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フリーター生活がしんどいので、副業ダンジョンで日常をちょっと豪華にしようと思う  作者: 早乙女らいか


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第34話 お姉さんからのご褒美

「ゴ、ゴールドランク昇格、おめでとうございます……」

「ありがとうございます……?」


 受付のお姉さんから震えた声と手でライセンスを手渡される。

 視線もどこか遠くを見ていて、まるで現実の出来事ではないと錯覚しているようだった。


「あの、最近シルバーランクに昇格しましたよね?」

「えぇ……頑張りました……」

「しかもソロでの昇格ですか……びっくりして混乱して頭がぐるぐるして……うわああああああ……」


 えっ、急に倒れた。

 俺のゴールド昇格がそんなにありえないのか?

 シルバーに昇格したのが一週間くらい前だったから……早いなぁ。


「あらあら、どうしたの~?」

「如月さぁん!! これ大丈夫なんですかぁ!?」

「んんん? あー、文也くんの件ね……ちょっと確認するわ……」


 と、俺の後ろから紗理奈が姿を現した。


「わぉ、すっごーい。もうゴールドランクに上がっちゃったの?」

「パーティならまだしも、ソロでこの昇格速度は異常でしたので……」

「なら大丈夫よ。彼、すっごく強いから♪」

「えぇ? けどまぁ如月さんが言うなら……」


 どうやら大丈夫になったらしい。

 職員の反応を見る限り、紗理奈はかなり信頼されているみたいだ。


「文也くん、今日はもう上がり?」

「えぇ。このまま家に帰ってゆっくりしようかと」

「んー、明日もバイトよね? だったら……」


 グイッと身体が近づく。

 揺れる胸元に視線が吸い寄せられ、花のように甘い香りが心臓をドクンと鳴らす。


「お姉さんが癒やしのご褒美あげちゃう♪」


 お酒でも入っているのかと思うくらい積極的な行動。

 年上のお姉さんの魅力に、俺はただ頷くしかできなかった。


◇◇◇


「協会内にこんな施設が……」

「職員専用のリラックスルームよ。私は職員というより指導員に近いけど、まあいいわ」


 一度協会の近くでご飯を食べた後、俺は紗理奈に案内されるがまま関係者用のスペースへと進んでいく。

 食事の味なんて覚えていない。それだけ紗理奈の存在が刺激的すぎた。

 紗理奈には見透かされているのか、扇情的なアピールを喰らい続けるハメになった。


「おー、意外と広い」


 白い廊下を通り抜けて、「如月紗理奈」と書かれたネームプレートの付いたドアを開く。

 仮眠室にしては広く、テーブルやベッドに加えシャワールームまで付いている。一日休む程度なら十分な設備だ。


「たまにいるのよ。ここで職員と探索者が夜を過ごすって」

「えっ」


 夜を過ごすって、そういうことだよな?

 やっぱり職員と探索者の間で仲良くなることってあるんだ……


「あぁごめんごめん。いやらしい意味じゃないのよ?」

「頭ピンクですみません……」

「そんなことしたら使用禁止になっちゃうからね〜」


 まずはシャワーを浴びてきて、と言われたので素直に脱衣所に入る。

 大きめのパジャマが俺のか?

 この準備の良さ、もしかして最初から部屋に連れ込むことを計画していた?


 まぁ細かいことを気にしても仕方ないか……

 泥や汗で着心地の悪い服を脱いでいき、そのままシャワールームへ足を運ぶ。


「あー……」


 温かいシャワーが疲れと汚れを優しく流してくれる。

 布団に入っているような気持ちよさ。風呂に入っていたら一瞬で寝落ちしていたな……シャワーでよかった。


 このままゆっくり浴び続けてもよかったが、紗理奈が控えているのでさっさと身体を洗うことにする。


「……多いな」


 置いてあるボトルが六本。加えてよくわからない道具もいくつかある。

 一応ボトルにはボディソープなどと名前が書いてあるので迷うことはない。

 トリートメントだけはギリわかる。多分、女性のケアには必要なのだろう……


◇◇◇


「あがりましたー」

「はーい♪ じゃ、ささっと入ってくるわね~」

「ゆっくりで大丈夫ですよ。俺はくつろいでいるので」


 小さく手を振りながらシャワールームへ入っていく紗理奈。

 と、同時に聞こえてくる布がこすれる音……


 まずい。俺が聞いたらダメなやつだ。

 動画でも見て気を紛らわそう……


(ゴールドランクかぁ)


 未だ実感が湧かない。

 特典で指名依頼や素材買取時のポイントアップがあると聞いた。

 けど、ダンジョンに入って一か月も経っていない俺からすれば、情報が多すぎる。


 俺はダンジョンに向いているんだろうな~っていうのが半分。

 そのうち痛いしっぺ返しを喰らいそうだと不安になるのが半分。


 マイペースが一番。だけどマイペースにしてはランクアップのテンポが良すぎる……


「あがったわよ~」

「はーい……」


 と、スマホを眺めたり今後のダンジョン活動について悩んでいると、紗理奈がお風呂から上がってきた。

 そして無意識に振り向いた俺の視線に入る、中心が思いきり開いたピンクのネグリジェ。

 慌てて顔を元に戻した。


「あらあら? 胸元くらいでそらしちゃって♪」

「健全な男子には刺激的なんですよ……」


 ホテルの時といい、この人は隙が多すぎる……!!

