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解析の勇者-集結の一行

 『時空属性魔法』。

 星術では手の届かない時間へ干渉をするもの。

 先天的な魔法のため、ただ顕現させるだけなら魔法を学ぶ必要も何もないもの。

 ただ、感情のままに命じれば、その魔法は効果を現す。

 「蹂躙せよ(ヴァイオレイト)

 そして。

 三人から、時間が一秒だけ盗まれた。

 一秒だけ、何をすることも許可されないその時間は、戦闘において致命的な隙になる。

 空間爆破。

 さっき宇宙統一方程式で起こしたものよりもかなり少ないが、しかし繊細に制御された圧搾空間が三人の顔の目の前三ミリの所に出現する。

 時空。

 即ち、時間と空間。

 時間を操るということは、空間を操るということであり、空間を操ることは即ち時間を操る事に繋がる。

 解ける硬直、起爆する空間。直径一メートルの球形空間を吹き飛ばす暴虐はしかし、

 「ブラッドストーンっ」

 たった一つの言葉に、膨張する空間を再び押さえ込まれて不発となる。

 だがそれも余裕がある訳では無い。

 「な、んだっ、突然空間爆破の前兆が……!」

 ギイイィッィィィィンンッッ!!×3

 と響く音の中、驚愕の声が続く。

 「……シス、ありがと……。……でも、今の……?」

 「突然現れた……? 何あれ……」

 三人が問題にしているのは、知らぬ間に空間爆破が出現した事、では無い。

 完全に星術を超越した現象を、魔力が無いはずの魔王が行ったことに対してだ。

 魔力がない人間は魔法を使えない。それが大前提のはずだ。魔法とは即ち、魔力に構造を与え、体外に放出し、構造を持った魔力が世界に干渉することで世界を改変する技術の事だからだ。

 その過程で根幹を占める、魔力が存在しないならば、魔力を代償に払わなければ、この世の理を捩曲げる事は出来ないはずだ。

 だが、実際にその現象は発現している。

 魔法でも、星術でも、錬式でも、ましてや宇宙統一方程式でもない未知の公式。

 普通ならばこれで終わる。

 人は理解出来ないものと直面した時、その理解を放置してしまう。いや、経験則から予測しようとする者がいるかもしれない。だが、経験則すら通用しない意味不明な物だったら意味がない。

 『時空属性魔法』のような、彼が世界で唯一、類似するものなど無い方法論には呆気なく敗れ去るしか無い。

 しかし、シスは星術師。

 ブラックボックスを解析し、世界の理論を説き明かすのが星術なれば、同じ手法を用いれば世界の理論以外の解析にも使えるはずだ。

 結局、シスの真骨頂は星術への造形の深さではない。

 全ての物の法則性を解析しようとする、ある意味冷徹な思考力がシスの強さの源なのだ。

 だから。

 シスはいつもと同じく、相手が用いる手法の解析から始める。

 確実にあると予測できる所から相手の手札を暴きはじめる!

 「自分の思い通りに何かを操れて、そこに代償が無いということはありえない。これは世界の全てに共通するルールだ。変数に何も代入しなければ関数が始まらないように、何らかの対価を支払っているのは絶対だ。」

 それに追従するように、追奏するように、二人の少女の声が後に続く。

 未知の存在に出会って蹂躙される魔法使いでは無く、未知の存在にこそ挑戦する星術師を見習って。

 「……確認。……魔王に魔力は存在しない……」

 「ということは、魔力以外のなにか(・・・)を支払っていると考えるのが良い、はずよね?」

 通常の人間ならそこで躓く。魔力以外の物を支払って世界に干渉する手段は無いと理論矛盾を起こす。

 だが違う。自分が知らないだけであると強引に仮定して、未知は未知のまま、虚数のように気付かなければ存在することが分からない方式と仮定して、その真髄を理論の上に導こうとする。

 「初手でこれだけの攻撃を行うということは、戦闘に直接関係する体力、機動力、運などは有り得ないと考えて良い。なら戦闘に直接関係ないもの、又はあってもかなり後に発現するものだ。そしてそれを、今まで出さ無かったことから代償のストック回復が難しい、又は不可能なものだと推察出来る。」

 シスの言葉が、世界で唯一の方式を理論立てて行く!

 「……つまりは直接戦闘には不必要な、しかし生きて行く上で必要になる何らかのもの……」

 「例えば、寿命とかね?」

 ギクリ、とトルナンドの内心が微かに震える。だが分からないはずだ。例えこれだけの物を解析し尽くす化物が敵でも、直接思った事を読み取ることは出来ないはずだ、と断定して敵の解析に誤謬を生むために誘導する。

 実際は事実なのに。

 「いや、違うな! 見当違いにも程があるぞシス君!?」

 そう、嘘をついた(・・・・・)

 「よし、確証が取れた。トルナンドは寿命を代償に支払って、時空を操っている。魔力が動力では無いから正確には魔法では無く異能と呼ぶべきかもしれないがな」

 「…………っ!」

 看破する。

 シスが、トルナンドの嘘を見破った!

 トルナンドは知らない。

 この1000年間で、魔法でも無く、星術でも無く、人の感覚の扱い方がどれほど進歩して来たのかを。

 『真贋観』。

 魔法でも無い、星術ですらない、ただの市井の観察術が発展した形。アウトセントラルのただの店主が扱う、言葉の真贋まで判定する達観。

 嘘をついたときの心理的圧迫が、微かに体に及ぼす影響を確実に捕えて、シスはその嘘を見破った!

 ギリリッと、トルナンドの口から歯ぎしりの音が微かに響く。こんな所で止まっていられない、この復讐を果たす為ならどんな事でもすると誓った、とトルナンドの思考が回る。

 既にセントラルを滅ぼす最終手段は出発しており、今自分がすべきは彼等の足止めだということも忘れて、ただ、目の前の障害を粉砕する為に、激情に駆られる。

 「彼女の為の復讐を邪魔するなぁぁぁぁぁああああああ!!この障害を粉砕せよ(ヴァイオレイト)ぉぉおおおおっっ」

 先と全く同じモーションから、しかし異なる攻撃。

 一定の空間内の時間の速度を速めて、強制的に朽ち果てさせる極悪な範囲攻撃。

 選択された範囲は10メートル四方の立方体。一秒後にくる朽廃攻撃は、内部に捕えられた人間に逃げることを許さない。

 それを。

 「『分解(リソルウ゛)』」

 たった一つの声で、切り抜ける。

 大量の空気を分解し空白地帯になったところへ吹き込む風が、三人をさらって朽廃の範囲から無理矢理逃す。

 無論、これをやったのはシスでもリーナでもビトレイでもない。

 ワン。

 魔法を滅ぼすべきというトルナンドの言葉に反論できず戦えなかったはずのワンだが、しかし、トルナンドの個人的な復讐になら反論は出来る。

 ワンだけではない。

 立ち上がるのは総勢四人。

 「何故だ! 何故立ち塞がる!? ああ、復讐の邪魔をする奴は排除する!」

 「ああ、トルナンド。お前の復讐は俺が止める。」

 遂に揃った一行は、この魔王と相対す。

読んで頂いてありがとうございます!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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