第二百三話 出陣の選別
――「1500の生贄」、あるいは地獄への片道切符。
かつて千の命が砕け散ったサステヒ砦に対し、レイ将軍が提示した「1500」という数字。それは戦略的な計算ではなく、ミケ天常大将軍の「不興を買わず、かつ軍功を立てるに足りる」という、あまりにも危うい忠誠の賭けでしたにゃ。
「よかろう」
ミケが下したその許しは、部下への信頼ではなく、1500の命を「自分の威光を試すための消耗品」として差し出すことを許可したに過ぎません。歓喜に沸く幕舎、響き渡る万歳の三唱。しかし、その熱狂はどこか空虚で、これから始まる凄惨な殺戮劇への幕開けを告げる不吉な鐘の音のように響きますにゃ。
レイ将軍は、主君の期待に応えたいという「狂信」を鎧に纏い、灰色の巨壁へと進軍を開始します。しかし、彼が率いるのは勝利を確信した軍勢ではなく、ミケという「鬼」を背負わされた、帰る場所なき亡霊たちの群れなのかもしれませんにゃ……。
「――さて。」
ミケ将軍は、卓上の地図を指先でなぞりながら、
ゆっくりと、まるで運命を支配する神のごとく言葉を紡いだ。
「話を戻すぞ。
サステヒ砦攻撃の件だ。
……誰が、あの砦を叩き潰す?」
一瞬で空気が張り詰める。
その沈黙は、命を奪うほど重い。
誰もが喉を鳴らし、目配せし、しかしミケの機嫌を損ねぬよう
慎重に慎重を重ねて呼吸すら整える。
やがて、レイが一歩進み出た。
「――及ばずながら……」
その声は震えていたが、覚悟に裏打ちされた震えだった。
「このレイが……出陣いたしましょう。」
ミケの視線が、ゆっくりとレイを値踏みする。
褒められるか、殺されるか――
その二択だけしか存在しない魔王の審判のようだった。
「そうか、レイ。」
ミケは、まるで玩具の強度を確認するかのように
軽く問いかける。
「必要な兵力は、いかほどだ?」
「――1500名ほど、かと。」
答えた瞬間、周囲の兵たちの背筋に冷汗が伝う。
1500という数字が、ミケの逆鱗に触れぬかどうか。
その一点だけで、全員の命運が左右されるのだ。
だが、ミケの返答は――重く、圧倒的だった。
「よかろう。」
低く、満足げに言い放つ。
「1500名……連れていくがいい。
サステヒ砦を、俺様の名のもとに沈めてこい。」
その一言で、場の重圧が一気に弾け飛ぶ。
レイは深く頭を垂れ、声を震わせながら言う。
「はっ……!
天常大将軍のお望みとあらば、
このレイ、いかなる地獄であろうとも突破して見せましょう……!」
その瞬間、部下たちも次々に膝をつき、
地鳴りのような声でミケを称え始める。
「「「天常大将軍万歳……! 万歳……! 万々歳……!」」」
こうして――
レイ将軍は1500名もの兵を率い、
サステヒ砦へと出陣することになるのだった。
その決断が、後に彼らの運命を狂わせるとも知らずに。
第二百三話! 「出陣の選別、あるいは1500の死地」!
皆さん、今回のレイさん……。
「脳が震えるほど『死亡フラグ』を立てまくってるにゃぁぁあああ! ミケさんの機嫌を伺いながら決めた1500という数字……それがサステヒの壁を前にした時、どれほど無力な『数』に変わるのか。」(笑)
ミケさんは高みの見物を決め込み、レイさんは破滅へひた走る。この絶望的な構図の中で、まだ動かない「あの男」が、ついに……。
「レイ将軍! その『万歳』の叫びが、サステヒの断崖で絶叫に変わるまで、あと何刻残されてるんだにゃ!? ここからが地獄の本番だにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいはレイ将軍の決断」。
ミケ将軍とレイ将軍がこの地に関して話し合います。
お楽しみに!




