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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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42章 訳あり女子強化策 07

 俺とカーミラが、バーゼルトリア王国の行政府から宇宙戦艦『ウロボロス』に戻ったのは、現地時間で午後の2時ごろだった。


 観光に行っている他のメンバーは誰も帰っておらず、『ウロボちゃん』が迎えに出てきたのみである。


 俺が戻った旨の連絡を全員に入れると、3時には全員『ウロボロス』に戻って来た。理由は『機動』の魔導具を早く使いたいからだろう。


 早速貨物室に行って『機動』の魔導具の試運転をすることになった。


 女王陛下からいただいた『機動』の魔導具は、弁当箱くらいの大きさの魔導具を背中に背負う形で装着するものであった。


 それに本人の魔力を通せば『機動』の魔法が起動して、背中に半透明の翼が現れるというもので、リーララが使っているものとほぼ同じである。


「わたしが使っているやつの方が、わたし用に調整されてるぶん性能が上だけどね~」


 と自慢していたが、たぶん『ウロボちゃん』とイグナ嬢の手によってすぐにその調整も可能になるだろう。


 なお、魔導具を使うと空を飛ぶのに使用する魔力量が格段に少なくて済むらしいのだが、それでも青奥寺たちの魔力量だと飛行するだけで手いっぱいになってしまうので、魔力を充填しておく魔導具も併用しての運用となる。


「これでリーララちゃんとお揃いだね!」


 と、背中に半透明の翼を広げた清音ちゃんが嬉しそうにする。


「見た目はそうだけど、ちゃんと操れないとダメだからね。浮かれてないで練習するよ」


 魔法に関しては妙に真面目なリーララがそう言ってたしなめる。


 青奥寺や三留間さん、雨乃嬢や宇佐さんも同様に魔導具を起動して、背中に翼を出現させた。


 そこで気付いたのだが、清音ちゃんやリーララたち初等部組はともかく、青奥寺たち高等部組や、雨乃嬢たち大人組が背中に翼を生やす姿は、ちょっと無理して仮装してる感があってなんというか……


