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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
落下流水編
97/112

二度目の正直

お読みいただきありがとうございます

短いですが、お返事です

「無理!」


 ブチッとティルルの血管が二、三本切れた音がした。


(これで二度目だぞ。)


「無理ということは俺のことが嫌いということなのか?」

 感触ではいけると思っていたが、三度目はない。

 嫌なら仕方がない。

 安心して眠ることのできる場所がないのは今までどおりだ。


「嫌いじゃない。・・・ティルルのことは大好きだし、そんな妄想をしたことも一回や二回や三回・・・はあるけど・・・皇帝陛下の奥さんって・・・皇后?そんな柄じゃないし、社交なんてできないし、ティルルの足を引っ張るだけだと思うの。」


 顔を赤くして目をウロウロさせて答えている沙耶の言葉を聞いているうちにティルルの顔が柔らぐ。

(具体的に考えてはいたんだな。)


「じゃあ、俺が他の貴族の女を妻に娶って後宮に入れても平気なのだな?」


 沙耶の顔が歪む。

「それも考えた。胸がムカムカして締め付けられた。そうなったとしたら『白亜宮』を改装してあっちに住もうかと思っていた。ティルルとその奥様がいるところを見たくないし、気配を感じたくないし、噂を耳にしたくもない。」


 ますますティルルの顔が緩む。

「『白亜宮』は国境に遠い。許可はできない。」


「じゃあ、ナッソーに行こうかな。」

 目があちこちに彷徨う。


「サヤ、俺が皇帝でなかったら?」


「皇帝だし。でもこの世界でずっと一緒にいてもいいかなと思っていた。」


「サヤは俺という人間を皇帝という身分で見ているわけだ。」


「え?」

 ティルルの顔を改めて見ると苦虫を噛み潰しているような顔だ。

「違う。」


「違わないだろう?皇帝ではない俺なら良くて、皇帝の身分が付けばダメということはそういうことだ。もし帝位を委譲してただのティルルになれば、一緒にいられるのか?」


「ティルルはそんなことをしない。皇帝として臣民を守っていくことの大切さをわかっているし、ティルルが皇帝だから、ラーヴェラル帝国の人達は笑っていられるようになったと聞いている。周りの人達だってティルルが皇帝をやめるなんてことは承知しない。」


「やると言ったら実行してきたのが俺だぞ?」

 沙耶は怯えたように頭を振る。


「俺が、サヤを必要としているんだ。皇帝ではない。サヤは皇帝ではない俺を必要としてくれていないのか?」


「ティルルは大事。ティルルが、政略結婚しなくてはならない身分だとして、他の女性と暮らすことを想像するのは、とても辛いことなの。」

(ネット小説でそんなパターンがあるんだな。)


「俺は、信じていた血縁に裏切られて、五年間鎖につながれて石牢に閉じ込められていたことがある。

 凍傷にかかって手足が落なかっただけでも幸運だったほどに、冬はとんでもなく寒かった。石牢の壁に鎖でつながれて厠が真ん中の壁際に一つ。

 反対側の壁にはアーカネが繋がれていた。」


「アーカネ?」


「そうだ。あいつは純血種を憎んでいてな。かろうじて部屋の真ん中までは鎖が届いた。俺が厠を使おうと動いた時に殺そうと虎視眈々と狙っていたよ。

 だが、寒さの中で互いに生き残るためには真ん中で体を寄せ合い、温め合うしか方法はなかった。

 やつといろんなことを話した。五年後にリガードとオーリスが決死隊を結成して助け出してくれた頃には、あいつとは兄弟のようになっていた。その時の経験が俺を『冷血』にした。やるときは容赦なく。幼子さえ手にかけた。その幼子が大きくなって復讐を叫ぶのを恐れるからだ。小さい人間なのだ、俺は。」

 口元に冷笑が浮かぶ。

 沙耶は知らないが、彼女がこの世界に来る前のティルルの笑い顔だ。

「俺の力にはなってくれないのか?信じられる心の一部になってくれないか?行き過ぎの時は止めてくれないか?」


 小さく低い声ながらもそれは沙耶には、叫んでいるかのように聞こえた。

「この世界に来てティルルに会えてよかったと思っている。ずっと一緒にいたいと思っていたけど、皇帝陛下のティルルは恋愛感情だけで結婚なんてできないと思っていた。皇后なんて柄じゃないけど私がいることで、ティルルの息がし易いなら、一緒にいる。」


「皇帝が二回も振られるなんて、シャレにならないところだったぞ。」

 ホッとするティルル。


「二回?今の前にプロポーズなんてされた?」


「求婚をプロポーズというのか?向こうでは何かの儀式なのか?調べておこう。」


「調べなくていいって。」


「結婚の儀式は待ったがかかってはいるが、婚儀の準備にはかかるからな。」


「え?そんな勝手に決めてしまっていいの?」


 ティルルはいつものちょっと意地の悪い笑顔をつくる。

「元老院のじじいどもは、サヤがマッシュール王国に行っている最中にアーカネと『掃除』しておいた。マエール国教会には打診して条件付き許可済みだ。」

 見事に外堀を埋めてある。


「もしかして断ったら、かなり立場上きついものになっていた?」


「かなりな。」


いやあ、良かったですね。

もっと後になるかと思っていたのですが・・・

皆さん『くっつけ~』と念じていました?

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