第二百五話 未完の勝利
――喉元の刃は折れず、ただ見えぬ場所に隠されただけ。
サステヒを封じたという戦果は、確かに巨大な利益をもたらしました。しかし、それは決して「勝利」の終着点ではありませんでしたにゃ。砦の奥底に潜む六千のバラムーユンタニア軍。彼らは壊滅したわけでも、戦意を喪失したわけでもなく、ただ静かに、ミケ軍の喉首を喰らうちょうど良い「瞬間」を待ち続けているのですにゃ。
いわば、この「祝戦会」は、爆薬の山の上で開かれたダンスパーティーのようなもの。
兵士たちが勝利の酒に酔い、一時的な安寧に浸る一方で、サステヒの冷たい石壁の向こうでは、六千の憎悪と殺意が研ぎ澄まされていく。殲滅しきれなかった「脅威」を残したままの祝杯は、果たして勝利の余韻なのか、それとも、これから始まる本当の地獄への「供物」なのか。
この不気味なほどの「静寂」と「熱狂」のズレが、次なる悲劇の引き金になることは、もはや疑いようもありませんにゃ……。
だが――そこで物語は都合よく終わってはくれなかった。
サステヒ砦を外側から封じ込めることには成功したものの、
肝心の六千名のバラムーユンタニア軍を殲滅し、決定的な打撃を与えることだけは、ついぞ叶わなかったのである。
砦の中に陣取る敵軍は、まるで岩肌の奥深くに潜む獣のように息を潜め、
力を削られることもなく、むしろ温存されたまま牙を研ぎ続けていた。
その事実は、バツネ側から見れば――
喉元に突きつけられた刃が、一本も折れていないのと同義だった。
制地権への脅威は依然として重くのしかかり、
この戦いは“封じただけでは終わらない”ことを、誰の目にも明らかにしたのだ。
ゆえにサステヒ砦の完全制圧には、もはや“決戦”以外の選択肢が残されていない。
砦を落とすか、落ちるか。
逃げ場のない二択が、大陸の空気をひりつかせていく。
だが――そんな緊迫の中でさえ、現場の兵達を束ねる者達は、
短い勝利の余韻だけは逃すまいとするかのように、
祝戦会
――と名のつく宴を開くのだった。
戦端は開かれたまま、脅威は砦の奥で生き延びているというのに。
勝利の祝杯は、静かに忍び寄る影の前触れであることを、誰もまだ知らない。
はい、というわけでお届けしました第二百五話、「未完の勝利、あるいは虚飾の祝杯」!
皆さん、今回のこの状況……。
「脳が震えるほど『不気味』だにゃぁぁあああ! 敵がまだピンピンしてるのに祝杯を挙げるなんて、背筋が凍る違和感を感じるにゃ!!」(笑)
一瞬の安堵が最大の致命傷に繋がる展開。ミケさんはこの「殲滅しきれなかった」事実をどう捉えているのか。それとも、この状況すらも自分の「天常」の範疇だと言い張るのか……。
「ミケ将軍……いや天常大将軍! その杯に満たされているのは酒じゃない、次に流れる兵士たちの血かもしれないんだにゃ!!」(笑)
次回、「祝戦会、あるいはジギフリット達の楽しみ」。
レナード大隊長とジギフリット副将軍が楽しく祝戦会を楽しみます。
お楽しみに!




