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侯爵家の捨て駒だった私、王子と組んで全員公開ざまぁ  作者: たま


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1/10

1話 さようなら侯爵家

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

侯爵家の朝は、いつも同じ言葉から始まる。

「アリス、まだそこにいたの?」

振り向く必要はなかった。声の主が誰かなど、考えるまでもない。

姉のマレーヌだ。

「申し訳ありません、お姉様。すぐに片付けます」

手にしていた銀のトレイを持ち直し、私は深く頭を下げる。だが、マレーヌはそれを見ても満足しない。

「“申し訳ありません”じゃないのよ。貴女は侯爵家の人間でしょう?それなのに、どうしてそんなに要領が悪いの?」

——侯爵家の人間。

その言葉に、胸の奥がほんの少しだけ軋む。

本当にそう思っているのなら、私をこんな扱いはしないはずなのに。

「まあいいわ。どうせ貴女には期待していないもの」

ふっと笑って、マレーヌは踵を返す。その背中を見送りながら、私は静かに息を吐いた。

期待されていない。

それは、ある意味で救いだった。

「おい、まだ終わってないのかよ」

今度は弟のジルだ。苛立った声で、床に置かれたバケツを蹴る。

水が少し跳ねて、私のスカートを濡らした。

「すみません、すぐに拭きます」

「遅いんだよ。使用人でももう少しマシだぞ」

その言葉に、思わず手が止まる。

——使用人でも、もう少しマシ。

それはつまり、私はそれ以下だと言われているのと同じだった。

でも、何も言わない。

言ったところで、何も変わらないから。

「ジル、その子に構う必要はないわ」

食堂の奥から、母の声がした。

「どうせ役に立たない子なのだから。放っておきなさい」

そして、父もまた何も言わない。

新聞から目を上げることすらなく、ただ静かに紅茶を口にするだけだった。

——これが、私の家族。

侯爵家の次女、アリス。

それが、私の名前。

そして同時に、“ここにいてはいけない存在”の証でもある。

(……でも)

心の奥で、何かが小さく灯る。

(もう、終わりにする)

その日の夜。

誰にも気づかれないように、私は屋敷の裏門を抜けた。

手にしているのは、一通の封筒。

それは、王都でも最高峰と呼ばれる魔法学園からの——合格通知。

「……やっと」

小さく呟く。

私はずっと隠してきた。

家族に知られれば、きっと全て奪われるから。

魔力も、知識も、努力も。

全部。

だから私は、全部“なかったこと”にしてきた。

無能なふりをして、何もできないふりをして。

でも、それも今日で終わり。

「さようなら」

振り返らない。

あの家に、未練なんて一つもない。

——ここからが、本当の始まりだから。

翌日。

魔法学園の門をくぐった瞬間、世界が変わった。

「え……?」

ざわめきが広がる。

視線が、一斉にこちらに向けられる。

「なんだあの魔力……」「測定器が壊れてるのか?」「いや、あれ……本物だ」

そして、教師ですら言葉を失った。

「き、君……名前は?」

「アリス・フォン・ルヴェールです」

静かに名乗る。

その瞬間、空気が凍りついた。

「ルヴェール侯爵家の……次女……だと……?」

——そう。

誰も知らない。

あの家で“いないもの”として扱われていた少女が、

規格外の魔力を持つ存在だなんて。

私は、ゆっくりと微笑んだ。

「はい。ですが……」

少しだけ首を傾げる。

「もう、あの家とは関係ありませんので」

ここから先は——

私の物語だ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字のご連絡ありがとうございます。

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