第27話 隠れたモンスター
「何もないな……不自然すぎるくらいに」
ただ広いだけの部屋。
通路にすら鉱石や宝箱の偽物が置いてあったというのに、ここにはモンスターすらいない。
罠か? そう身構えつつ、石を投げて確認したが何も反応しない。
“武身強化”を発動した状態で入ってみても同じ。
気持ち悪いなぁ。
今まで何かしらのギミックがあったのに、あまりにも怪しすぎる。
「お試し感覚でスキルを……凄いですね」
「無駄遣いしてるように見える?」
「いえいえ。文也様が凄いお方なんだなと」
実質無限とはいえ、クールダウン中はスキルが使えないんだけどね。
長時間の探索という面においてはクールダウンは便利だけど、強敵との戦闘になれば短時間で連発できるMPの方が強いと思う。
もっとも、スタック数やスキルの種類が増えているせいで、その弱点が徐々に解消されてはいるが……
クールダウンはMPの上位互換じゃない。
多分。
「真下か……」
再び“気配察知”を発動して真下を見ると、先ほどの黄色いモヤモヤが表示されていた。
やっぱりここには何かある。
そして何かを起動すれば真下のモンスターと戦える。
ギミックに近づいてはいるんだけど……回答が思いつかない。
……少しゴリ押してみるか。
「静、時間かかってもいい?」
「大丈夫ですよ。何をなさるつもりで?」
「地面を掘ってみる」
「……スキルで?」
「そういうこと」
地面を掘るだけでスキルを……と思っているのだろう。
だがこれが俺のやり方だ。慣れてくれ。
「ほっ……ほっ……」
まずは“武身強化”で強化したシャベルで穴を掘る。
身体も含めて強化されているため、前と比べてかなり掘るスピードが上がっている。
そして、ある程度掘り終えた後に穴から這い出て、“酸液”と“ファイアボール”で交互に掘っていく。
もちろん、スキルは残している。
静がいるとはいえ奇襲されたら怖いから。
「そういえば静って四階層にワープできるよな?」
「えぇ。端末には触れていますので」
「俺が静の手を掴んでワープをしたら、その端末に行けたりするのか?」
「残念ながら不可能ですね……ワープは登録者とそれに関連する物しか運べないので」
「あー、取り残されるのか」
掘っている最中に思いついたズルだったが、残念ながら使えないらしい。
やっぱり登録自体は俺がしないとダメか。
「一応強い人とパーティを組めば楽々行けますが……」
「それって本人が強くなるわけじゃないから後半で詰まない?」
「……おっしゃる通りです」
強いヤツに腰巾着になるメリットもなさそうだ。レベルアップには使えるかもしれんが、危険も多いだろうし。
ちゃんと実力で一階ずつ降りてね~ってことだ。
「四階層を超えたら五階層……ボスってどんなヤツだった?」
「静の時は巨大なヘビみたいなモンスターでしたが……」
「……まさかボスもランダム?」
「みたいですね……人によっては巨大なスライムが出たとかなんとか」
ランダム好きだなぁ。ネット上に攻略法が充実していない理由はそこか?
ゲームみたくリスポーンがないから試行回数も重ねられない。当然データも集まらない。加えて、あらゆるランダム要素。
……殺意が高いなぁ。
ダンジョンというものを生み出したやつは、なかなか性格が悪いと見えた。
「お」
話しながら掘っていると、奥の方がキラリと光る。
赤とか緑とか色んな光が重なっていて、まるで虹のよう。
あれがモンスターか? ギラギラしてて眩しいな……
「これは……ジュエルゴーレムじゃないですか」
「珍しいやつか?」
「条件を満たさないと出現しないんです。まさか四階層に生息しているとは」
それが何もない部屋の正体か。
本来なら地面に埋まっているジュエルゴーレムが、条件を満たした探索者がいる地面からドーン!!と飛び出してくる……って感じか?
