【1‐9】 Sinister Shadow
「うおおおおおおおっ!」
直樹は走り出す。
後ろから大地が追走してくる。
「直樹ッ! お前は右サイドを頼む。宮野は中央、俺は左サイドを担当する!」
「待て! 俺一人で右はキツイ!」
直樹が後ろを振り向いて叫ぶが、大地は既にいなかった。
「遠距離組がお前を援護する!」
大地は空高く跳躍しながら叫んだ。
そんな大地にヤマタノオロチ2が喰らわんと襲い掛かる。
「大地!」
「お前は自分に集中してろ!」
大地はそう言うと右手でピストルの形を作る。
「俺に痺れんなよッ?」
人差し指から放たれた青白い電撃はヤマタノオロチ2の頭を焼く。
ヤマタノオロチの悲鳴が洞窟内に響き渡る。
「くっ…今は自分に集中だ」
直樹は再び走り出す。
ヤマタノオロチ5が直樹へと向かってくる。
「うわちぃっ!」
直樹は顎でスタンプ攻撃をしてきたヤマタノオロチ5を睨む。
攻撃はかわしたが、地面が揺れて上手く動けない。
「やべっ!」
ヤマタノオロチ5は地面に顎をつけたまま直樹の方へ突進してくる。
「なぎ払いかっ!」
「藤元君、走って!」
「あ!?」
「信じて!」
「…ッ!」
直樹は逃げようとしたが、後ろから聞こえる花梨の叫びで走り出す。
「迎え撃てってか…」
直樹は向かってくるヤマタノオロチ5を睨む。
「うおおおおおおおおっ!」
直樹は刀を大きく振るう。
ヤマタノオロチ5が大きく口を開けて直樹を喰らわんと襲い掛かる。
その瞬間、直樹の後ろから放たれた2発の銃弾がヤマタノオロチ5の双眸を打ち抜く。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!」
「うぐっ……」
咆哮からくる激しい頭痛に襲われながらも直樹は飛び掛る。
視力を失ったヤマタノオロチ5は見当違いの方向へと突っ走っていく。
「そっちじゃないわよっ!」
花梨は魔力を矢に込めて放つ。
放たれた矢は炎を纏い、ヤマタノオロチ5の鼻を打ち抜く。
鼻を焼かれたヤマタノオロチ5はもだえ苦しみ、動きを止める。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
直樹は刀を振り下ろした。
堅い皮膚を突き破って刀はヤマタノオロチの首に赤い線を生み出す。
皮膚と肉を引き裂いた刀を直樹は両手で力を込めてもう一度振るう。
「くたばれぇええええええ!」
直樹は刀を乱舞するかのように振るう。
その乱舞に援護するかのように真央と花梨が撃ち続ける。
牙を、皮膚を、肉をもがれていったヤマタノオロチ5はやがて力なく息絶えた。
「その調子よ!」
ヤマタノオロチ12の牙を両手で受け止めていた亜衣は賞賛を送ると回し蹴りでヤマタノオロチ12の頬を蹴り飛ばす。
大きく横に吹き飛んだヤマタノオロチ12から吹き飛んできた牙を両手で受け取った亜衣はその牙を他の蛇に投げつける。
ナイフのように鋭い軌道を描いた牙は大地が相手取っていたヤマタノオロチ8の首を貫通して壁に突き刺さる。
「あっぶねぇなオイ!」
「事故よ事故!」
亜衣はヤマタノオロチ6の口から吐き出された炎ブレスを跳躍して回避する。
流石は【バーサーカー(幻想種)】と言うべき戦闘能力だ。
「アンタたちの血を寄越しなさいッ!」
亜衣の双眸が紅く光る。
爪が鋭く伸び、舌なめずりした口からは鋭い牙が見えている。
亜衣はそのままヤマタノオロチ6の首筋に噛み付き、一気に血を吸う。
「うっわぁ……やっぱ幻想種はバケモノだな」
大地はひとりごちる。
【バーサーカー(幻想種)】とは超稀少な職業であり、狼や虎といった実在する動物の力を宿した【バーサーカー】とは全能力において一線を画す。
吸血鬼や天狗のような妖怪といった実在しない動物の力を持った存在が幻想種にカテゴライズされるのだ。
「大地、埒が明かないぞ!」
「わかってますわかってますよ!」
直樹の叫びに大地は答える。
言うとおり、ヤマタノオロチは次々に首を増やしていっている。首を潰すスピードよりも早い。
とんでもなくおぞましい姿だ。
「直樹、お前まさか通常攻撃しかしていないってことないよな!?」
「どういう意味だッ!?」
