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バンニングの足跡

 バンニングは外に出ると、片手で胸を叩き、すぐに魔法を展開した。


 胸のあたり、服の裏に仕込んである、Sランクダンジョンで手に入れた宝石「炎熱の世界」の効果。

 バンニングは寒さを感じない。その範囲を広げていく。


氷雪の礫の世界に晴れ間を伸張し、熱が広がっていく。極端に異なる温度差で、氷雪と「炎熱の世界」がぶつかる境は轟音とともに風をまき散らし、接触面で雨を作り、遠くの氷雪がその、雨を凍らせ、さながら雲と快晴が闘っているのかという状態になっていた。


それでも「炎熱の世界」はどんどん範域を伸張し数百メートルを超えて暖かな空間が出来た。

見上げる上空か灰色の空に閉じられたまま、バンニングの周辺だけ春の暖かさという奇妙な状態になった。


その寒暖差にくしゃみをするバンニングだったが、すぐ気を取り直して、トラックに声をかける。

「二人!出てこい」


クインテとシシオンはその声でトラックの荷台から降りてくる。


シシオンは半袖短パンだった。

「な、暖かいだろ?この方が動きやすいし」

「それはわかっているザマス。ただ、効果範囲に出たら困るザマス」

対するクインテはしっかりとした毛皮の防寒着で、汗が滲んでいた。


通常の軍服を着ていたバンニングは正反対な恰好の二人をみてひとしきり笑った。

「よし、ひとまず強襲は無さそうだが、どう探すか」

「花火はどうザマスか?」

「雪崩でも起こす気か? それにサンポ殿が動けないなら花火を見つけてもらっても意味がない」

「適当に歩いてたら出てくるんじゃないか?」

「そうだな」

「敵にも見つかるかもしれないザマス……」


クインテがそういうもバンニングもシシオンもキョトンとして、

「「このメンバーなら平気だろ」」

と探索を始めることにした。


 バンニングが進むと、雪が解けていく。


溶けて舌に流れていく足元に滑らないように気をつけながら進んでいく。


「ここは、雪やら氷やらの地面はないんだな。ま、そんなんだったら進めないけどよ」

「元々、吹く風が尋常でないからな。地面に溜まらないんだろ」

 

 軽快な軽口を叩きながら警戒して、前方を見つめるバンニング、キョロキョロと集中していないように見えながらも全警戒しているシシオン。

 指示があれば魔法を出せるように魔力を貯めるクインテは少しずつ山頂に向けて歩みを進めた。



「止まれ」

 バンニングが声を上げると、シシオンとクインテは前方を見つめた。


「先が詰まってる?」

「そうだ、炎熱の世界が何かに当たって阻まれている」

「敵さんのお出ましか?」

「そうだな。二人ともこのままいくぞ」


 バンニングが更に進む。少しだけ視界が開けると、端の方は地面がない。


 「山頂だな……くるぞ」

 バンニングが叫ぶ。すると、返すように竜の咆哮が放たれた。


 咆哮によって、竜の周りの雪が一瞬消え、姿が見えた。


「おいおいマジかよ」

シシオンが唖然とするなか、クインテが必死に頭の中のモンスター図鑑を思い出す。


「白銀の王……」


構える三人。

咆哮と共に勢いを強めた氷と雪の圧力は一瞬でバンニングの足跡を掻き消した。

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