ネットダイアリ-44- 新たな問題 -5-
窓の外の街明かりを眺めていたおっちゃんは、間をおいてから、
「一応、規約上リアルの人間を拉致したりするのはいけないので・・・かといって美甘ちゃんに教えるわけにもいかない」
規約上って?なんか前にも言っていたような気がする。確かに、たかがゲームのためとはいえ、リアルの人間を拘束してしまえば、ゲーム内のキャラは動かないのだが、そこまでするようなものじゃない。ただ、ロシアだ、中国だ、と何やらキナ臭いのは事実だ。
「一番、いいのはバル君が証明すればいい事なんだが・・・」
「どうすればいいんですか」
「偽物と会ってみるとか」
おっちゃんがからかって言った。
「こっちは、真面目なんですから」
「うむ。こちらも真面目に考えているよ。しょうがない、ツェットの管轄に任せよう」
「警察の問題ですか?」
「まあ、ネットダイアリを逆手にとって、偽物のバル君を逮捕しましょ」
「偽物とはいえ、僕が逮捕されるんですね」
「気持ち悪いとは思うけど、盗撮は罪だからね」
今まで、大目に見られていたとはいえ、胸が痛む昴であった。
「そうだ。僕の画像収集アプリですけど、ネットダイアリと同じようにパソコンを点けた時に点けたほうがいいんですよね」
「どうするかな?ネットダイアリは、あくまでパソコンに情報を貯める機能。対して画像収集アプリは、ネット内を探る機能だから、こっちで監視するのが困難という点がある」
「でも、同じパソコンにデータが集まる分同じじゃないですか」
「こっちが怪しい動きをして、何かされるよりはそのままにするかな」
独り言のように言うおっちゃん。おっちゃんは何を考えているのか、昴にはつかめず、
「では、そのままにしておきますね」
「様子見だな」
「では、また下に行ってGNAしてきます」
「亮君と帰るようにね」
一応、自分が本物だと証明されたのは、安心材料の一つである。
地下作戦室に行き、亮の横に座り、また、GNAを始めた。
「昴、また何かあった?」
いつもどおり、心配してきた亮だが、
「一応解決したみたい」
これからが大変なのだが、自分が自分であることがわかっただけでこんなに安心するものだとは思わなかった。
「そか。まだ、引きずっている感じだけど、前進したならいいよ」
いつも亮の前向きなところに救われる昴だ。
少し、モンスターを育てて、グランソフトを出た。
亮はコンビニに寄っていくと言って、そのまま別れた。
昴は、うちに帰り、パソコンを点け、ネットダイアリ関係をチェックした。
「今日も問題ない」
今までと同じ、ネットダイアリをつけるための毎日の作業とはいえ、やはり、気が重い。昴にとっては、楽しみから苦痛に変わっている。
「これをいつまで続けるのだろう」
そんなことを考えると気持ちが重くなり、この世から隠れるようにベッドで寝たいと思う。
「今日は、GNAを点けないで寝るか」
GNAが精神的な癒しをもたらしていたと思うのだが、最近は、GNAをプレイするのが重たい。




