42章 訳あり女子強化策 09
さて、今回『魔王城』ダンジョンに入る目的の一つは青奥寺たちの強化である。
すでにBランク、特Ⅰ型相当のモンスターなら2〜3人いれば倒せる彼女たちだが、『魔王』が出てくるとそのBランクモンスターとの戦いが普通になる。
さらに怪獣みたいなAランクモンスターとも戦う場面が出てくるはずで、ゆえに最上位ダンジョンでそれに慣れてもらおうというわけだ。
もちろん、それと同時に『魔王城』ダンジョンが安定しているかどうかを調べる目的もある。前回入った時に、このダンジョンが『魔王城』を模した普通のダンジョンだと判断したが、本当にそうなのか、実は本物の『魔王』となる可能性もあるんじゃないかということを調べる目的もある。
『魔王城』ダンジョンの入口は相変わらず開きっぱなしだった。
「よし、じゃあ入っていくが、最高ランクのダンジョンということは忘れないように。校長先生は護衛の中から出ないようにしてください」
「はい、気をつけます」
10人のアンドロイド兵に囲まれた明智校長はやや緊張した面持ちでそう答える。
初めてのダンジョンが最高ランクなのは精神的もかなりキツくなるはずだ。その上明智校長の性格を考えると、周囲が見えなくなってふらふら歩いて行きそうな可能性があるので釘を刺しておく。
本当は非戦闘員の清音ちゃんや九神も心配すべきだが、それぞれリーララと宇佐さんがいるから大丈夫だろう。ちなみにメンバー全員に各種防御用アクセサリーは配布済みである。
武器については、青奥寺はファンタジー日本刀『ムラマサ』、双党と新良、レアとアンドロイド兵は『ライトアロー』『ジャッジメントレイ』両対応の魔導銃、雨乃嬢はファンタジー日本刀『マサムネ』、絢斗は細身の長剣『デュランダル』、三留間さんは前にも使わせた『聖霊の杖』と『聖霊のローブ』、宇佐さんは片手棍『阿吽』の片割れと『如意棒』、リーララは弓型魔導具『アルアリア』となる。清音ちゃんと九神、校長は丸腰だが、戦闘訓練をしていない者に武器を持たせると逆に危険なので仕方ない。
今回カーミラにも適当な強めの魔法の杖を渡しておいた。七色に輝く水晶が杖頭についたミスリル製の派手な短杖で、確かどこかの魔導師系ボスが落としたやつである。
「ちょっと、これってもしかして凄い杖なんじゃないのぉ!?」
とカーミラは驚いていたが、三留間さんの『聖霊の杖』にはわずかに及ばない程度の武器である。
ところが、
「ハシルの感覚は完全に壊れているからの。その杖とて国宝となるくらいのものだろう」
などとルカラスが脅すので、カーミラの顔が青くなってしまった。というか歩く18禁のくせにレア武器に尻ごみするのが面白い。
「そんな大したもんじゃない。よければやるぞ」
「ええ……っ? まあ、いただけるならもらうけどぉ……。あ、でもその後で身体を要求されたりするのかしらぁ?」
一瞬で歩く18禁に戻った女吸血鬼もどきにこめかみグリグリをして、俺はさっさと『魔王城』ダンジョンの入口に入っていった。
青奥寺の刃のような視線とか、新良の光のない目とか、さらには明智校長の疑惑の目が怖かったわけではないので念のため。
さて『魔王城』ダンジョンの中だが、前に来た時と変化した様子はない。黒い石で作られた壁や天井、床は黒い大理石のようなものが敷き詰められている。
通路は広く、五列縦隊でも歩けるほど。総勢25名でも狭くはないが、範囲魔法を使われたら厄介かもしれない。
しばらく進むと、体格のいい翼付きの人型悪魔モンスター『グレーターデーモン』が現れる。上半身裸だが、身につけてるアクセサリーなどは高級そうで、悪魔界の貴族みたいな出で立ちのモンスターである。
俺一人で来た時は1体ずつ出てきたのだが、今回こちらが25人だからか一度に5匹出てきた。
「『深淵獣』の特Ⅰ型に似たのがいたけど、あれより強いから注意な」
と注意をしておいて、後はすでにやる気満々の青奥寺たちに任せておく。
双党、新良、レア、リーララ、カーミラが魔導銃や魔法を撃ちまくり、相手がダメージを受けたところを青奥寺、雨乃嬢、絢斗、宇佐さんが突っ込んでいく。
ダメージを負ったとはいえそこは上位魔族のグレーターデーモン、そう簡単にはやられない。それでも青奥寺たちは終始優勢に切り結び、それぞれ自分の相手を倒していた。なお残り1体は魔導銃と魔法の集中攻撃で倒されていた。
