妖精たちは何も気付かずに
時計の森 内部
「キャハハハ!暗〜い!」
「アハハハ!こわ〜い!」
「2人・・・とも・・・あま・・り・・・離れ・・・ない・・・で」
生い茂る木々が日光を拒絶し、いくつもの木がが重なり合い壁を成す。決められたルートを歩けと言わんばかりに、生い茂る木々の壁。それに従う様に3人はキャッキャと歩き出した。
頭に、メイデイが作った『ザッツライト君』を装着した3人。これを付ければどんな暗いところもバッチリ!『ザッツライト君』が貴方の目の前を照らしてくれる!
勿論、お先真っ暗な貴方にもオススメの商品です!
『ザッツライト君』に照らされた森の中をリュックを背負って歩く。メイニーネイシーの小さな身体に背負われた、この小さなリュックに何が入っているか……謎である。
何が楽しいのか鼻歌を「「うっふふーん、ふんふんふっーんふー」」と、歌いながら手を繋いで歩く2人。それを見守る様にヒタキは後ろを歩いた。
……その後ろに現れた黒く蠢くもの。突如現れた様にも感じるが、実は森に入った段階から、3人の後を後を付けていた。
シャドウウルフだ。
影に潜み、不意をつく事で獲物を仕留める、暗闇の暗殺者。気配を捉える事が至難で、襲われた事にすら気付かずに獲物を仕留める。
まるで影に襲われた様にさえ錯覚させる事から付いた名である。
シャドウウルフは久しぶりの人間に喜ぶ。
か弱く、それでいて食いでのある人間は彼らの格好のマトであった。だからいつものように、気配を殺しヒタキ等の背後に近づこうと、のそりと一歩を踏み出した。
瞬間、頭に投げナイフが生える。
シャドウウルフは何も出来ずにそのままばたりと倒れた。
ヒタキがいつのまにか背後も見ずに投げナイフを投げていたのだ。そのナイフが頭を貫いた。シャドウウルフも死んだことさえ気付いていないであろう早業に、メイニーネイシーは敵が近くに居たことに気付いてさえいない。先ほど同様鼻歌をふんふんしている。
ヒタキも同様に何もなかったが如くテクテクと歩く。
だが、その背後には…
何故だろう。何故、シャドウウルフはウルフの名を授けられたのか。
外見的な特徴が酷似していたのも……成る程確かに。理由の一つではあるだろう。
だが最大の理由はその習性である。
…すなわち、シャドウウルフは『群れ』で行動する。
グルゥ…
低い唸り声が聞こえる。先ほど、頭から投げナイフを生やしてオシャレに目覚めた個体の後ろから
いくつもの目が光る。数匹……いや、十数匹は居るであろうコミュニティ。
彼らは仲間を殺したであろうその人間たちに報復をしようと、数の暴力で囲もうとした。
シャドウウルフは考える。先ほどのヤツは油断したかもしれないが、と。たかだか人間、食い殺してやる。
口から涎を垂らしながら、少ない脳みそで彼らは食い散らかす未来を情景る。
量は少ないが仕方あるまい。この際噛み付いた瞬間に、コイツの身体の半分は食いちぎっtくぁぶへ
また、シャドウウルフの頭にナイフが生える。一体目のシャドウウルフを習う様に、ばたりと倒れた。
ヒタキは手に数本の投げナイフを持っていた。
腕が消える。そう思わせるほど俊敏にナイフを放ると、シャドウウルフの頭にそのナイフが現れる。倒れたシャドウウルフに、周りが気付き始めると同時にその周りも頭にナイフを生やし、倒れる。
背後を全く見ず、前を向き歩きながら淡々と背後にいるシャドウウルフを処理していく。
言葉通り、瞬く間に最後の1匹となった。その個体は自分のコミュニティが無くなった事に気付き堪らずに駆け出す。
このままでは自分も殺される!と、背を向け逃げ出したのだ。が、その判断は少し遅かった様だ。シャドウウルフの頭上に何かがキラリと光る。
それは、ナイフであった。重力での自由落下ではありえない速度で落ちてくる。駆け出し逃げたシャドウウルフをナイフが頭上から貫いた。最期の一匹が倒れる。
一度も背後を見ることなくシャドウウルフを全滅させたヒタキは、仲良く浮かぶ2人の妖精の背を見ながら何ごともなかったかの様に森の奥へと進む。
「たのし〜ね!ヒタキ!」
「うれし〜ね!ヒタキ!」
そう言って振り返る妖精2人に、ヒタキはコクリと頷いた。




