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あこがれのゆうしゃさま  作者: workret


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第四百十三話 演者勇者と導かれし仲間達13

「私が城に残って……国王様の、護衛……!?」

 タカクシン教総本山に出撃の数日前。完全に人払いをして、ヴァネッサはリンレイを呼び出しその話を切り出した。

「ええ。――相手が私達に勝つには、真正面からぶつかり合うだけじゃどんなに頑張っても勝てない。城の守備を薄くして、街の守りを薄くしても、アルファス君達やイルラナスちゃん達の力があれば、この街も城も守り切れる。でも、具体的な戦力内容こそ知らなくても、何かしらの戦力を残している事位今までの流れからして相手だって考えてるわ。そんな相手がやる事と言えば」

「国王様の……誘拐、暗殺」

 リンレイのその言葉に、ヴァネッサは頷く。

「何かしらの手段を用意してると考えてるわ。結果としてあの人が消える、完全に人質にされる。その事案が発生した場合、確実に崩れるわ。それでも勝てる可能性は十分にあるけど、確実に負ける可能性が出てくる。何よりあの人を失った状態で勝利した所で、ハインハウルス国は元に戻れなくなる」

「それは……確かに」

 リンレイとて、ヨゼルドの実力、存在は認める所である。――だが。

「でも何故私なのですか? 私は――」

「理由は、あえて選ぶとしたら、軍の中では私が一番リンレイちゃんを信用しているから、かな」

 ネガティブな理由を並べようとしたリンレイの言葉を、ヴァネッサは自分の言葉で上書きする。

「リンレイちゃん、私と出会ってもう何年?」

「十代の頃ですから、もう十年は経ちます。まだ右も左もわからない私を、ヴァネッサ様は引っ張り上げて下さいました」

「そうね。才能はあると思ってたけど、最初は中々に堅物だったわね。何度アルファス君と喧嘩した?」

「止めて下さいその話は」

 恥ずかしそうにリンレイは少しむくれる。実際同じ部隊に配属になった当初は何度揉めたかわからない。今は尊敬し、一人の男性としても見ているアルファスに何であんな態度をとっていたのか、自分自身も恥ずかしくなる話である。

「ごめんごめん。でも、そういう紆余曲折があって、リンレイちゃんは本当に私にとって頼れる仲間になったわ。リンレイちゃん抜きでは今ではもう考えられないもの。皆の「天騎士の片腕」っていう評価、私も認める所よ」

「ありがとうございます、そう言って頂けるだけで幸せです」

 ヴァネッサに関してはアルファスと違い出会って直ぐに崇拝が始まっている。その気持ちは勿論今でも変わらない。そのヴァネッサにそう言われて、嬉しくないわけがない。

「だから、そのリンレイちゃんに、私の一番大切な人――ヨゼルドの身を、任せたいの。確かにフウラ君やアルファス君に頼んでも守れると思う。でも、今回わかっていて私はあの人を危険な目に晒す。その時、誰に任せたいのか。そう考えた時、離れていても必ず私の意思を汲み取ってくれる、リンレイちゃんしかいない。そう思ったの」

「ヴァネッサ様……」

「リンレイちゃん。――あの人の事、宜しくお願いします」

 そう言ってヴァネッサが、ゆっくりとリンレイに向けて頭を下げる。――って、

「止めて下さい私にそんな事を! 私は、私はっ!」

「違うの、リンレイちゃんだからやるの。リンレイちゃんの気持ちだってわかってる。その上でこの事をお願いするんだから、この位安い物よ」

 最初に切り出された時こそ最重要の任務の中で何故自分だけが外されなくてはならないのか、という疑問が当然浮かんだが、その疑問は呆気なく吹き飛んだ。寧ろここまでヴァネッサに言われる事、光栄以外の何物でもない。

