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第二章:星々の集会

第一章に続く二章目ですお楽しみください。・・・

 東京の喧騒から隔絶された、地下のワインセラー。

 薄暗い空間の調度品はすべて黒で統一され、テーブルの中央には、アンティークの天球儀が静かに佇んでいた。


 部屋に集まっているのは、数人の男女。

 皆、質の良い衣服を身にまとっているが、その顔は一様に奇妙な「星の仮面」で覆われており、互いの素顔を窺い知ることはできない。


 部屋のスピーカーから、加工された歪んだ声が響いた。

 それは、この集会を統べる者――コードネーム『ポラリス(北極星)』の声だった。


「――第一の観測が、無事に終了した」


 ポラリスが天球儀をゆっくりと回す。

「日光の『大将塚』に、最初の標的を捧げた。鷹宮刑事は、我々の意図通り宇賀神准教授を引っ張り出してきたよ。今頃彼らは、必死になってベテルギウスの『ゆかり』を紐解いているだろう」


 ふっと、低く妖艶な女の笑い声が響いた。

 仮面の隙間から覗く唇が、真紅のルージュで彩られている。彼女のコードネームは『アルゴル(悪魔の頭)』。


「滑稽ね。警察が古い文献をひっくり返して悦に浸っている間に、次の『星』はもう堕ちるというのに」


「油断は禁物だ、アルゴル」

 重厚な声で遮ったのは、体格のいい男――『アンタレス』だった。

「鷹宮という男は、犬並みの鼻を持っている。5年前のあの事件で、妹を亡くしてから狂犬になった男だ。執念だけなら、宇賀神の頭脳よりも厄介だぞ」


「ふふ、いいじゃない。その狂犬が、自分の無力さに絶望して吠える姿が見たいのよ。だって、彼らが守ろうとしているこの街の秩序は、5年前に私たちの“あの子”を見殺しにした『嘘』でできているんだから」


 アルゴルが、手元にある一枚の写真を愛おしそうに指でなぞった。

 そこに写っているのは、数年前に「自殺」として処理された、一人の若い女性の笑顔だった。


「……そうだ。我々の復讐は、この街の歴史ゆかりを血で書き換えることで完遂される」


 ポラリスの声が、一段と低く冷徹に響く。

「次の観測地は、東京の中心。かつて怨念によって都を震撼させた男の終着点だ。アルゴル、君の出番だ」


「ええ、任せて」

 アルゴルは立ち上がり、テーブルの上に一通の手紙を置いた。

 青黒いインクで、すでに次の星の名前が書き込まれている。


『アルゴル』


「大都会の真ん中で、極上の首を切り落としてあげるわ」


 仮面の奥の瞳が、狂気と歓喜に濡れて怪しく光った。


どうでしたか?読んでくださってありがとうございます。

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