報告書① 証言
一通目は、調査員の報告ではない。ある女性の、聞き取り証言の記録である。彼女の身に起きたことを、担当者が書き起こしたものだ。以下、原文のまま記す。
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あの電話が鳴ったのは、二十三時十一分でした。時計を見たので、覚えています。
うちの電話に、番号は出ませんでした。非通知でもない、ただの空白。出るつもりはなかったんです。でも、なぜか、手が伸びていました。
母の声でした。
三年前に亡くした、母の声です。「元気にしてる?」って、いつもの調子で。私、泣いてしまって。しばらく、話しました。母は、私しか知らないはずのことを、いくつも言い当てました。仏壇の花を替え忘れていることまで。
最後に、母は言いました。「もうすぐ、迎えに行くからね」。
優しい声でした。だから私、「うん」って、答えてしまったんです。
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証言は、ここで終わっている。担当者の付記によれば、この聞き取りから三日後、この女性は、自宅前の交差点で、車に撥ねられて亡くなった。信号は、青だったという。目撃者は口を揃えて言った。「あの人、誰もいない方に向かって、笑って、頭を下げて、それから道路に出ていった」と。
痛ましい事故だ。だが、これだけなら、我々の扱う事案ではない。
問題は、同じことが、県内で、他にも起きていたことだ。死んだ肉親から、二十三時十一分に電話が来る。数日のうちに、その人が死ぬ。二通目は、その"電話"の出所を、突き止めようとした記録である。




