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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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44章 勇者艦隊 VS 魔王艦隊 02

『ウロボロス』に集まった青奥寺たちは、アンドロイドクルーによって各自の部屋に案内されていった。


 その後『統合指揮所』に真っ先に戻って来たのは、当然のごとく銀河連邦独立判事の新良であった。


「先生、先ほどの移動時間の件でお話があるのですが」


「わかってる。それと出発前にライドーバン局長にも連絡をしないとならないしな」


「では一度『フォルトゥナ』へ移動しましょうか。実は先ほど、緊急の連絡も入りましたので」


 おっと、今の言葉に勇者の勘が働いてしまった。恐らく『魔王』関係で新しい動きがあったのだろう。


「先生、何か気になることが?」


「いや、これが勇者なんだなって再確認してた。じゃあ行こうか」


 怪訝な顔をする新良とともに、俺は新良の宇宙船『フォルトゥナ』へと移動した。


 毛むくじゃらエリート宇宙人、銀河連邦捜査局のライドーバン局長とは、いつもの通り操縦室での対談となる。


『ミスターアイバ、どうやらいよいよその時がやってきたようだな』


「ええ、その通りです。ちょうどこちらから連絡しようと思っていたところなんですよ」


『それは幸運な一致だ。さて、ではまずミスターアイバの話を聞こうか』


「わかりました。はじめに『次元の扉』についてですが、扉の『向こう側』にある惑星が特定できました。これは今データを送ります。新良頼む」


「はい先生」


 新良が『フォルトゥナ』のAIに指示をしてデータを転送する。


『少し失礼する』と言いながらその情報を確認して、ライドーバン局長は『なるほど』とうなずいた。


『予想はしていたが、やはり未開惑星を拠点にしていたか。「惑星X-0192」……この情報はすぐに評議会に上げよう。ミスターアイバはすぐにでもここへ向かうつもりなのだね?』


「ええ、時間が経てば経つほどロクなことにはなりませんので」


『うむ、了解した。評議会でも調査艦隊はすぐ出動できるレベルでの編成は済んでいるという話だ。遠からず後を追えるだろう……と言えればよかったのだがね』


「なにか起きたわけですね。もしや『魔王』の手先が別に惑星侵略でも始めましたか」


 まあ他にやりそうなこともないからなあ。『魔王』の手下には犯罪組織『フィーマクード』があり、連中は依然として一惑星を落とせるレベルの艦隊を保有しているはずなのだ。


 予想とすら言えない俺の言葉に、ライドーバン局長は毛むくじゃらの顔をしかめた。わかりづらいが多分苦笑いだろう。


『その通りだよ。元「フィーマクード」所属だったと思われる艦隊が突如として惑星ベルヌーイに出現、惑星宙軍の防衛網を突破して、たった一日で大陸中にモンスターをばらまいた』


「メチャクチャなことをやりますね。しかしモンスターをばらまいたということは、宇宙船に乗せて運んだということですか」


『情報によると、モンスターが詰まった巨大な繭のような物体を投下したらしい。やり方としては、強引なラムダ転送によって大気圏内に直接その物体を転送したようだ』


「そんなことが可能なのですか」


『現有の銀河連邦の技術では、巨大質量のラムダ転送はできないことになっている。彼らが所有する「オメガ機関」によるものかもしれない。ミスターアイバのところではそのような技術は可能になってはいないのかね』


「転送に関してはまだ研究していないと思います。ただ多分、やらせればできる気がします」


 実際イグナ嬢と『ウロボちゃん』のタッグなら、なんでもできそうな気がするんだよなあ。異世界の天才的研究者と超科学による万能助手、そして研究サンプルとしての勇者と古代竜という組み合わせはあまりに危険すぎる。


『やはりそうか。ともかくそのようなわけで、奴らが別の惑星にも同じことをするだろうことは想像に難くない。もちろん全惑星にその情報は通達し、備えてもらっているが、『オメガ機関』を搭載した奴らの艦隊を防げる軍は現状惑星宙軍レベルでは存在しない』


「そうすると、まずはその艦隊を先に潰した方がいいですね。自分が『魔王』の本拠地に言っている間に戻ってこられても困りますし」


『うむ……まあ、そうだろうな』


 とライドーバン局長の歯切れが悪くなったのは、もともとその艦隊の対応は銀河連邦の管轄だからだろう。もちろんその情報を俺に知らせたのは、あわよくば……という考えもあったはずだが、さすがにその考えの通りになったことに多少の後ろめたさがあるのかもしれない。


「その繭みたいな物体というのも気になりますし、こちらで対処しましょう。とりあえず被害のあった惑星の近くに移動してその艦隊の行き先を調べてみますが、もし襲われている惑星があればすぐに知らせてください」


『わかった、そうしよう』


 というところで、新良が俺の方を向いて声をかけてきた。


「先生、例の件は局長に知らせてもいいでしょうか?」


「例の件?」


「移動時間の件です」


「ああ、構わない。どうせわかることだしな」


 俺が許可を出すと、新良はモニターの方へ顔を向けた。


「局長、相羽先生の艦隊は、連絡があって数分後には当該惑星に到着できます。連絡はリアルタイムでお願いいたします」


『数分で到着……まさか』


「次世代型航行装置が完成したそうです。地球から『惑星X-0192』まで3分で到着するとのことです」


『待ちたまえ。地球から「惑星X-0192」までは……いや、わかった。しかしそれは……』


 今度は明らかに苦笑ではない形で、ライドーバン局長は渋い顔をした。


 済みませんね、こちらの異世界天才とAIが暴走していて。


『……まあ、それはまたの機会に詳しく話を聞こう。ともかく今は「魔王」と「フィーマクード」の残党、そして各惑星のモンスターとダンジョンへの対応が先だ』


 数秒で、ライドーバン局長は『先送り』という賢い選択をしたようだ。できれば『聞かなかったフリ』という選択もあると言ってあげたいが、彼には選べない選択肢だろう。


『もし惑星侵略艦隊への憂いがなくなれば、調査艦隊はそのまま「惑星X-0192」に派遣できるようになる。「オメガ機関」搭載艦で編成された、銀河連邦でも最新鋭の艦隊群だ。ミスターアイバの多少の助けにはなるだろう、というのがメンタードレーダ議長からの言葉だ』


「ありがとうございます。大いに頼りにさせていただきます」


 その後いくつか事務的な話をして、ライドーバン局長との通話は終了となった。


 現在『次元の扉』が開いてモンスターが溢れてきている惑星については、ギリギリで抑え込んでいるところもあれば、被害が出始めているところもあるらしい。


 それを抑えるためにも、さっさと『魔王』を倒す必要があるわけだが、その前に『フィーマクード』の残党改め『魔王艦隊』をなんとかしないといけないようだ。


 また新良の星が狙われたりしたら厄介だし……おっと、そんなことを考えた瞬間勇者の勘が反応してしまった。


 調べる必要がないのはありがたいんだが、自分自身ちょっと怖くもあるんだよな、こういうのは。

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