第3章・9幕 お抱え忍者
今回の登場人物
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・置田 籐香 (おきたふじか)
蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。
・置田 蓮太 (おきたれんた)
14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純
・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)
伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。九狼党の❝耳❞である。
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千毬は幸兵衛と取引をし、今回の学童会長の座に就いた。
しかし、その条件は幸兵衛の病的なまでの学童女子に暴行をすることだった。それを巧く利用し、幸兵衛の悪事をやりやすい環境を作ると約束したのだ。
しかし、千毬はそもそも、その条件を飲むつもりはなく、むしろ挑発したため、幸兵衛の抑えていたケダモノは呼び起こされていた。
千毬はそこまでの内情は知らないが、暴走することは危惧しており、早いうちに守役主を現忍者学科の守役・羽芝 菖蒲に交代させようと動いていた。それには菖蒲の後釜を、妹の霞に就いてもらうことが条件。霞は現在、藤香のお抱え忍者であるが故、その交渉に来たのだった。
「伊集院さんの頼みというのは、つまり霞を私のお抱え忍者から外して欲しいということか?」
「端的に言えば、そうなります。」
「ふむ…。」
千毬の要望を聞くと、藤香は理解したものの、案の定、あまり良い顔はしていなかった。
「申し訳ありません、ちなみにお抱え忍者の仕事ですが、基本的には普通の忍者では出来ない内容でしょうか?」
「ん?あぁ、内容は通常の上級忍者なら事足りるだろう。ただ、極秘内容になることも多々あるからな。個人的に❝信用❞が一番大事と言ってもよいかもしれんな。」
「なるほど。信用ですか。」
お抱え忍者は結果的に乙名が直に知りたい内容を調査し、時に暗殺も必要となる。その際にやはりその情報は必然的に価値が高くなる。乙名と忍者の信頼関係は必須事項となる。
「では、結論は後継者は、上位の忍者でかつ藤香さんの面接をクリアできる存在、という事でしょうか?」
「そうなるな。そんな者が早々に準備できるとも思えぬが。」
「うーん、確かに。1年…は掛かると思います。」
「ほう?伊集院さんの答えから察するに、目途が立たないわけではないようだな?」
「はい。元よりその信頼というものはクリアしております。」
「何?どういうことだ?」
藤香はまさかの信頼はクリアしているという点に驚愕した。てっきり腕に覚えがあっても信頼が得られないから目途が立たないのなら予測の範疇であった。
蓮太も聞いていて疑問だけが残る。
「しかし、だな…」
藤香が頭を整理しながら疑問点を話そうとする。蓮太も同じように考えていた、その言葉を出してくれるかを期待していた。
「その者は私の信頼は得ているなら、必然的に私が知っている者、ということか?」
やはり藤香の疑問は、同時に蓮太の疑問と同じだった。
「はい。」
「…そうか。それで1年。腕の成長は個人の努力で何とかなるからな。」
「その通りです。」
「ちなみに…その者の名を聞いておいても良いか?」
千毬に少し恐れながら聞く。
「私は構いませんが…」
千毬は返答するなり、蓮太の顔を見る。
「あ、構わん。この男にも口を堅くするよう言いつける。破れば私の乙名の座を降りる。」
藤香の決断に千毬よりも蓮太が大きく反応した。
「母上!」
「良いな?お前もこうして責任と関わり、向き合うのだ。」
藤香は千毬から目を逸らさず、背中で蓮太に語った。
「はい。」
蓮太は大きく深呼吸すると、一言だけ返事をする。
「では、申し上げますよ?」
「頼む。」
「書本小夏です。」
藤香も蓮太も驚きを隠せなかった。それもそのはず。確かに信用はあるだろうが、小夏はまだ蓮太、千毬と同じ14の歳。乙名のお抱え忍者など夢の話。二人はそう思ったのだ。
「冗談じゃないのか?」
藤香が念を押す。
「小夏ちゃんは藤香さんとも置田君とも通じ合えるのですよね?半分家族のような仲と推測できます。これ以上の適任もいないでしょう?」
「いや、そうではない。小夏の腕の問題だ。まだ14。1年みても15。そんな小夏を村の為に死地に送るなど出来るはずもない。」
まるで娘を戦場に出すかのように取り乱す藤香に、蓮太も口を出したくなった。流石に小夏にその様な将来を送らせたくないと。
二人の形相から千毬は察した。そしてまた例の微笑みで返すとゆっくり話始めた。
「では、落ち着いて私の話を聞いてください。いいですか?」
次回2025/1/4(土) 18:00~「第3章・10幕 独り善がり」を配信予定です。