「ヴァネッサ様。――この命を懸けて、国王様を、ヴァネッサ様の愛する人をお守りする事を誓います」

「ありがとう。凱旋した時に、ちゃんと二人で元気な姿で出迎えてね」

「お約束します」

 ヴァネッサも悩んだ末の結論だった。リンレイがこの申し出を受けてくれた事で、肩の荷が一つ下りた気分になる。

「そうだ、無事に任務を成功させてくれたら、特別なご褒美用意してあげる」

「特別な……ご褒美、ですか?」

 リンレイとしてはヴァネッサに重宝され、褒められ愛されるだけで十分。――そう伝えようとしたのだが、

「そう。花嫁修業、つけてあげる」

「え?」

 意外な言葉が飛んで来た。――花嫁修業?

「三十になる前に、結婚したいとか思う事ない? リンレイちゃん騎士として軍人として立派だけど、その辺りのスキルはまだそんなに磨いてないでしょ。その辺り直接教えてあげるし、それから手解きと、後押ししてあげる。アルファス君との」

「本当ですか!?」

 その魅力的な提案に、つい喰いついてしまう。――本人を前に宣言してる通り、リンレイにその願望は十分過ぎる程ある。

「うん。セッテちゃんがいるからその辺りの兼ね合いとか、そもそもアルファス君本人の説得とか色々あるけど、まあ何とかしてあげるわ。任せなさい」

「はい! 宜しくお願いします!」

 嬉しそうに返事をするリンレイに、ヴァネッサもつい笑みが零れる。

「ま、その前にまずは勝利。完全勝利。目指しましょう」

「勿論です。――この国をこれ以上、脅かすのを許すわけにはいきません」



 モヨネダの前に立ちはだかるその姿。モヨネダとしては予想外である。

 護衛がいる可能性は考えていた。だがいたとしても一兵卒の名も無き兵士程度だと思っていた。戦力は少しでも外へ。その流れを絶対に組んでくると思っていた。

 だが用意されていた護衛は一人、女騎士は自分を「隼騎士」だと名乗った。――その称号は聞き覚えがある。ハインハウルス軍の戦力を頭に入れる際に耳にした。天騎士の片腕。重要な時になればなる程、彼女の片腕として傍で補佐をしている。当然今回の出撃も天騎士の隣にいなければおかしい。その彼女が、こちらの襲撃に備えて国王ヨゼルドの護衛に立っている。

「がっははは! あいつも人間だったってわけだ!」

 この事案は、教祖は予測して「いない」。ハインハウルス側がついに教祖の裏をかいた形であり、その事実についモヨネダは笑ってしまった。――この事を知ったらあいつはまた苛立って小言を言い出すんだろうな。でもまあ、

「まとめて俺がどうにかすれば同じ事だな!」

 大剣を改めて握り直す。その大柄な体と経験から放たれる気迫と威圧。

「ふふっ……あはははっ」

 そして笑い出したのはヨゼルドだった。

「ヴァネッサに何の心配もいらないと言われてはいたが、確かにこれなら心配はいらなかったな。リンレイ君を残してくれているとは思わなかった」

 その言葉の通り、ヨゼルドもヴァネッサからある程度は聞かされていたが、誰を残すかまでは知らされていなかった。ヴァネッサからしたらリンレイを残すと言えばヨゼルドは攻撃側の作戦成功を心配する。その事を懸念した結果である。ヴァネッサは教祖の裏もかいたがヨゼルドの裏もかいた。その事にヨゼルドはつい笑ってしまったのだ。

