42章 訳あり女子強化策 11
『魔王城』ダンジョン2階のボスは、巨大亀型ドラゴンの『タラスク』だった。
強烈な毒液ブレスを放ってくる六本足の怪獣みたいなモンスターだが、ルカラスに囮役を任せて、俺は見ているだけにする。
なお戦闘に参加するのは青奥寺、雨乃嬢、絢斗、宇佐さんの前衛組と、双党、新良、レア、リーララ、カーミラの後衛組だ。
「相羽先生、あのような巨大なモンスター相手に彼女たちだけで大丈夫なのですか?」
タラスクを見ただけで腰を抜かしそうになっていた明智校長だが、さらに顔を青ざめさせてこちらを見てくる。
まあどう見ても人間が相手をできる見た目のモンスターじゃないからなあ。
「魔力さえ使えるようになれば、あれくらいのモンスターとも戦えるようになりますよ。実際自分が召喚された時代でも、軍が頑張って倒していましたからね」
「軍が相手をするようなモンスターということですか?」
「もしくは上位の戦士が20人くらいでも大丈夫です。青奥寺たちは装備も含めると、当時の上位戦士を超えてますから問題ありません」
俺が自信たっぷりに答えたからか、明智校長も肩の力を抜いて、タラスクのほうを眺め始めた。
なお清音ちゃんはバッチリスマホで撮影を始めている。
さて、戦いの方だが、まずはルカラスが翼を広げて飛んでいき、タラスクの鼻面を一発殴りつけた。ドカンと派手な音がして、タラスクがグゥッ! と唸り声を上げる。その一撃でタラスクはルカラスを強敵と認めたらしい。口を開いてブレスを吐き出した。
放水車10台分くらいの勢いで噴射される赤紫色の毒々しい液体を、ルカラスはこともなげにスイスイとかわしていく。しかもその動きは最小限なので、ブレスが青奥寺たちの方へ向かうこともない。さすが軽く2000年は生きている古代竜、自分の役割がよくわかっている。
その間に、双党たちがまず魔導銃を一斉射撃する。
放たれる太めの光線『ジャッジメントレイ』はAランク相手でも十分通用する魔法だが、さすがにタラスクの甲羅は貫けない。すぐに狙いを一本の足に集中すると、光線がプスプスとタラスクの太い足に突き刺さった。
さらに青奥寺たち前衛組四人が二人一組になって、足を一本ずつ斬り付ける。
青奥寺は両手で構えた『ムラマサ』に魔力を通し、それを横一文字に振るう。
魔力によって薄く輝く刃はタラスクの分厚い皮膚を容易く斬り裂いて、その肉までもザックリと断ち切った。返す刃で二度三度と斬り裂くと、足の肉がこそげ落とされて消えていく。なかなかエグい攻撃で、撮影してる清音ちゃんが気分悪くならないか心配になるくらいである。
もちろんそんな攻撃を受ければ、タラスクもたまったものではない。
グアッ!? と唸って、足を激しく動かして移動を始める。その動きは巨体に似合わず速いのだが、すでに3本の足に少なくないダメージを食らっているために、途中で動きが鈍ってしまう。
「ちょっと止まってねぇ!」
そこでカーミラが、杖を掲げて魔法を発動した。杖頭から巨大な炎の槍が、二重螺旋を描いて飛んでいき、タラスクの横面に突き刺さる。ズドンと凄まじい音がしてタラスクの頭部が炎に包まれ、巨体が大きく傾いた。
俺の『トライデントサラマンダ』ほどではないが、普通にAランクの魔導師は超える魔法である。歩く18禁は伊達じゃなかったか……と思っていたら、当のカーミラ自身が目を見開いて驚いた顔をしていた。
「ちょっとちょっとぉ、全力で撃ったら魔法の威力がすごく上がったんだけどぉ!? もしかして先生にもらったこの杖のお陰なのかしらぁ!?」
「あ~、多分そうだな。っていうかお前が今まで使ってた杖、相当に粗悪品だったんじゃないか?」
「そんなことはないと思うわよぉ。この杖がおかしいのよ絶対」