魔導銃のおかげで後衛陣が充実しているので、最高ランクのダンジョンとはいえザコ戦は複数出てきても相手にはなりそうだ。しかし魔法耐性の高い敵を相手にする時に前衛不在は致命的になるだろう。実際今の戦いも、グレーターデーモンを射撃だけで仕留めるのはかなり難しそうだ。まあ25人が全員『ジャッジメントレイ』を撃てる魔導銃を持っていればいけそうではあるが。
ともかくまあまあ緊張感のある戦いになるので、いい経験は積めそうだ。
さらにダンジョンを進んでいくと、今度は『ロイヤルガード』という、動く真紅の鎧が15匹、隊列を組んで現れる。種別は一応アンデッドモンスターだが、完全物理属性なのでまずはそのまま戦ってもらう。
「撃てっ!」
と双党の声がかかり、6人が一斉に魔導銃と魔法の射撃を始める。魔導銃側は最初から強力な『ジャッジメントレイ』を放つので手加減なしである。
しかしロイヤルガードは装備をしている身長ほどの高さがある四角い盾を装備しているので、魔法を盾で防いでしまう。もちろんいかに上位モンスターの盾とはいえ、上級光属性魔法は完全には防げない。アンデッドは光属性に耐性が低いので、前から2列目までのロイヤルガードは太い光線に穴だらけにされて消えていく。
それでも残りの4体が、槍と盾を構えながら猛然と突っ込んでくる。
するとこちらも前衛陣がかかっていき、1対1の戦いが始まる……が、こちらの前衛4人は基本速度重視タイプなので、重装備で動きの遅いロイヤルガードに対しては終始優勢に戦えてしまう。
問題は盾の守りをいかに突破するかだが、全員が武器に『魔力』を込めることができ、その魔力の量も申し分ないため、盾ごと斬り裂いたり叩き潰したりして終わりである。
特に戦うメイド宇佐さんの、自在に長さを変えられる『如意棒』を使った攻撃は見事で、最後は伸ばした『如意棒』が、盾もろともロイヤルガードの兜を貫いていた。
「ねえ朱鷺沙、その武器ちょっとズルくない?」
戦闘の後雨乃嬢が絡んでいくと、宇佐さんは「ふふっ」と笑って、
「ご主人様に頂いた武器を使いこなすのもメイドの務めです。雨乃もせっかく強力な武器を頂いているのですから、もっと使いこなさいといけません」
などと答えていた。
さて、そんな感じで戦いながらしばらく進んでいくと、ボス部屋に続く大きな両開きの扉の前に出た。
青奥寺たちを見ると、少し疲れているようなので小休止を取る。さすがにBランクモンスターとの連続の戦闘は応えたようだ。惑星ドーントレスでは戦闘回数だけなら数十倍をこなしていたはずだが、やはり高ランクのモンスター戦が続けば相応に体力は使うものだ。
一方で明智校長だが、こちらも精神的に少し疲れてしまっているように見えた。
「戦闘は見ているだけでも疲れますよね」
と声をかけると、明智校長は深くうなずいた。
「そうですね。私も校長として色々な生徒を見てきていますが、彼女らが実際に働いているところを見ることはほとんどありませんでした。しかしこうして彼女たちが戦っている姿を目の当たりにして、自分がどれほどものを知らなかったかを痛感しています」
「ああ、そうかもしれませんね。青奥寺たちは本当によくやっていると思いますよ」
「相羽先生が赴任してきてそのお話を聞いてから、私の知っている世界が本当に極一部なのだということがよくわかりました。それとともに、彼女たちのような存在を学校としてどうバックアップしていくかというのも考え直さなければいけないと感じます」
「今のままで十分にバックアップできていると思いますが……なあ双党?」
近くで聞き耳を立てている小動物系女子に声をかけると、双党はビクッとなってから誤魔化し笑いをしつつこちらに歩いてきた。
「ええと、なんでしょうか~?」
「明蘭学園はお前にたちにとって居心地いいだろって話さ。実際どう感じてるんだ?」
「それはもちろんとてもいい学校だと思ってますよ。任務の時とかちゃんとわかっててもらって休みとか貰えますし」
「だよな」
「ただ担任の先生が私に作文を強制的に書かせるのはどうかと思います。校長先生、それはいいんでしょうか~?」
と、ここぞとばかりに昔のことを告げ口に走る双党。
しかしその狡猾な企みは、明智校長が苦笑いをして、「それは担任の先生にもお考えがあってのことでしょうから」と、大人の回答をしてくれた上に、青奥寺が襟首を掴んでひきずっていってくれたので不発に終わった。




