A3 その二 『冷え性』 極
▲極立ぴかリ▲
アマネに襲われた次の日、私とアマネは、普段と変わらず、一緒に居ました。……正直、私は最初はそれなりに警戒をしていましたが、アマネは昨日のことを反省してくれたのか、私の胸を揉む以外、恐い瞳で見つめてくることはありませんでした。
そして、お昼休み。二人で机をくっつけて、お弁当に舌つづみを打ちます。私は、それとなく、昨日、セセギ君が唱えた、「DJ」について、問うことにしました。
アマネは、ふぅ、と小さく溜息をつくと、声を細めて語ります。
「私ね、小さい頃、一人遊びするのが大好きだったの。それでね、ラジオのDJを、よくしていたんだ。まぁ、それを、どうやらセセギに聞かれていたの」
「なるほど……」
「私だけの秘密のはずだったのに、あの野郎……聞いてやがったんだなぁ。最悪」
アマネはチッ! と舌打ちを放ち、私のお弁当をじっと見つめます。その視線が、ぐっと持ち上がり、私の顔を捕えました。
「今日は行かないんだ?」
「え……あ……はい」
「なんで?」
「作ってきていないので……」
「どうして?」
「今日は、寝坊したので」
「嘘でしょ」
「ホントです。昨日は……非常に疲れてしまい、帰宅すると、すぐに眠ってしまいました。変な時間に寝たので、少し寝坊してしまい、作り時間はありませんでした」
「うーん、昨日何かあったっけ?」「私は殺されそうになりました」「別に殺す気は無かったんだけど……。ただ、少し暴走してしまったのは、認める」
「少し、という言葉では、あの姿は収まりきりませんよ……」
「まぁ、人間はね、他の動物と違って、理性を備えて自分を抑えつけたって、そんなのただの薄い膜なの。ちょっと本能で刺激されたら、途端に暴走しちゃう。故に、私のあの行動も、仕方のないんだよ!」
「と、意味不明な理論で話を変えないでください、あと、……足をスリスリしないでくださいッ!」
アマネは靴を脱ぐと、机の下で私の足を撫でていました。ちょうど教室に誰もいなかったのをいいことに、段々と位置が上がってきます。
「怒りますよ」
「私、冷え性だから、足裏が冷えるの……。暖めさせて、リンちゃんも暖めてあげるから」
私は溜息をつき、「DJとは、どんな感じで語っていたのですか?」と笑顔で問います。すると、アマネの顔が引きつり、私を睨んできました。足も、止まります。
「人の、……嫌な思い出を甦らせないで」
「黒……歴史、というのですか?」「そうそう、私の黒歴史なの。思い出すとうぎゃー! って言いたくなる経験、リンちゃんもあるでしょ? リンちゃんは、そういう嫌な想いを、他人に与える非道い子なの?」
「変な行為、をしないのなら、もう二度と言いません」
「変な行為って?」アマネはニヤニヤしながら問います。「アマネが行っている、これです」「これって?」「私の体を、触らないでください!」「ただのスキンシップじゃん? それの何がおかしいの?」「アマネのスキンシップには、私を犯そうとする邪念が籠り過ぎです」
その通りです。
アマネは、私を、性的な目で、毎日見つめていたのです。そう告白された途端、今までアマネが私と触合っていた時、アマネは夢心地な目で私を見つめているのを理解します。時折、夜遅くに突然アマネから電話がかかってくることもありました。……何故か、妙に息を切らしながらです……。うぅうう、最悪です。
しかし、それで、私はアマネを嫌いになったと問われたら、わかりません。確かに、アマネが私をそういう「そういうって?」ド変態な眼差しを向けていたと理解すると、気持ち悪いと思いました。アマネの妄想の中で私はアマネに弄られ、ついには現実でもレイプを仕掛けられたのです。嫌って当然で、私もそれは妥当と感じています。ただ、告白された前後で、アマネが変わったと聞かれたら、否定します。
アマネは、何も変わっていません。故に、私も、アマネを怖くなったとは、あまり思えないのです。まぁ、私を異性を愛するように好きと言われて、あぁ、言われてみたらそうですね、はい。と思ってしまう私がいます。
故に、アマネと離れるわけにもいかず、ましてや離れたいとは一欠けら……は嘘ですけど、ずっと一緒に居たいです。
「やれやれ、リンちゃんを気持ちよくしてあげようと思っているのに」
「押付けがましい言い方で言わないでください。ハッキリと申しますと、気持ち悪いです。アマネに変なところ」「ってどこっ?」「股や胸やお尻をなでなでされても、気持ち悪いだけです! 変態、ド変態! ……うぅぅ、なんで目をキラキラ輝かせているのですか?」
「いや、リンちゃんみたいなちんちくりの美少女に変態変態と罵られたら、興奮した。少し濡れた」
「キモイです……」
「罵倒されてオナニーしまくりな人に言われたくありません」アマネは、多分私のマネをしながら、言いました。