日常へ
「う~ん、まだちょっと身体が重いな…。」
僕は伸びをしながら呟く。
「大丈夫ですか?」
「あと数日お休みされては?」
「ううん、大丈夫だよ。ずっと寝てたから鈍ってる感じがするだけ」
心配そうにティアナさんとライラさんが声を掛けてくれる、ほんとお世話になりっぱなしだな…。
僕が目を覚ましてから2日が経ち、今日で退院できることになった。
「セイ君ー!」
「うわっ!」
病院の外に出ると、いきなりライラが飛付いて来て倒れてしまった。
どうやら他の皆も出迎えに来てくれたらしい。
「もう…退院したばっかりなんだからもう少し…ライラ?」
咎めようかと思ったけれど、少し震えてる。また心配かけちゃったね…。
そのまま黙って頭を撫でる、こうしていると昔を思い出すな…。
「もう、ライラったら…。セイ君が今日退院だって聞いてから絶対迎えに行くって聞かなくてねー。」
カトレアさんが苦笑いしながらライラを引き剥がし、起き上がるのに手を貸してくれる。
「…」
ガルシア君は黙って荷物を持ってくれた。
それから列車に乗り、僕が休んでた間の話なんかを聞きながら過ごす。
「それでねー、ライラが」
「ちょっと、それは言わないでよー!」
ライラとカトレアさんのポニテ組は随分と仲良くなったみたいだ。
「…」
ガルシア君は寝てる。
「僕、ちょっと飲み物貰ってくるよ。」
「あ、では私がセイさんの分も貰ってきましょうか」
「大丈夫だよ、ずっと座ってたから少し動きたいんだ。」
「ではせめてご一緒させてください。」
そう言ってミィナさんが着いてきてくれる。
気を遣わせてばかりで申し訳ないな…。
「あっ、すいません。」
食堂車両に入るとき、ちょうど出てくる人とぶつかりそうになってしまった。
「おおっと、すまな…っ!?」
相手の女性が僕を見て凄く驚いている、どうしたんだろう?
「おや、君は…。」
ち、近い…、僕の顔をまじまじと覗き込んで来た。
「え、えっと…。」
透き通るような銀髪、紫色の瞳。真っ直ぐに見つめられて思わずたじろいてしまう。
「ルシアーどうしたのー?」
女性の背後から小柄な女の子が顔を出す。
「んっ!?この子…!」
この度はその女の子まで僕の顔を覗き込んで来た。
二人に詰め寄られ、壁際に追い込まれるような状態になってしまう。
「…んっ、コホンッ!」
そんな時、可愛らしい咳払いが聞こえてきた。
良かった、ミィナさんが見かねて助け舟を出して…凄く怖い笑顔してる!?
「あぁ、すまない少年。ケガはないかい?」
「だ、大丈夫…です。」
「よしよし、急にすまなかったね。これで失礼するよ。」
「またね~♪」
そう言って僕の頭をポンポンと撫でて、二人は手をヒラヒラさせながら去っていった…。
一体何だったんだ…?
それから、学園に着くまでミィナさんはちょっと不機嫌だった。
「「「おかえりー!!!」」」
なんか凄い出迎えをされた、先生までいる。
「おい、聞いたぞー!やるじゃないか!」
「2人を助けるために悪の組織に乗り込んだんだって?」
「数少ない男子として誇らしいぜ!」
体を張って2人を助けたことが凄く持て囃されているらしい。
なんか話に尾ひれがついてる気がするけど…。
今はライル君、トリン君、キアノ君の3人に囲まれながら色々と話している。
3人とも幼い頃からの仲らしく、銃の扱いを得意としている。
"最強の三銃士"って自称してるけど実は3バカ扱いされていたり…。
とはいえ、これを切っ掛けにクラスの皆と仲が深まったような気がして、
内心凄く嬉しくて泣きそうになるのを必死に我慢していた。
もっと頑張ろう…!