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あこがれのゆうしゃさま  作者: workret


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第四百十二話 演者勇者と導かれし仲間達12

「制圧! 制圧だ!」

「休んでる暇は無いぞ! 故郷を人質に取られてる、一分一秒が負けに繋がる!」

 タカクシン教総本山での決戦が始まった。戦力では優勢かもしれないが、向こうはある意味ハインハウルス城、そして国王ヨゼルドの命運を握ってしまっている。ただの勝利では勝利と呼べない。速度勝負が始まる。

 それを承知の上か、はたまたハインハウルス軍の勢いに押されてか、タカクシン教の教徒達はどちらかと言えば防戦気味。数も少なくなく、普通とは違った意味合いで苦戦させられる事に。

「邪魔よ!」

 その中でひと際無双の動きを見せたのは天騎士ヴァネッサ。ただでさえ飛びぬけて強い彼女は、国を夫を人質に取られ挑発されている。その怒りを力に変えてソード・オブ・ワールドで剣を何本も召喚し、前線へと切り込んでいく。

「最前線で大暴れか、総大将ならぬ装いだぞ。昔のお前みたいだ」

「止めてよ無駄よマックさん、私の剣は――」

「馬鹿を言うな、止める為に俺がここに来たとでも思ってるか?――こうなったお前を止められないのは元バディとして重々承知してるさ。行ってこい、指揮は俺が何とかする」

 ポン。――マクラーレンが軽くヴァネッサの肩を叩く。その計らいにヴァネッサも少しだけ笑みを見せて、

「ありがとう。――覚悟しなさい、タカクシン教!」

 気持ちを新たに、ヴァネッサが一人更に奥へ突き進もうとしたその時だった。

「ぐはぁ!」

「ぎゃあ!」

 悲鳴と倒れる声が続く。タカクシン教徒の物ではない、ハインハウルス側の兵士達が倒れていく。ハッとしてその方角を見れば、一人の女性騎士――タカクシン教徒である――が落ち着いた歩調でヴァネッサの方へ歩いてくる。冷静な目つき、鋭い威圧。兵士達は勿論、ヴァネッサもマクラーレンも一度足を止めその女性騎士を見る。

「ハインハウルス軍王妃及び天騎士ヴァネッサ様をお見受けする」

「ええ。貴女は?」

「キュレイゼという。タカクシン教教徒。一国の王妃様に剣を向けるのは忍びないが、貴女にはここで止まって頂く」

 スッ、とキュレイゼが身構える。先程まで放っていた鋭い威圧が綺麗に整い、自分だけに向けられるのがヴァネッサにはわかった。

「マックさん、それじゃ指揮はお願い」

「ああ」

 相手は一流。そして覚悟の上で剣をこちらに向けている。真正面から自分が相手をすべきだとヴァネッサも判断。全体の指揮をマクラーレンに託し、自分も改めて剣を持ち身構える。

「…………」

「……ふっ!」

 そのまま視線をぶつけ合う事十数秒、先に地を蹴ったのはキュレイゼ。鋭くしなやかなその動きで一気にヴァネッサに詰め寄り、その剣を振るう。――ガキィン!

(……強い)

 一度その剣を合わせただけでわかった。――キュレイゼは強い。今他の人間が戦っている戦闘用教徒とは段違いの強さ。ハインハウルス軍に居たとしても、トップクラスの強さ。

(それでいて、真っ直ぐな剣筋)

 そして数合剣をぶつかり合わせわかる。目的は兎も角、彼女の剣は真っ直ぐな想いが乗っていた。一言では語り切れないレベルの努力の末、手に入れた実力だろう。

「――だからと言って、私が負ける道理は無いわ!」

「っ!」

 ガキィン!――大きく剣がぶつかり合うと、キュレイゼを押し返す形で一旦二人の間合いが開く。

「成程、これが天騎士の強さ、か。――本当に、規格外だ」

 ぶつかり合いの中、キュレイゼもヴァネッサに同じ物を感じていた。一言では語り切れないレベルの努力と、強い想いの上にその強さがある。――この人は、私よりも更に大きな物を抱えているのだろう。私の想いなど、この人に比べたら本当に小さいかもしれない。

「だが、私はそれでも諦めるわけにはいかないのでな!」

 再び先に地を蹴ったのはキュレイゼ。他の者などまったく近付けない、激しい剣のぶつかり合いが始まる。

「貴女程の強さを持つのなら、わかるはずよ?」

「何をだ?」

「例え貴方達が崇める教祖様の作戦が上手くいってハインハウルス本城が陥落したとしても、ここまで来た以上私はここを潰すまでは止まらない! 貴方達に、どんな形であれ勝利はやって来ない!」

「くっ!」

 剣でガードするも、再び吹き飛ばされるキュレイゼ。――力の差が、出始めている。

「それともあれかしら? 信じていれば、貴方達の神様が何とかしてくれるとでも言いたいのかしら?」

 そのヴァネッサの挑発に、キュレイゼはふっと軽く笑う。

「いや、どうにもしてくれないだろうな」

 そして、意外な返答をした。――どうにもしてくれない?

