44章 勇者艦隊 VS 魔王艦隊 03
『フォルトゥナ』から『ウロボロス』の『統合指揮所』に戻った俺は、とりあえず全員にもう一度集合してもらった。
ライドーバン局長からの連絡によって、すぐに動かなくてはならなくなったからだ。
全員の前で『魔王艦隊』のことを説明して、
「というわけで、さっき出発は8時間後と言いましたが、すぐに出発することになりました。なにか問題がある方はいらっしゃいますか?」
と聞いたが、もともと彼女たちはすぐ出発するつもりで来ているので「問題ありません」ということになった。
「じゃあ『ウロボロス』、惑星エルクルドの近くに移動してくれ」
『惑星エルクルドは、私が艦長に無理矢理奪われた場所ですね~。了解でっす』
う~ん、その情報は要るんだろうか。
事情を知らない明智校長や関森先生の視線がちょっと怖いので、後でしっかり説明をしておこう。
それとは別に、当然ながら新良が強く反応をした。
「先生、どうしてエルクルドに行くのでしょうか。そのような情報があるのですか?」
「いや、俺の勘だ。だが多分当たりだと思うぞ。エルクルドは早い段階でダンジョンが出現した星だし、奴ら一度そこで失敗してるからな」
「確かに……。それに先生の勘であれば間違いないでしょう。気にしていただいてありがとうございます」
「そりゃ新良の故郷だからな」
と、そこまで口にすると、他のメンバーも事情を察したようだ。
清音ちゃんは「新良先輩いいな~。わたしは地球だから皆と同じだし……」とか言っていて、少しほっこりしてしまう。
『マギジャンプの準備が完了しました~。皆さん着席をお願いしまっす』
『ウロボちゃん』の指示に従って、全員用意された席に座る。戦艦の中枢区としてはそこそこ広い『統合指揮所』だが、新たに多くのシートが増設されているので少し手狭になっていたりする。
『では艦長、命令をお願いしまっす』
「え? あ~、じゃあマギジャンプ開始」
俺が声をかけると、『ウロボちゃん』はビシッと敬礼する。
『了解。マギジャンプスタンバイ。ジャンプ開始5秒前、4、3、2、1、マギジャンプ開始』
艦内に低い唸り声のような音が響き渡り、そしてわずかな振動が走る。宇宙空間を表示していた正面モニターがブラックアウトするのはラムダジャンプの時と同じである。
『ラムダ空間内をマギドライブにて航行中。目的地までは後102秒』
正面モニターに102秒の表示が現れ、それがどんどん減っていく。
なお、『統合指揮所』内は、低い音が響いている以外は特に何もない。
近くに座っていた山城先生が、「ねえ相羽先生」と声をかけてきた。
「なんでしょう」
「さっき惑星エルクルドって言っていたけど、その星って遠いのよね?」
「何千光年とかそういう単位らしいです」
「それが102秒で着いてしまうなんて、きっと凄い技術なんでしょうねえ」
「銀河連邦の技術だともとは8時間くらいかかる距離なんですけど、ウチのAIと天才技術者が新しい技術を作り出したみたいで、そこまで短縮したみたいです」
「それって多分すごいことだと思うのだけど、相羽先生が言うと当たり前みたいに聞こえてしまうわね」
「真面目に考えてるとストレスになりますからね」
なんて答えたのが聞こえたのか、新良が光のない目でなにか言いたそうにこちらを見てきた。
ライドーバン局長の態度でもはっきりしていたが、この技術は真面目に銀河連邦にも変革をもたらすレベルのものだからなあ。でもダンジョンが出現して魔導具が解析されれば、いずれは開発されるであろう技術なので許してもらいたい。
モニターのカウントダウンは順調に数字が減っていき、遂に10秒前になった。
『マギジャンプアウトまで後5秒。4、3、2、1、ジャンプアウトしまっす』
『ウロボちゃん』の声と同時に正面モニターが回復し、宇宙空間を映し出すようになる。
正面に少し大きく見える星が新良の母星エルクルドだろう。前に一度来たので見覚えがある。
『マギジャンプ終了。予定座標への到着を確認。惑星エルクルド付近に宙軍艦隊を確認。他に識別不明艦なし』
「宙軍はこちらに気付くか?」
『当方「隠蔽シールド」展開中のため、ラムダ機関利用技術では探知は困難でっす。現在エルクルド宙軍の動きはありません~』
「そうか。じゃあここでしばらく様子を見るか。銀河連邦からの連絡があれば――」
と俺が言いかけたところで、『ウロボちゃん』がビクッと身体を震わせた。
『400キロほど離れた場所にラムダジャンプアウトしてくる宇宙船がいまっす。その数、10、30、50、80、120さらに増加中。識別不明ですが、銀河連邦の艦隊でないことは明らかでっす』
「あらら、思ったより多いな。勘が当たったとはいえ、こりゃちょっとキツそうか」
艦長席で頭をかきつつ、不安そうな目を向けてくる新良に俺は苦笑を返してやった。