 それでいて、見られても平気なのが余計にタチが悪い。


「さて……こっち来て」


 紗理奈がベッドを指差す。

 二人くらい余裕で寝られそうな広さだ……ってまさか?


「ベッド、うつ伏せになって」

「あ、はい」


 言われた通りうつ伏せに寝転がる。体重をのせると柔らかい敷布団が俺の身体を優しく受け止めてくれる。このまま一緒に寝るのか……?

 確かにご褒美だけど、健全な男女が一緒の布団というのは……


「な、何をするんだ?」

「それはねぇ……大人の快楽よ♡」

「おとっ……!?」


 やっぱりいやらしい意味じゃないか!!

 ワントーン上げた紗理奈の甘い声が、密室をより扇情的な空間に仕立て上げる。

 淫らなものも含めていろんな妄想を頭に浮かべる中、紗理奈の手が俺の身体へ触れた。


「……やっぱりね」

「へ?」

「かなり凝ってるじゃない。ちゃんとストレッチしないとダメよ?」


 よいしょ、と紗理奈が腕まくりをすると、その細い指で俺の身体を強く揉み始めた。

 あぁ、大人の快楽ってマッサージか。確かに子供にはあまり必要のない行為だ。


 また、恥ずかしい勘違いをしてしまった……


「エッチなことだと思った? ご所望ならオイルマッサージもできるわよ♡」

「……通常コースでお願いします」

「ふふっ、照れてるところも可愛い♡」


 わざと紛らわしい言い方をしたな?

 紗理奈って俺より年上? だからか、こうして大人の色気を利用したからかい方をしてくる。


 怒ったりはしない。

 むしろ弄ばれるのも悪くないと思う自分がいる。


「あーそこ……いい……」

「特に腰が酷いわね……バイトのせい?」

「かがんだりするからな。けど、ダンジョンよりは楽だよ」

「ダンジョンと比べたらダメよ~」


 しかし、紗理奈のマッサージは上手いな……

 ゆっくり圧をかけるように押してくるけど、痛くはない。

 指だけでなく、手のひらや肘などあらゆる部位を駆使してほぐしてくれる。


 あと、お風呂上がりだからいい匂いがする。


「長いことダンジョンに潜ってるから、身体のケアとかいろいろ覚えちゃうのよ」

「……やっぱりガタが来るのか?」

「というより、大怪我をしたくないから?」

「あー……」


 もし骨折でもして、何日もダンジョンに潜れない時間が続くとしたら……

 心の中がズシリと重くなる。収入が途絶えるイメージが浮かんでしまう。


 怪我をなくすことはできないけど、減らすことはできる。

 俺も気をつけよう……


「文也くんとか特に心配よ。あなたは一人でどんどん潜っちゃうから」

「……マイペースに進んでるつもりなんですけどね」

「全然マイペースじゃないわよっ。ハイペースすぎるわ」

「あいてっ」


 軽くデコピンされてしまった。

 ううむ、俺としては安全第一で動いているつもりなんだが……

 やっぱり周りとの認識にズレがある気がする。


「……文也くん♪」

「へ? わわっ……」


 と、急に身体をくるっと返されたかと思えば、目の前には優しい瞳で見つめる紗理奈の姿があった。

 そして頭がいつの間にか彼女の膝の上に……


「今日はもうゆっくり休んで。ゴールドランクになった、ちょっとしたご褒美よ」

「いや、でも……紗理奈もマッサージ……」

「私も? ふふっ、じゃあ今度お願いしようかしら♪」


 まぶたが重くなる。口が回らない。

 意識の中に過去と現在の記憶が混ざり合っていく。

 あぁ、眠い……紗理奈と、まだ話したいのに……


 吐息交じりの囁き声と共に、虚ろな視界が紗理奈の顔で埋め尽くされる。


「おやすみなさい……文也くん♡」


 そして目を閉じた後、口元に柔らかい感触が。

 俺の意識はそこで途絶えた。

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― 新着の感想 ―
溜まる一方ですな☆
いい感じにドキドキですネ♪
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