「さて。――礼を言おうリンレイ君。私の命、君に預ける」

「ヴァネッサ様の命令ですのでお気になさらず。私個人で言えば貴方様には言いたい事が山ほどありますので」

「最近はヴァネッサが一緒にいる事が多いから比較的大人しくしてると思うけどまだ駄目なの!?」

「ヴァネッサ様に甘え過ぎなのです。先日も、更にこの前も、更には……と、それはまた後日にしましょう。それに」

 リンレイの持つ空気が変わる。辺りの空気が綺麗に整い始める。

「そんな貴方様でも、本当にこの国には、我々には絶対に必要な存在です。あんな輩共に傷一つつけさせるわけにはいきませんから」

 モヨネダが出した様な気迫とか威圧とかは無い。ただただ、研ぎ澄まされる空間。その研ぎ澄まされた空気が、まるでモヨネダの威圧を掻き消している。そんな気さえする物。

「それに、私個人としても要件が一つ、出来てしまったので」

「ほう?」

「ヴァネッサ様との約束に助力をお願いするつもりです。後押しの権力は、多い方がいい。その為にも必ず守ります」

 そこでリンレイはモヨネダを「見た」。今までも見ていなかったわけではないが、初めてそこでモヨネダという存在を「見た」。――少なくとも、モヨネダはそう感じた。

「がっははは! そうか、既に俺は眼中にないわけだ! いいだろう、どっちにしろまとめて斬るしか俺には選択肢がないからな!」

 モヨネダが地を蹴った。――改めての一騎討ちが、幕を開けた。



 キュレイゼに纏われる謎のオーラ。不思議なそれはでも確実にキュレイゼの物になり、

「っ!」

 ガキィン!――剣を再びぶつけ合ったヴァネッサを驚かせるには十分過ぎる物だった。

(速度も威力も、さっきまでとは段違い……まるで別人……!?)

 ヴァネッサ、ソード・オブ・ワールドで剣を呼び二刀流にチェンジ。手数で攻め、隙を突こうとする。キュレイゼに自分の二刀流だけに集中させ、背後の隙を作らせ、そこをソード・オブ・ワールドで剣だけで攻撃を仕掛けようとするが、

「無駄だ」

「!」

 一気に貫こうとした背後の剣は、キュレイゼが纏うオーラに自動でガードされた。更にそのままキュレイゼは剣のオーラを更に増やし、ヴァネッサを押し切る。ヴァネッサ、ダメージと共に後退。

「神装結界を装備に纏わせてる……?」

「ご明察。流石だ」

 神装結界。それはその名の通り神が織りなすレベルの防壁であり、上位レベルの魔導士が数日かけて魔力を練り込んで用意する程の品。実際存在はするが、実用するには膨大な魔力と手順が必要であり、中々耳にする品ではない。――コリケットの騒動の時、その名が出ているがそれも相当有り得ない話だった。

 だがキュレイゼはそれを装備に纏わせて自身の力を段違いにパワーアップさせている。それこそ「有り得ない」話だった。

「楽が出来るとは思ってなかったし、「あれ以来」何かしらまだ隠してるとは思ってたけど、中々に驚かせてくれるわね」

「出し惜しみしている場合ではないからな」

「でも無理はしてるでしょ?」

 勿論それははいそうですかで扱える技術ではない事は、ヴァネッサは直ぐに見抜いた。壊れかけのバランス。

「今無理しなくていつ無理をするんだ? 私の剣は、守る為にある」

 だがそんな駆け引きにもキュレイゼは動じない。真っ直ぐな目で、ヴァネッサを見ている。

「貴女の守りたい物? 貴女を駒にして今でも隠れてる教祖様かしら。そんなに素晴らしい人なの?」

「……っ……くくっ……ははははっ」

 そのヴァネッサの問い掛けに、今度はキュレイゼは不意に笑い出した。

「素晴らしくなんてあるものか! あんな男、存在の価値も無い! 教祖様? カリスマ? あいつは口が上手いだけの所詮普通の人間だ!」

「!?」

 そして吐き捨てる様にそう言い切った。あまりの発言に流石にヴァネッサも動揺を隠せない。

「私が守りたいのはタカクシン教だけだ! この名前だけは、神だけは、私が必ず守り切ってみせる!」

 そのままキュレイゼは再び地を蹴り、ヴァネッサに切り掛かった。激しい衝突音が広がる。そして――

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