「矛盾した発言ね? 神様、信じてるんじゃないの?」

「正義は貴女達にある。本当に神が助けてくれると信じて戦っている輩も大勢いるがな、私はそこまで馬鹿じゃない」

「それじゃ、貴女は一体何の為に?」

「何の為、か。そうだな……誤解をして貰っては困るということさ。私は神を信じてはいる。ただここにいる全ての人間を救える程私の信じる神は強く無い」

「? 貴女、何を――」

「私の信じている神は……私が本当に信じている神は、ほんの少し、私に力を与え、背中を押してくれるだけだ」

 直後、キュレイゼが身構える。そして、

「神よ、今この時、私の祈りの全てを、力に変えたまえ」

 静かにそう呟くと、キュレイゼに不思議なオーラが纏われる。先程までも整った強者のオーラを纏っていたが、それを遥かに超えるまるで別人の様なオーラ。

「貴女、その力って」

「私は私の目的を果たす。正義に背いても、この場にいる誰もが散っても、私は、倒れるわけにはいかない」

 再び先に地を蹴ったのはキュレイゼ。そして――



「ご主人様、タカクシン教は教祖の圧倒的カリスマによって成り立ってますが、逆に言えばそこを抑えてしまえば」

「統率はがた落ち、一気にこちらが優勢になるってことか」

「やっちまおうぜ団長、雑魚ばかりで拍子抜けしてた所だ、オラァ!」

 会話の途中で愛用の両刃斧を振り回し教徒達をなぎ倒していくソフィ。ソフィだけじゃない、個々の才能では想像通りこちらが断然上。時間との勝負なのは認識済み、つまりは、

「よし、俺達はトップを狙おう! クレーネル、案内を頼む」

「承知致しました」

 そのチャンスが生まれるという事である。いざという時の独断の許可は得ている。ライトはその決断をし、団員達と共に一気に――

「まあまあ一旦お待ちを。もう少し苦労して物語として盛り上がった方が感動もひとしおだったりするものですよ」

「っ!」

 ――駆け抜けようとした所で、一人の女性が立ちはだかる。見覚えのあるその姿、先日フレムにて遭遇した、

「……セツナ」

「はい、セツナちゃんです。……ああ、クレーネルさんは私の事を「ちゃん」付けで呼んでくれませんか、残念ですねえ」

 謎の教徒、セツナであった。

「お早い再会になりましたねえ。あまり野蛮な事は好きではないんですが、流石にここで何もしないのは問題視されてしまいますからねえ。――とは言ってもこの数相手、時間稼ぎが限界ですかね」

 ふーむ、といった感じでライト騎士団の面々を見るセツナ。

「時間稼ぎと言ったか。――何秒稼ぐつもりだ? 一秒か? 二秒か?」

 先手を切って動いたのはドライブ。セツナに向かって迷いの無い鋭い突貫。――バシッ!

「そうですねえ。理想を言えば三十分位は稼ぎたいですねえ」

「!?」

 だがセツナはそのドライブの突貫を、薙刀を、素手で掴んで止めた。刃の部分を掴んでいるが、切れている様子は見られない。

「ふっ!」

 直後地を蹴ったのはハル。気功で強化した飛び蹴りを放つが――ガシッ!

「良い蹴りですねえ。きっと良い師匠を持ち、しっかりとした鍛錬を積んだのでしょう」

「!」

 そのハルの飛び蹴りも掴んで抑え、冷静に分析すると、

「ほいっと」

 掴んだままだったドライブと同時にこちらに投げ返してきた。ドライブとハルは受け身をとって綺麗に着地をするが、

「ライト様、あれは気功術です」

「つまり、ハルと同じ……?」

「はい。しかも相当の使い手と考えて良いかと。――師匠レベルの気功術の使い手が他にもいるとは思ってませんでした」

 直接ぶつかったハルの分析。――ハルの師匠、ミナエル。ハルを越える気功拳闘士である。そのミナエルと同等か、もしくはそれ以上の気功の使い手。

「ま、何にせよ卑怯もへったくれも無いよ。時間も無いんだし、全員で畳みかけよう」

 困惑しかける中、レナのその一言で全員の意思が固まる。確かに相手は一人。この人数なら――

「信じられるのは己だけ」

 ――そう思った矢先、不意にセツナがそんな事を言い出した。

「他人を信じられないわけではなくても、結局誰より何より一番信用出来るのは、自分自身だったりしますよねえ。それはそうです、自分の事、自分の実力は自分が一番良くわかってるんですから」

 そう言いながら、セツナはパン、と自分の前で手を合わせると、

「なので、一番信頼出来る味方を呼ぶ事にしました。そうです、私です」

 瞬間、セツナが四人に増えたのであった。



 ヨゼルドに振り下ろされたモヨネダの大剣。何の迷いも躊躇いもなくヨゼルドの右腕に向かって進む。ヨゼルドは玉座に座ったまま動かない。

「悲鳴を聞く趣味はないが、自業自得だからなぁ!」

 モヨネダの叫び。実際ヨゼルドは動いたとしても、彼の能力では回避は出来なかっただろう。――キン。

「……ん?」

 だがヨゼルドの腕まであと僅かと思われた所で、綺麗な金属音が聞こえた。――金属音? 国王は鎧なんて着てなかった。そもそも中に何かを装備していたとしても、それすらも破壊する威力で振り下ろしている。だからそんな綺麗な金属音など聞こえるはずもない。じゃあこの音は何だ?

「……おい、ちょっと待て」

 先程の自分の考察を思い出す。「ヨゼルドの腕まであと僅か」。――ヨゼルドの腕に剣が到達していない。その直前で、何かに喰い止められているのだ。

「ふっ!」

「っ!?」

 その事実に気付いた時には、モヨネダは疾風の一突きで吹き飛ばされた。ガードはするが、一気に間合いが開く。

「おいおい、話が違うじゃないか……国王以外は誰も居ないって話だぜ?」

「随分とつまらないガセを掴まれたのね。ご愁傷様」

 そしてヨゼルドを守る様に立ちはだかったのは、

「そしてこの国に、この方に手出しはさせないわ。――授かっている隼騎士の名に誓って」

 ハインハウルス軍主力にてヴァネッサの片腕、そして隼騎士の称号を持つ屈指の強者。――リンレイであった。

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