これはエピローグじゃない
敵の猛攻に撤退を選んだ僕らは最短距離にあった警察署に駆け込み、警察官を複数人伴って先ほどまで熾烈な攻防を繰り広げたあの崖の上へと戻ってきた。
その時にはもうすでに、横から襲ってきた集団の影はなく、またおじさんの姿もそこにはなかった。
確認できたのは、地面を、木の幹を、二つの墓石を、覆い隠すように貼りついた血痕のヴェールのみ。後の検査で出たそれの結果はおじさんのものだった。
「……」
目の前の惨状に言葉を失っていると、僕は墓石の足元の地面の一部に、妙に盛り上がってる箇所を発見する。
居ても立っても居られなくてその場所を掘り返すと、見慣れたポリ袋が土の裏から全身を現した。
「……おじさん」
中身はお決まりのUSBメモリ。
これがどんな情報を孕んでいるのかは定かではないが、確かなことは一つ、おじさんが最後にこれを僕に託してくれた。
僕はおじさんの遺志を胸に抱え、その場を後にした。
僕はその日のうちに、のぶちゃんの元を訪れおじさんが亡くなったことを伝えた。それは僕が責任を持ってしなくちゃいけないことの一つだと思ったから。
それに至るまでの詳細は、結局真相を語るのが怖くて、話の輪郭だけぼかして説明した。
彼女は終始無言で僕の話を聞いていた。
そうなんだと呟いて最後は納得を示したように見えたけれど、きっと本心ではない。
彼女が辛そうに唇を噛むのを前にして、僕は何できなかった。
いや、何もしなかった。するべきではないと思った。なぜって、あの人があんな結末を辿るきっかけとなったのは、間違い無く僕なのだから……。
彼女にも気持ちを消化する時間が必要だろうと思い、僕は長居せず屋敷へと帰ってきた。
単に僕が独りになりたかっただけなのかもしれない。
自室に入った僕は、それからというもの、ただ部屋の天井を茫然と見えげていた。そして、終わってから頭の中に濁流となって流れ込んでくる後悔に身を委ねていた。
嫌でも勝手に思考が回る。
一体、何が正解だったのだろう。
僕はどこで道を踏み違えたのだろう。
あの時、僕は誰を信じるべきだったのだろう。
おじさんか、自分か、四ノ葉さんか、あるいは第四の誰かか。
きっと、おじさんの言う『納得のできる後悔』は、到底僕にはできない気がした。
いつかは割り切れる日が来るのだろうか?
……わからない。
今はそんなこと、わかりたくもない。
何も見ない。何も感じない。何も考えない。
僕は深く世界を閉ざした。
【名探偵】は何も、信じない。
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