ネットダイアリ-9- つまらない高校生活
亮と別れてから、コンピ研のみんなと話をしながら、放課後の時間を終えた。
帰宅後、戸村からネットで連絡が入った。また、ネットでの対戦である。
「こうも毎週土曜日に対戦するのは、どうかと思うけど」
ちょっと不満げに思う昴だが、かといって土曜日に何か用事があるわけではない。
仕方ないので、参加の意思を伝え、いつも通り、今日のネットダイアリに取り組む。
「今日はなんかあったかな。中学のころと比べて、なんか書く内容がなくなったな」
誰もがそうだとは言わないが、大人に近づくに従い、自分の周りで起こる一つ一つの事象に対する感動が薄れ、特別に記録する必要がなくなっていく気がするのである。バラ色と言われている高校生活なのに。
一応、検索した画像を見ながら、今日の出来事を振り返る。
「いくら、亮がネット対戦したからといって、また、ネット対戦のことじゃつまらないな」
あったことをありのままに書き記すのが本来の記録としての日記なんだろうが、まあ、普通に考えれば、書き手の意志、もしくは無意識により、内容の偏りが出るが普通だと思う。いやなことが記されないのが日記であり、うれしいことが多く残るのが日記である。これは偏見かもしれない。
「まあ、これまで、1日、2日飛ばしたこともあるし、今日はパスしようかな」
と思いつつ、今日の画像を眺めていた。
「高校生活が始まったばかりだというのに、なんか同じ風景ばかりしか映らないな。こうしてみるとつまらない高校生活している」
事実を突き付けられ、落ち込む昴。半分、不満が残る中、ネットダイアリをパスすることにした。
「昨日の対戦で、少しランクアップしたかな?」
今日は、たまたま、一緒に登校しなかった亮が教室で昴の隣に来て聞いてきた。
「1試合程度じゃ無理。昨日はいなかったけど、戸村さんなんかは、1日5試合くらいして、ほぼ全勝だよ」
「うぇっ。20分だとしても1時間か。スゲーな」
「いや、たぶん、1時間かからないと思うよ」
「なにそれ!」
亮には、理解できないだろう。昴も戸村と一緒に戦っているときは、まるで魔法にかかったような感じで勝てる。魔法のようにと言ったのは、コンピ研らしくないな。チートと言ったほうが正しい表現かもしれない。
確かに、戸村がいるだけで十分チートなのだが、念のために言っておくが、戸村の実力は、正真正銘の実力である。
「昴、悪い。今日も世界史無理だったぁ~」
「亮、今日寝てただろ」
「いや、うとうとしてたけど、聞いてた。・・・と思う」
「それを寝てたっていうんだ」
今日の世界史は、ちゃんとノート取れてたのでそのまま亮に渡した。
「いつもすまんのう」
「いつものことさ」
昴は特に見返りを求めず、亮にノートを貸す。亮も普通に借りていく。
授業が終わり、部活組は、それぞれ部活に。帰宅組は、教室内でしゃべっている者と本当にすぐ帰宅してしまう者がいた。
「コンピ研は、5人だけど、なんか十分すぎるキャラがそろっているから、人数の少なさからは信じられない充実感があるかな」
そんなこと考えながら昴は、コンピ研に向かう。
「また、今日は、ネット対戦のことが中心になるのかな」
コンピ研の部室に入ると、戸村が奇声とまで言わないが、驚きの声を上げていた瞬間だった。




