攻略できる。
「オォオオオオオオオ!!」
再び咆哮。周囲が揺れたかと思えば、地面の中から這い出るように現れるゾンビ軍団。
召喚スキルか。ゾンビ自体は遅いとはいえ、ボス部屋という限られた空間で集団で襲い掛かってくるのは非常に厄介。時間が経てば経つほど俺は追い込まれるだろう。
「はぁっ!!」
ゾンビは頭を斬り飛ばすだけで動かなくなる。
しかし数が多い。斬っても斬ってもゾンビが減らない。
数の暴力って強いな……
スキルも無駄遣いするわけにいかないのに。
戦闘系スキルで残っているのは”武身強化”と”酸液”が一回ずつ。
”ファイアボール”は残り三~四秒で一回使えるようになる。
ゾンビを倒してもドラゴンゾンビに効果はない。
本当に壊さないといけないのは、あの灯籠。
だが灯籠の前には、例のゾンビ軍団が壁として立ちはだかっている。
(にぃ……いち……)
それでも仕掛けなければ。
”ファイアボール”のクールダウンが終わる瞬間、俺は勢いよく飛びあがった。
”武身強化”でも灯籠までは届かない。
だが、火力の底上げならできる。
俺はワープナイフへ”武身強化”を付与すると、灯籠へ向けて思いっきり投げた。
バァン!!
「ォオオオオオオオオオ!!」
バリアにより大きなヒビが入った。効果を確認した後、俺はワープナイフを手元に戻す。
残り一個。それさえ破壊すればドラゴンゾンビのバリアは消える。
「ォオ……ォオオオオ……」
だがボスは簡単にはやられない。
身体を震わせ、前足を天高くあげて、地面を一気に踏み鳴らした瞬間。
「っ!?」
周りのゾンビたちが一斉に灯籠へと集まり始めた。
灯籠に隙間ができないように身体を覆いかぶさっていく。
一体何をして……まさか灯籠を守るために?
ゾンビたちをバリア代わりに使っているのか。
考えたな……だが、周りのゾンビが減ってくれた。
おかげでかなり動きやすい。
ドラゴンゾンビ単体なら避けるのも簡単……
「ォオオオオオオ!!」
って突進!?
腐肉をまき散らしながら、ドラゴンゾンビが俺めがけて一目散に突撃。
一瞬動揺したが、俺は勢いよくジャンプすることで突進を回避する。
ドォオオオオオオン!!
「……なるほど」
ドラゴンゾンビは派手に壁へ突っ込んだ。
が、腐肉まみれでボロボロの身体を例のバリアが守っていた。
捨て身の攻撃をバリアでケアするって……こいつ意外とかしこいな?
「ん?」
と、ここで身体に付与した”武身強化”の効果が切れる。
次の攻撃をかわすのは難しいか?
まいったな……だったら次で決めないとかなり危ないぞ。
(そうだ)
残りのスキルを数えていた時、奇策が頭に浮かんだ。
リスクは高いが、強化されたあのスキルならチャンスがある。
そうと決まれば立ち位置を変えて……
「ォオオオオ……」
ドラゴンゾンビはもう一度、突撃しようと身体を震わせる。
その動きに合わせるよう、俺も前に手を出す。
「オオオオオオオッ!!」
天高く足を振り上げた瞬間、俺は”酸液”をドラゴンゾンビの足元へと放った。
効果範囲が広がっただけあって、ドラゴンゾンビの横幅とほぼ同じくらいの範囲を溶かした。
俺の企みに気づかないまま、ドラゴンゾンビは強く足元を踏み込んだ。
「オオオオオッ!?」
地面に足をついた際、ぬかるんで地盤が悪くなった地面に足元をすくわれ、巨体が大きくバランスを崩す。
だが流石はボスモンスター。
足を滑らせても、その余りある脚力によって前へと飛び出してしまった。
「おっと」
ドラゴンゾンビの巨体が俺の頭上を通り過ぎる。
宙でジタバタもがきながら向かっていく先は……
ガァアアアアアアアアン!!
「ォオオオオオオオオッ!?」
最後に残っていた例の灯籠。俺がいた真後ろにあったのだ。
ドラゴンゾンビの突撃によって群がっていたゾンビ軍団は蹴散らされ、灯籠ごとペシャンコに潰されてしまう。
その瞬間、ドラゴンゾンビのバリアが粉々に砕け散った。
「さて……」
反撃開始だ。
俺は再びドラゴンゾンビへと手を向ける。
ボウッ!!
「”ファイアボール”」
発射された炎弾がドラゴンゾンビへと迫る。
さてさて、バリアなしだとどれくらい効くかな?
一撃とはいかなくても、何回かぶち込めば……
「ォオオオオオオオオオオオオオ!!」
「えっ」
予想外のことが起きた。
”ファイアボール”が命中した瞬間、ドラゴンゾンビの全身に炎が燃え広がったのだ。
ボロボロだなぁとは思ったけど、まさか見た目通りの耐久力とは。
ドラゴンゾンビは炎に包まれ、悲鳴をあげながらその場で暴れ続ける。
「これで終わり……随分あっさりしてたな」
そして動きを止めると、光の粒子となって消えていった。
ピコン!
『レベルアップしました。パッシブスキル:ULTを獲得しました』
レベルアップ通知……ということはドラゴンゾンビを倒したのか。
まさか一日で攻略できると思わなかったが……
「これでゴールドランク、か」
今日はご褒美に何か美味しいものでも買って帰ろう。
ドラゴンゾンビの素材もそこそこ売れそうだし。
面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。
m(_ _)m




