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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第3章・日々是拘日
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第3章・11幕 野崎妖

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


・書本 小夏 (かきもとこなつ)

彼女も生まれは現・黛村。一揆の際に父とは生き別れ、母と暮らす。事情を知った蓮太は時々家族で食事をする仲。蓮太への想いを改め、自身が得意とするくノ一への修得を志す。身体能力が高く、冷静で皮肉の利いた口調に変貌するも、本心は蓮太への恋心はどこか抑えられない。


・成島 幸太 (なりしまゆきた)

冴島五郎とは古くからの付き合いで、冴島の活動のフォロー・調査など様々な面で協力する。忍者学科を選択したのは調査くらいしか自分にはできないという負い目もある。


・霧隠 玄 (きりがくれげん)

蓮太らの同期。飄々とした性格で、暗殺が得意の忍者志望。千毬とは付かず離れずの仲。妙に多面性を持ち合わせる不気味な性格。九狼党の❝爪❞である。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月5日 午前 寺院


千毬との密談、小夏を将来的に藤香のお抱え忍者とする話を、蓮太は秘密にすると誓っていた。しかし、内容を知っている以上、小夏を更に意識してしまうのは確かだった。

「小夏?忍者学科の成果はどうなんだ?」

「え?どうもこうもないわ。精進あるのみ、でしょ?」

当たり前の質問に、小夏も当たり前に返す。

「そ、そうだよな。頑張れよな。」

「どうしたの?」

「いや、早く一流のくノ一になって欲しいっていう、俺の願いだよ。」

「なっても私は蓮太のお抱え忍者にはなれないわよ?」

「え?あ、そうらしいな…でもそうじゃなくて、純粋に友人としてそう思ってるって話だよ。」

蓮太はぎこちなく、しかしながら精一杯の応援だった。

「…変なの。まぁ、ありがとうと言っておくわ。」

「あーら、小夏。見せつけてくれるわね。」

(あやかし)?」

野崎 妖(のざきあやかし)。小夏と同じ忍者専攻。乙名・野崎飛助の妹。その立場を利用し、忍者学科の大半を支配する。対切創網タイツを纏うも、透けた下はビキニの様な紫の下着のみという大胆な服装も、その自信の現れである。蓮太と友好的で、忍者として才もある小夏を敵視する。

「蓮太君は私が将来的にお抱え忍者にしてもらう相手。出しゃばらないで欲しいわね。」

妖の征服欲は高く、蓮太のお抱えになるというより、蓮太を男としても手に入れたような、そんなつもりでさえいる。蓮太も僅かながら自分のお抱え忍者の素性をこの時知った。

「別に?蓮太に頑張れと言われただけ。そんなに不安なら今からでもお抱えにでもしてもらったら?」

「フン。ホント、小夏は私には靡かないわよね。後で後悔するわよ?」

「くノ一になるのに、アナタの下に就くメリットでもあるのかしら?」

「…」

そういうと小夏はそのまま去っていく。

「じゃ、これで。」

蓮太も一言こぼすとその場を立ち去った。


昼休み、裏庭に妖とその取り巻きが集まる。

「課題終了後、妖会を開く。」

取り巻きたちが妖を囲む。妖は岩に寄っ掛かり、片膝立てて座る。

「お客さんは誰なんです?」

折島 仙内(おりしませんない)。忍者学科の守役補助。野崎飛助の政治的な力で飼われている実質は妖の犬。忍者上がりだが、目も出ず、無駄に悪知恵と弱者の切り捨てで生き残って生きた。

「小夏と玄。成島 幸太。あと高遠 梓を。アンタたち幹部は全員出るように。」

妖は、忍者学科のほぼ全部を掌握していた。逆らうものは暴力的な仕打ちから、精神的なものまで受ける。過去、廃人状態になった学童は口封じに暗殺されたが、どこまで圧力が動いたのかはわかっていない。また、暗殺されたというよりは、事故死扱いとなった。以後、妖の恐怖政治は学科内とはいえ、協力しない者はいても、逆らう者はいなかった。

「アタシが祖柄樫山の忍者の頂点だという事、わからせてやる。」

妖は年の離れた兄から、溺愛で育ったため、本能に忠実で、欲望には躊躇わない、まさにケダモノの様な顔を前面に出していた。

目立つ存在や、気に入らない存在を、❝妖会❞なる会合を設け、徹底的に服従の意を述べさせる。そこで従わない者は、虐めの標的となり、妖の管理する幹部からも標的となる。


「成島?課題終了後、野崎邸の道場に来いよ。」

「え?わかったよ。」

成島幸太は冴島との関係柄、この虐め気質に疑問を抱いていたが、その中身を知って少し動揺していた。もし自分が標的になれば、堪えることができないのではないかと。


「玄、お前、課題終了後、野崎邸の道場集合な。」

「え?なんで?」

「いいから。妖さん怒らすとお前ヤバいぜ?」

「ふーん。小夏は来るの?」

「ああ。」

「おや。じゃ行こうか。」


「梓?課題終了後、私の家の道場に来てくれる?」

「とうとう呼ばれたわね。いいわ、行きましょう。」

高遠梓(たかとおあずさ)。八俣の貧民の出自。小夏に引けを取らない忍術の技量と、暗殺技術を幼くして習得したという。黄緑色の露出の高い忍び装束に普段は白い衣を纏う、上品かつ華麗な立ち振る舞いが更に尋常でない印象を与える。

忍者学科の権力者・野崎妖の横暴が始まる。

次回2025/1/9(木) 18:00~「第3章・12幕 刑務官学科」を配信予定です。

※年末年始強化キャンペーンは現投稿が最後となります。

以降、通常投稿に戻ります。 (毎週 木・日 18:00)

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― 新着の感想 ―
妖も怖いケダモノですね。今後どうなっていくか楽しみです。
妖さん、また私の好きそうなキャラが増えました(笑) 活躍に期待してます(^^)
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