「魔力を使え、魔力を!」
「サムライでも使えんの!?」
「使えるっての! 念じてみろ!」
直樹は大地の呆れた叫びを聞いて目の前で威嚇するヤマタノオロチ13と対峙する。
直樹は刀を構えると走り出す。
「小林ィ! 援護頼む!」
「はい!」
真央が銃を構えてヤマタノオロチ13の目を狙う。
花梨も弓を構える。
「うおおおおおっ、唸れ我が剣!」
直樹は刀を横に振るう。すると炎に刀が包まれる。
炎を纏った刀を見て少し驚きながらも直樹は跳躍する。
「キシャアアアアアアア!」
「手加減できねぇぞ!」
ヤマタノオロチ13が口から氷の塊を吐き出す。
それを直樹は刀をふるって砕くと大きく開いた口へと飛び込むように落下する。
「てりゃぁああああああっ!」
「くらえっ!」
真央の射撃と花梨の射撃による目の破壊で怯んだヤマタノオロチ13の口を蹂躙する。
そして業火に包まれたヤマタノオロチ13から飛びのく。
「こんな技あるなら早く教えろよ!」
「やかましゃぁっ!」
大地はヤマタノオロチ10の攻撃を回避すると両手の指をくっつけて力を溜める。
そして鋭い眼光でヤマタノオロチ10を見つめる。
「何やってんだか!」
直樹は大地の力を溜めている姿を見ると花梨に叫ぶ。
「堂島! あのバカの援護をしてやってくれ!」
「了解!」
花梨は大地の元へ向かう。
それを見届けた直樹は再び刀をふるって走り出す。
「……我が分身よ、目の前の邪悪なる魔を喰らいて、深淵へと引きずり込めッ!」
大地の指から蒼白い煙のようなものが出ていた。
彼は指を離すと両手を地面に押し付けそう叫んだ。
「奥義を使うの!?」
花梨は走りながら驚愕した。
自身の彼氏が奥義を使う姿なんて初めて見るのだ。
花梨の呟きと同時にヤマタノオロチの影が広がり始める。ヤマタノオロチの姿と全くかけ離れた影は姿を広げ、黒い湖のように変化する。
「ふははははははははははッ!!!」
大地が高笑いすると同時に影から真っ黒で紙のように薄っぺらい手が伸びてくる。
無数の手が生え、ヤマタノオロチの身体を掴んで暗闇へ引きずり込まんとするその光景を見ながら真央は呟いた。
「すごい……!!」
「いまだっ!! 宮野、直樹、いけえええ!!」
「えぇっ!?」
直樹は殺したヤマタノオロチ2の身体の上を走りながら驚く。
徐々に沈んでいる状況で戦えなど無茶すぎる。
「藤元ッ! ヤマタノオロチの本体を狙って!!」
「本体?」
亜衣が直樹の隣へ着地する。
2人はそのままヤマタノオロチの中心部へと向かう。
「さっき空から見たんだけどコイツの身体の真ん中に何かあるの! 赤い何かが」
亜衣の説明によると、このヤマタノオロチはその赤い何かを囲むようにして首を生やしているらしく、その姿は赤い何かを守るようだったそうだ。
「弱点か!?」
「多分! さっきの討伐隊はあの弱点が発見できなかったから破れたのかもしんないわ!」
そういえば転がっている死体は大概が地上戦系統のプレイヤーだったなと直樹は思い出す。遠距離系統のプレイヤーもいたが、空中戦系統のプレイヤーの姿がなかったため、発見できずに500人も死んでしまったのかもしれない。
「弱点を狙えば一回で与えられるダメージ量は数倍になる! 私はアンタをそこまで送り届けるから……死ぬ気で戦いなさい!」
「わかった!」
直樹は刀を握りなおすと首の大群へと突っ込んでいった。
〓 Lv.08 Hujimoto Naoki(Samurai)
Point:000180/10000
Equip:蛇之麁正(ATK3000)
〓 Lv.08 Kobayashi Mao(Sniper)
Point:00180/10000
Equip:M14(ATK2400)
〓 Lv.40 Miyano Ai(Berserker)
Point:00300/10000
Equip:吸血鬼(ATK5800)
〓 Lv.38 Sudo Daichi(Psychicer)
Point:00300/10000
Equip:漆黒のペンダント(ATK6000)
〓 Lv.32 Dojima Karin(Acher)
Point:00250/10000
Equip:烏号(ATK3800)