まあ最強クラスの杖なのは間違いないから、一般の品と比べるとそれくらいの違いはあるのだろうか。
俺たちがそんなことを話している間に、青奥寺たちは、タラスクの足3本を完全に破壊していた。
立つこともできなくなり、タラスクの巨体が崩れ落ちて地響きを起こす。
「頭部を集中攻撃っ!」
双党の号令で、後衛陣が一斉にタラスクの頭部に射撃を集中させる。
すでにさきほどのカーミラの一撃で大きなダメージを受けていたドラゴンの頭は、複数の光線の直撃を受けてみるみる穴だらけになっていく。『ジャッジメントレイ』の集中攻撃はかなりエグい。
「止めに首を落とせ!」
と、頃合いを見計らって俺が叫ぶと、前衛陣が一斉に『機動』の魔導具を起動、背中に光の翼を生やして、滑空してタラスクの首回りに向かった。いやもう実戦投入とか素晴らしい娘さんたちである。
その後四人の前衛陣が、ブレスを吐く力すら失ったタラスクの太い首をザクザクと斬り裂いていって、『カオスブロブ』に引き続き、Aランクモンスターの討伐となった。
「うむ、大したものだな。ハシルのハーレムメンバーはすべて超一流の冒険者だ。ハシルの第二以降のつがいとして我も認めてやろう」
翼を生やしたルカラスが俺の前に降りてきて、そんなふざけたことを校長の前でのたまった。
しかしその言葉に反応したのは校長ではなく清音ちゃんだった。
「えっ、ルカラスさん。戦えないとお兄ちゃんのお嫁さんになれないんですか!?」
「む? 別にそのようなこともないが、ハシルの足手まといになるようではハシルのつがいは務まらぬぞ」
「私は絶対に足手まといにはなりません! これから魔法の勉強をいっぱいします!」
「ならば怠らぬよう鍛錬に励むのだ。そうすればハシルもつがいとして認めるであろう。なあ、そうであろうハシルよ」
ルカラスがとんでもない同意を求めてくると、清音ちゃんだけでなく、三留間さんや九神、そして明智校長の視線が俺に集まってきた。
全員が心配そうな顔をしているのだが、その内心は人それぞれだろう。清音ちゃんは多分子どもっぽい感情から俺に認められるかどうか心配なだけだろうが、他の3人は間違いなく俺の人間性を心配しているのだろうと思われる。
とりあえずその場はルカラスのこめかみをグリグリすることで誤魔化したが、4人の心配顔は継続したままだった。
一応校長には「あれは冗談ですから」と念を押しておいたが、「相羽先生ほどの人間なら仕方がないのかもしれませんね」と、非常に気になる言葉を返されてしまった。
なにが「仕方ない」のかわからないが、勘違いで学校をクビになるのだけは避けたいところなので、後でもう少し校長とは話をした方がいいかもしれない。
なお、宝箱からは希少金属『オリハルコン』のインゴットが200個ほど手に入った。インゴットは1個で50キロを超える重さがあり、全部で10トンというところだろうか。『オリハルコン』などの希少金属は『ウロボロス』に色々なものを作らせるのにいくらあってもいいものなので俺が全部もらうことにして、メンバーには後で別のものを代わりに渡すという約束をした。
「いえ先生、私たちは先生にはそれ以上のものを色々いただいていますので」
と青奥寺が優等生らしいことを言って少し感動してしまったが、直後に双党が、
「美園、それはダメ。先生にはキチンと貸しをつくっておかないと後で困るからねっ」
とガッカリなことを言ったので中和された。
ちなみに『オリハルコン』は異世界だと金に近い価値があったので、10トンは日本円換算だと兆を超える値段になる。まあ今の地球には『オリハルコン』の市場はないので値段はつかないだろうが……。
まあもとよりタダ働きさせるつもりはないし誤魔化すつもりはない。
勇者コレクションから欲しいものでも選んでもらうなど、後で上手く帳尻を合わせよう。




