第百九十八話 世界の正解
――「滅び」こそが愚者への唯一の回答。
執務室に響くミケ天常大将軍の笑い声。それは、救いを求める者に差し伸べられる手ではなく、奈落へと突き落とすための冷徹な宣告でしたにゃ。ミケにとって、タズドットの抵抗や外交的策略は、勇気でも知略でもなく、単なる「世界の理に逆らったエラー」に過ぎません。
「実に、世界はよく出来ている」
その言葉の裏にあるのは、自分を絶対的な「正解」とし、それ以外をすべて「不必要なノイズ」として排除する狂気の完成ですにゃ。レイ将軍がその言葉に圧倒され、ただ沈黙して頭を垂れるしかないように、ミケの支配する世界では「思考」すらも罪。ただひれ伏し、彼の描く残酷な筋書きに従うことだけが、唯一の生存条件となってしまいました。
従わぬ者は、自ら滅びの道を選んだのだと断じ、その死すらも「秩序の証明」として楽しむ。この男の目には、もはや流れる血の赤さも、絶叫の痛みも届きません。ただ、自分という天常が正しく機能しているかどうか……その一点のみが、この地獄の関心事なのですにゃ……。
「全くもって……愚かな選択かと。」
レイがそう呟いた瞬間、
ミケ将軍の口元が愉悦に震えた。
「そうだ……そうだとも、レイ。」
ミケはゆっくりと振り返り、
まるで正解を告げられた教師のように満足げに頷く。
「その反応が聞きたかった。
我が部下よ、お前達は実に分かっている。」
彼の声音は低く、しかし底の見えぬほど深い。
「当然だろう?
タズドットが“どうあるべきだったか”。
本来なら、膝を折り、額を地に擦りつけ、
我々にサステヒ砦を差し出し――
命乞いをする以外に選択肢など無かったのだ。」
レイは唾を飲み込みながら答える。
「ですが彼らは……最後の最後まで抵抗を……」
「そうだ!」
ミケは椅子から立ち上がり、
獣の吠え声のような笑いを洩らした。
「何故、タズドットは従わなかったのか。
何故、無様に足掻き続けたのか。
何故、己の浅知恵を貫こうとしたのか。」
怒りではない。
失望でもない。
ただ“理解不能な愚者を笑う”声音。
「その答えが……これだ。」
ミケの目が細められた。
冷たく、残酷で、何より底の無い“支配者の目”だった。
「愚者は愚者の道を選び、
滅ぶべくして滅ぶ――
実に、世界はよく出来ている。」
その言葉に、レイはただ頭を垂れるしかなかった。
はい、というわけでお届けしました第百九十八話、「世界の正解、あるいは愚者の葬列」!
皆さん、今回のミケさん……。
「脳が震えるほど『選民思想』だにゃぁぁあああ! 自分の思い通りにならない存在を『壊れている』と断定するその冷酷さ……底知れない『異質さ』を感じるにゃ!!」(笑)
どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ必死に生きようとしても、圧倒的な力を持つ者に「無意味だ」と一蹴されてしまう絶望。タズドットの人々が繋ごうとした命のバトンを、ミケさんは「走り方が気に入らない」という理由だけで焼き捨てようとしているんだにゃ……。
「ミケ将軍……いや天常大将軍! あんたの言う『よく出来た世界』には、人間の温もりなんて微塵も残ってないにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいは天常大将軍の決断」。
ついに物語は臨界点へ。ミケ将軍とレイ将軍がバラムーユンタニアに関して語り合います。
お楽しみに!




