1.面接 前編
序章を見ていただいた方、ありがとうございます。
今回より本編が始まります。
西暦2070年5月6日
愛知県名古屋市
やや年季を帯びたビルを前に、私は立ち呆けていた。
ここで…合ってるよね?
何度もスマホのマップで現在地を確認する。
間違いない。ここだ。…見た画像よりボロい建物だなぁ。
中に入るその前に、カバンの中身をチェックする。忘れ物はない。よし。
ガラス窓で自分の容姿も確認する。
―私は立花愛。本年21歳。これから新魚類特別対策局の面接を受ける。
新魚類特別対策局とは、数年前に設立されたばかりの小さな会社で、2054年に現れた特殊な魚類「新魚類」の調査ならびに「沈静化」をおこなっている。
「沈静化」―それは新魚類を殺すというわけではない。新魚類をもとの魚の姿に戻すのだ。なんともぶっ飛んだ話だが、実際にその技術はあり、これまで何度か「沈静化」に成功しているという。
そんな今の時代を救うスーパーヒーローのような会社なら、いったいどれだけの人が面接にくるのか。
そんなことを考えながら、私は建物の中に入った。
面接の待機場所に来た私は少し困惑していた。
―誰もいない。
面接開始まであと15分。私が一番最初だということは知っていたが、後の人がいないなんて…
―やっぱり、「向こう」の影響があるのかな。
実は特対局の世間からの信頼はまだそれほどないらしい。その理由は、新魚類の沈静化の実績がまだ少ないことと、もうひとつの新魚類対策組織による影響だ。
もうひとつの組織―新魚類討伐特殊部隊、通称バトルフィッシュチームは、武力を持って新魚類を制する部隊だ。
2054年の東京襲撃を受け、2年後の2056年に憲法が改正され、新魚類に対し武力攻撃が認められるようになった。ここで設立されたのがバトルフィッシュチーム。
特対局と違い自衛隊直属の部隊のため、機動力の高さを活かして日本のみならず世界中で活動している。
まさに特対局のライバル的存在と言っていいだろう。
―ひとりでそんなことを考えていると、突如一人の男性が目の前に現れた。
「立花愛さん…ですか?」
「あ、は、はい!」
私は半ばびっくりしながら答えた。
口元に立派な髭を生やしたその男性は、見上げるほどの巨躯の持ち主だった。
「よかった。では立花さん、こちらに。面接を始めますよ。」
「わ、わかりました!」
もうそんなに時間がたっていたのか。しっかり時計を見ておけばよかった…
私は緊張しつつその男性に付いていき、面接を行う部屋へと案内された。
「こちらの部屋です。さあ、どうぞ。」
あれ?面接ってこんな感じだったかな…と思いつつ、男性に示された部屋の扉に手をかけた。
ここを開ければもう後戻りはできない。
でも私には、ここで戦わなければならない理由があるんだ。
心臓がバクバクと鳴っている。全身を血液が激しく巡っているのを感じる…
ゆっくりと息を吸い、吐き…
私は意を決して扉をひらいた。




