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侯爵家の捨て駒だった私、王子と組んで全員公開ざまぁ  作者: たま


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10/10

10話 知らなかったでは済まない

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

10話 知らなかったでは済まない

ルヴェール侯爵家に下された沙汰は——重かった。

爵位は剥奪。

領地は没収。

財産の大半も差し押さえ。

かつて栄華を誇った屋敷は、今や静まり返っていた。

「……どうして、こんなことに」

母は、崩れるように椅子に座り込んでいた。

「私たちは……何もしていないのに……」

(何も、していない)

その言葉が——すべてだった。

「……アリスに会わせてほしい」

父が、ぽつりと呟く。

これまで一度も、私の名を呼ばなかった人が。

「話せば、分かるはずだ」

「そうよ……あの子は、家族なんだから……」

(今さら)

その願いは、王子を通じて私のもとへ届いた。

そして——

「分かりました」

私は、受けた。


王都の一室。

質素な応接室。

かつてとは、何もかもが違う場所。

扉が開く。

入ってきたのは——

見違えるほどやつれた、両親の姿だった。

「……アリス」

母が、震える声で名を呼ぶ。

私は、静かに一礼した。

「お久しぶりです」

その距離感に。

二人の表情が、わずかに歪む。

「その……元気にしていたか?」

父が、ぎこちなく言う。

(元気、ね)

「はい」

短く答える。

それ以上、何も言わない。

沈黙が落ちる。

やがて、母が耐えきれず口を開いた。

「ごめんなさい」

唐突な謝罪。

「私たち……何も知らなくて……」

「気づかなかったの」

涙を浮かべながら続ける。

「貴女が、そんなに辛い思いをしていたなんて……」

(……やっぱり、それなんだ)

静かに、息を吐く。

「お父様はお忙しかったし……」

「お母様も、家のことで手一杯で……」

「でも、これからは違うわ」

必死に、言葉を重ねる。

「やり直しましょう? 家族として——」

「無理です」

即答だった。

空気が、凍る。

「……え?」

母が、理解できないという顔をする。

「今、何と……」

「無理です、と言いました」

はっきりと、繰り返す。

「どうして……!?」

声が、裏返る。

「私たちは謝っているのよ!?」

(それが、もう遅いってこと)

「知らなかった、気づかなかった」

ゆっくりと、言葉をなぞる。

「それは、理由になりません」

父の顔が強張る。

「……どういう意味だ」

「簡単です」

視線を、まっすぐ向ける。

逃がさない。

「興味がなかった、ということです」

「っ……!」

言葉が、突き刺さる。

「私は、同じ屋敷にいました」

静かに、続ける。

「毎日、同じ場所で生活していました」

「それでも気づかなかったのなら——」

一拍。

「最初から、見る気がなかっただけです」

沈黙。

完全な、沈黙。

「……そんなことは……」

父が、否定しようとする。

でも。

続かない。

「使用人が増えても、減っても、気づきますよね?」

淡々と、言う。

「なのに私は——」

ほんの少しだけ、間を置く。

「“いなくてもいい存在”だった」

母の涙が、止まる。

理解してしまったから。

「違う……そんなつもりじゃ……!」

「同じです」

切り捨てる。

「結果がすべてです」

言い訳は、意味を持たない。

「……では、どうすればいい」

父が、絞り出す。

「どうすれば、お前は——」

「何も」

その言葉を、遮る。

「もう、何も必要ありません」

はっきりと、言い切る。

「私は、もう——」

ゆっくりと、立ち上がる。

「あなたたちの娘ではありません」

「っ……!!」

母が、崩れ落ちる。

父も、言葉を失う。

「家族ごっこをするつもりもありません」

感情は、静かだった。

怒りも、憎しみもない。

ただ——

「終わりです」

それだけ。

完全な終わり。

「……さようなら」

一礼する。

それが、最後。

背を向けて、歩き出す。

「待って……!」

母の声。

でも。

もう、止まらない。

扉を開ける。

光が差し込む。

(これで、全部終わった)

外に出ると。

「……どうだった」

王子が、壁にもたれていた。

「問題ありません」

小さく答える。

「すべて、終わりました」

王子は、少しだけこちらを見る。

そして。

「そうか」

それ以上は、何も聞かない。

それでいい。

「行きましょう」

私は、前を向く。

もう、振り返ることはない。

過去は、すべて置いてきた。

これから先にあるのは——

「はい」

新しい道だけだ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字のご連絡ありがとうございます。

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