しかし、俺は条件とか何も知らないのでただ掘り進めた。
結果、ジュエルゴーレムが隠れている場所までたどり着いたわけだが。
「戦ってもいい? スキルで攻撃すれば起きるはずだ」
「あれだけスキルを使っても全回復……スケールが凄すぎて感動しています」
「感動するとこあった?」
静の感情が高まるポイントがよくわからない。
まぁいい。全スキルのクールダウンが回復してから喧嘩を売るとしよう。
使うスキルは……“ファイアボール”でいいか。
「……いくぞ」
「はいっ」
俺は光へと狙いを定め、落とすように“ファイアボール”を放った。
「コォオオオオオオオオオ!!」
「っ!! 来ます!!」
部屋中に甲高い咆哮が響き渡る。
開けた穴からビリビリするようなオーラが溢れ、身体の鉱石もより一層輝き出した。
「ゴリ押しでも案外いけるもんだな」
「想定してなかっただけ、かと?」
「それもそうか」
普通はここまで穴を掘るヤツなんていないか。
掘ったところでMP切れでボコされるだけだし。
ま、結果オーライということで。
ピュオンッ!!
「うおっ……結構速いな……」
「パワーもあるので気を付けてください」
「ちなみに静、戦ったことは?」
「すみません、これが一回目です……断片的に情報は知っていますが」
「あぁ、謝らなくていい。大丈夫」
地中から物凄い勢いでジュエルゴーレムが飛び出し、地面へと着地する。
鉱石で包まれた巨体はとても派手だ。肩や腕には鋭利な鉱石が飛び出すように配置されている。見るからに固そうで、体当たりされただけでも相当なダメージを喰らいそう。
それでもって対策方法はなしと。正面からぶつかるしかないか。
「静は後衛でサポート、俺は前線でヘイトを買いつつ、どのスキルが効果的か調べてみる」
「わかりました。決して無理はしないでください」
「りょーかい」
方針を決めたところで、俺は“武身強化”で身体を強化して前へ飛び出す。
まずは足元の関節から狙ってみようか。ワープナイフにも“武身強化”を付与し、守りが薄そうな関節部へと振り抜く。
ガキィン!!
「っ……二重でもダメか」
関節まで固いのか。パッと見た感じジュエルゴーレムはビクともしてないし、ダメージは何も入っていない。
恐らく“ファイアボール”との三段付与でも厳しそう。
ならば“酸液”を……
「あれ?」
溶けない? “酸液”をジュエルゴーレムの身体に浴びせたのに、“酸液”はただ鉱石の表面を濡らすだけだった。
あ、そうか。“酸液”って相手の耐久力より火力が上回らないと発動しなかった。
単純に火力不足ってわけか……これは厳しい戦いが続きそうだ。
「コォオオオオオ……」
全身が光った?
特に胸元付近に光が集まり、威圧的なオーラが増していく。
「ジュエルゴーレムはビームを放ちます!! 絶対に避けてください!!」
「まじ?」
ビームなんて撃つのか!?
俺は静のいる位置から反対側へ駆け出し、ジュエルゴーレムのヘイトをなんとか集める。そして光の集束が収まった瞬間……
「コォオオオオオオオオオ!!」
巨大な光の線が俺の元へと発射された。
轟音と閃光に空間が支配され、ビームによる威力だけでダンジョン内がとてつもない振動に襲われる。
たった三~四秒の出来事とはいえ、圧倒的な光景だった。
「あっぶな……穴があって助かった」
ジュエルゴーレムを見つけるために掘っていた穴。
ビームが撃たれるより先に俺は飛び込んでいた。
(とてつもない耐久力と高火力……弱点はどこだ?)
火力でゴリ押しするには固すぎる相手。
加えてここは四階層。パーティ前提で攻略するにしても全員が一斉にスキルを放ってもダメージが通るとは思えない。
何か弱点が仕込まれているはずだ。
ま、いろいろ試すしかないんだけどな。




