42章 訳あり女子強化策 12
『魔王城』ダンジョンの攻略だが、青奥寺たちメンバーは依然としてやる気に溢れていたが、さすがに2階を攻略するまでに時間がかかってしまった。
異世界からは今日中に帰らないといけないので、3階4階5階のザコ戦は俺が先頭に立って殲滅することにした。
剣を振るのすら時間がもったいないので、戦闘はすべて魔法の連射で片をつけることにした。時々ルカラスにもブレスを使ってもらったが、こちらもひと吐きでBランクモンスターの集団が消滅する。
容赦のない行軍だが、見慣れているメンバーはもう完全に無反応である。もちろん初めて見る明智校長は見ていて顔色がだんだん変わってきていたが、最後は皆と同じく無表情になっていた。
3階4階のボスは青奥寺たちに戦わせたが、今日一日でAランクモンスターを倒せる自信は十分につけることができただろう。まだルカラスの補助は必要だが、それもじきに必要なくなりそうだ。
冒険者10人でAランクモンスターを倒せるとなったら、これは異世界でも英雄となるレベルの腕前である。彼女たち的には、俺というおかしいやつがいるので実感が湧かないみたいだが……。
そして今、目の前に大きな黒い両開きの扉があった。あの『魔王もどき』のボスがいるボス部屋に続く扉である。
「さて、この先には多分『魔王』に匹敵するボスがいる。この間の『サタン』より強い奴なのでちょっと刺激が強いかもしれないけど、俺が勇者時代どんなやつと戦ったかは見ておいてくれ」
「はいっ!」
あの『サタン』より強いとか言われたら普通は尻込みするところだが、そういう雰囲気が一切ないのが頼もしい。
それだけ俺が信用されているということだろうが、だとしたらありがたいことではある。
俺は聖剣『天之九星』を取り出してから、扉をゆっくりと押し開いた。
以前と同じく、城の謁見の間みたいな作りの広い部屋で、黒い床や壁、天井の中で、床に玉座まで真っすぐに敷かれたカーペットだけが赤い。
巨大な玉座には、鎧のような黒い甲殻で覆われた身長5メートルの巨人が座っている。
紫に光る目が4つ、螺旋を描くツノが2本。玉座の前の床には赤い刃の直刀と青い刃の曲刀が刺さっている。
「うわ~、見ただけですごく強そうですね」
「恐ろしいほどの圧があります。先生が一緒でなければ、すぐに逃げてしまいたいくらいですね」
双党と新良がそんな感想を口にする。
戦闘好きの絢斗すら、ごくりと唾を呑んで、
「これはさすがにボクでも戦いたいと思う相手ではありませんね。あのクゼーロくらいならそろそろ戦えそうな気がしていましたが、これは完全に格が違う」
などと言っている。そういった差を感じるのも、実は相当な実力がないとできないことである。
校長や九神はかなり顔色が悪いが、そもそも普通の人間が『魔王』相当のモンスターを前にして立っていられるだけでも大したものだ。ただ、九神は宇佐さんに、校長は雨乃嬢に身体を支えられていたが。
「さて、皆はここで待機していてくれ。致命的な攻撃は俺が受け止めるが、もし流れ弾が来たらルカラス頼む」
「うむ、それくらいなら防いで見せよう。しかしなるほど、これが魔王か。あの時のハシルのパーティでよくぞ勝ったものだ」
「そうだな。あの時の俺は今の半分も強くなかったからな。やはり仲間の力は大きかったよ」
「あやつらも超一流の冒険者だったな」
と昔話をしてから、俺は『魔王もどき』こと『デーモンキング』のところへ向かった。
さて、戦闘自体は2回目なので、メンバーたちに見せるために少し戦ったあとは、要所を勇者専用魔法『隔絶の封陣』で防ぎ、最後は対魔王用必殺技『流星斬り(仮)』で締めて終わりにした。
なお『流星斬り(仮)』は、俺の全魔力を聖剣『天之九星』で聖属性に変換して剣にまとわせるという技である。俺の身体と剣が白く輝く姿はきっと勇者らしくカッコよく見えるだろうと思っていたのだが、
「まぶしくてよく見えませんでした」(青奥寺談)
ということで残念な結果に終わった。
ただまあ、俺の本気の一撃のすごさはよくわかってもらえたようである。なにしろたぶんあれを爆発力とかに変換すると、『ソリッドラムダキャノン』を超えるくらいの威力になるはずなのだ。うん、自分でも言ってて頭がおかしいな。
さて、お楽しみの宝箱だが、出てきたのは白金色をした全身鎧……というより、新良が着用する『アームドスーツ』に似た、ちょっと未来的な形状の装甲服(?)だった。
新良も同じ感想らしく、直立しているその鎧に近づいて、あちこちを調べ始めた。
もちろん他の娘さんたちも興味津々であり、清音ちゃんはスマホで撮影しまくっている。
レアが表面をぺたぺた触りながら、
「これはプレートアーマーでぇすか? 形はSF映画に出てくるものみたいでぇすが?」
と聞いてくる。
「多分そうなんだろうと思うんだが……」
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六一式魔導鎧
オリハルコン製の魔導鎧
絶大な防御力を誇る反面非常に重いが、魔力によって関節部分が駆動するため、着用者は未装着時と同等以上の動きをすることができる。
ただし重量が変化することはないので、素早い動作には適さない。
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『アナライズ』してみたが、どうやらかなり現代的な全身鎧、というより、SFに出てくるパワードスーツに近いもののようだ。
そのまま説明すると、新良も、
「『アームドスーツ』の原型に近いものですね。単純な防御力ならこちらの方が高いかもしれません」
と言っていたが、確かに全身オリハルコン製の鎧というだけでとんでもない代物ではある。俺が勇者をやっていた時代なら、家どころか城が一つまるまる買える値段が付いただろう。
「もしかしたらこれからの戦いに使えるかもしれないから、持ち帰ってイグナ嬢や『ウロボロス』に研究させよう」
「もし可能なら、銀河連邦へも技術提供をしていただけるとありがたいのですが」
「そうだな。銀河連邦にもバーゼルトリア王国にも技術は提供しよう」
もっともこれを量産するにしても、オリハルコン製で作るのはコストからほぼ不可能だろう。
俺みたいに10トンとか得られたとしても、オリハルコンは加工するだけですさまじいエネルギーを必要とするのだ。
異世界にはそれを専門とするドワーフという種族がいるが、彼らだってそう簡単に扱える金属ではない。
まあそれも『ウロボロス』と『ヴリトラ』など、『ラムダドライブ』を装備した宇宙戦艦がいれば別だが、と考えると、やっぱり俺はとんでもない人間になってると再確認してしまう。
ともかくこれで今回の訳あり女子異世界鍛錬は終了……と思っていたら、青奥寺がやってきて、
「先生、このダンジョンは今後の戦いのことを考えれば、できれば定期的に来たいです。放課後とか来られませんか」
というとんでもない無茶振りをしてきた。
「ん~、さすがに平日は無理じゃ……」
と断ろうとしたら、校長が、
「もし必要なことであれば、学校でも対処はします。相羽先生の業務量を減らすことも考えましょう」
と言ってくれた。
というか俺の業務量って減らせるんだろうか。現状でも担任と部活顧問以外は結構免除してもらってる気がするんだが。
それはともかく、青奥寺たちのお願いについては先のオリハルコン10トンの件もあるから、少しくらい聞いてもいいかという気にはなる。
強くなりたいというなら、それを後押しするのが勇者の役目だからな。