「あっ、先生! 今すごく失礼なことを考えましたね!」


 小動物系の双党が、鋭い勘を働かせて指を突き付けてくる。


「いや別に……」


「嘘です~。先生ってすぐに顔に出るから丸わかりなんです~。今絶対似合わないコスプレだって思ってましたよねっ」


「なんでわかるんだよそんなこと」


「先生の考えてることなんてお見通しですからっ!」


 両手を腰に添えてドヤ顔してくる双党。


 だが俺はその時、奴の心の動きに気付いてしまった。


「お前、自分でもそう思ったんだろ?」


「えっ!? ち、違いますけど~」


 あからさまなリアクションをする双党に、青奥寺たちの目が一斉に集まった。


 その中でも、特にショックを受けてそうなのは雨乃嬢だった。


「かがりちゃん、まさかそんなことを思ってたの? それって裏切り?」


「違いますっ。ただ先生の目つきが怪しかったからカマかけただけですっ」


「自分は似合ってるからってそれは酷くない? 確かに朱鷺沙(ときさ)はちょっとキツいと思うけど」


 と宇佐さんの方を見る雨乃嬢。


 ちなみに宇佐さんは訓練時メイド服であることが多いのだが、今日もメイド服である。


 いつもは似合っているメイド服なのだが、背中に翼が生えた瞬間、なぜか強烈なコスプレ感が出てしまったのが不思議でならない。


「私は自覚していますが、雨乃もかなり無理があると思いますよ。諦めて現実を受け入れましょう」


「やだやだ。私はまだ翼の似合う無垢な乙女なの!」


「雨乃が無垢で通用するなら、世の中に18歳未満禁止という区分けはなくなってしまいますね」


「それってどういう意味!?」


 う~ん、確かにそうかもしれないが、存在自体が18禁のカーミラに比べれば雨乃嬢の方がまだ……いや、方向性が違うだけだな。


「あらぁ? 先生、私になにか言いたいことがあるのぉ?」


「いやなにも」


 なんか普通に鋭すぎる女子が多くて困るな。勇者の勘すら及ばないのだからすごい。


 ちなみに、『聖女』こと三留間(みるま)さんは、癖のない銀髪ロングと聖女っぽい雰囲気によって、逆に翼がメチャクチャに似合っていた。


「三留間さんは天使みたいに見えるね」


 とつい口にしてしまったのだが、三留間さんはそれを聞いて顔を真っ赤にして、しかも飛んでいたので墜落しそうになってしまった。もちろん勇者の超反応お姫様抱っこにより事なきは得たのだが、その瞬間周囲から冷たい視線が集中したのは言うまでもない。


 ……いや、助けたんだから冷たい視線はおかしくない?


「先生もそういうことをおっしゃるんですのね」


 という言葉は九神のものだが、その目はちょっと呆れているというか、蔑んでいるというか、そんな感情が浮かんでいた。九神が感情を表に出すのはそれはそれで珍しいのだが。


 ともかく三留間さんを立たせると、


「あ、ありがとうございます。すみません、集中力を切らしてしまいました」


 と頭を下げられてしまった。


「いや、俺がちょっと変なことを言ったのが悪かったから」


「そんな。先生に褒められて嬉しかったんです。それでつい……」


 再び顔を赤くする三留間さん。


 まあ教師から「天使みたい」とか言われたら普通は気持ち悪いよなあ。それを「嬉しかった」とか言ってくれる三留間さんは本当に天使である。


 だから刺すような視線を向けてくる青奥寺さんと新良さんと……ほか何人かは見習うように。


 ともかく本題の『機動』の魔導具の方だが、コーチをリーララに頼むと、全員がすぐに使えるようになった。やはり事前に『機動』魔法の鍛錬をしていたことが大きかったようだ。逆にリーララが、


「わたしも『機動』魔法をきちんとやっておいたほうがいいかな~」


 などと言うくらいであった。


 試しに俺も使ってみたが、魔力充填槽の補助を使うと、想像以上に自分の魔力を使わないで済むのに驚いてしまった。これなら青奥寺たちでも、飛行しながら攻撃に魔力を使うこともできるだろう。


 しかし、個人で飛行できる装置は地球でも昔から研究開発がされているが、地球の物理法則でそれを実現しようとすると大袈裟なものになってしまう。ところが『機動』魔法はジェット噴射とかも一切出さず飛べてしまうので、そういった運用の難しさが一切ない。異世界で規制されるのもむべなるかなといった感じだが、こちらの世界でも扱いは慎重さが必要になりそうだ。


 ともかく、貨物室で楽しそうに飛び回る翼付き女子たちを見上げていると、こちらも楽しい気持ちになってくる。が、俺の隣で同じく見上げている明智校長は、ちょっと羨ましそうな顔をしていた。


「相羽先生、私にはあの道具を使うことはできないのでしょうか?」


「最低限魔力を身体から出せないと動かせないみたいです。校長先生も魔力トレーニングやってみますか? 少し痛い時もありますけど」


 と冗談半分で言ったら、校長はすごい勢いで俺につかみかかってきた。


「いいんですか!? いいんですね!?」


「え、ええ、校長先生さえよければ……。ただ大人が身につけるのは大変ですが……」


「構いません! 是非教えてください!」


 あ~しまったな、こういう人間だって瞬間的に忘れてたわ。空飛ぶ青奥寺たちに気を取られていたせいだな。


 俺が校長に揺すられてるのを見て、ルカラスがまた「やはりハーレムではないか」とか言い始め、カーミラも「まだそうじゃないと思うけど、そのルートには完全に入ってるわよねぇ」とか言ってため息をついている。


 魔法を教えるだけで女性を口説ける、なんて話したら、俺が召喚された異世界ですら馬鹿にされると思うんだがなあ。

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