第一章「ベテルギウスの逆罪」
初投稿です!これからいろいろな作品を出していくのでよろしくお願いします
大雨が、東京のコンクリートを執拗に叩きつけていた。
警视庁捜査一課の鷹宮は、ぬかるむ泥に重い足を踏み入れながら、懐中電灯の光を前方に向けた。そこは、日光の山奥にひっそりと佇む「平家の里」。かつて源平の合戦に敗れた平家の落人たちが、追っ手から逃れてひっそりと暮らしたと言われる悲劇の秘境だ。
観光地として整備された茅葺き民家のさらに奥。うっそうと茂る杉林のなかに、苔むした古い石碑があった。落人たちが自らの武具を封印し、無念の思いを眠らせたと伝わる「大将塚」の碑だ。
「……ひどいな」
現場に先着していた所轄の刑事が、青い顔で吐き捨てる。
石碑に寄りかかるようにして座らされた男の遺体。胸には太いロープが幾重にも巻き付けられ、まるで石碑と一体化させられているかのようだった。男の首は不自然な角度で真上を向いており、見開かれた虚ろな両眼は、厚い雨雲に覆われた夜空を睨みつけている。
鷹宮は遺体に近づき、鋭い目を向けた。被害者の胸ポケットから、場違いなほど上質な羊皮紙が覗いている。
ポケットから取り出した清潔な白手袋に手を滑らせ、指先までしっかりと馴染ませる。鷹宮はその白い手で慎重に羊皮紙を抜き出し、雨に濡れないよう庇いながら広げた。
万年筆の、かすかに青みがかった黒いインクで、几帳面な文字が綴られている。
『源の来たりし白き光は、ベテルギウスの元に眠る』
「ベテルギウス……?」
所轄の刑事が首を傾げた。「星の名前ですか? なんで平家の里に、冬の星座の名前なんか……」
「宇賀神を呼べ」
鷹宮は白手袋の指先で手紙の端を挟むようにして証拠品袋に収め、低く乾いた声で言った。
「本庁の技術顧問だ。あの変人にこの紙を見せろ」
読んでくださってありがとうございます。
「ステラマリスの逆罪」はまだ続くのでこれからもよろしくお願いします。




