カコイイ能力
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戦神子のための居住空間が、王宮内にあるのはどこも同じだ。
その場所が元首の生活する後宮と微妙な距離感があるのも一緒だ。
基本的に依存関係にあるが、元首と戦神子の関係はおしなべてあまり良くないように見受けられる。
これは五大国会議に出た沙耶の印象だ。
もちろんティルルと自分の関係は除くが。
そして今いる場所はマッシュール王国の戦神子の住まうミコト宮。
目の前にいるのは乱入してきたニューカマー。
「よかったよ。サヤちゃんが来てくれて。なんて言ったけ、“白い先輩の戦神子さん”や“ゴーレムの男の子”が来たらどうしようって思ってたわけ。ま、別にあの人たちでもいいんだけど、やっぱ可愛い子に教わりたいじゃないか!」
機関銃のようにまくし立てるケンジを部屋から追い出そうとして、結局ミコト宮まで来ることになった。
「趣味悪くてさあ。前の戦神子って筋肉オタクだったみたいで、部屋の仲間でトレーニングの道具がいっぱい。ありえないっしょ。内装もおやじ臭くて、本当はこっちに来てもらいたくないのだけどな。」
渋々案内する。
「実年齢は結構年だったと聞きましたけど?」
「サヤちゃん、きっつ~い。俺はおっさんではなくておじさまを目指しているわけ。」
ダサくても自分の好みではないからとしつこく念を押して案内されたミコト宮。
・・・なんでこんなに鏡があるの?
「鏡がいっぱいあるのですね。」
一緒に付いて来てくれたユリルがこそっとサヤに言う。
「え?食いつくところそこ?」
ケンジが耳ざとく聞きつける。
「もともとあったけど、鏡はいいんだよ。」
鏡はいいのかい!
思わず突っ込みそうになった。
そんなに自分の顔を見ていたいのか!
私はゴメンだった。
今は・・・多少なれたけど。
「ギリシャ彫刻みたいなものも多いですね。」
「そうだよ。そこだよ。最初の頃夜挨拶なんかして恥ずかしい目にあちゃったよ。部屋の中も筋トレの道具ばっかりでさあ。汗臭い匂いが取れないんだ。外から帰ってくると一瞬うってなるんだよ。」
なある。
「夜、部屋に佇んでいたら怖いですね。それに体育会系の部室の匂いですね。」
「そうそう!それ!さっすがあ、サヤちゃん、わかってくれてるね。こういうことは同じ世界から来てないと分かり合えないよね。」
腕組みしてうんうんと頷いている。
「ウガっちがうるさいんだよ。来たばっかなのにもう少しこっちの身になれってえの。そう思わなかった?勝手に引っ張っておいて、謝んのが先だろうって話。しかも仕事は危険だし、給料や待遇なんて話もなく。ブラックですかって話だよな。」
言っていることはむちゃくちゃだが、少しはその気持ちはわかる。
自分も始めは身の置き所がなかった。
「住めば都です。頑張りましょう。私に出来ることでしたらお手伝いします。」
「サヤちゃん。いい子だなあ。俺、サヤちゃんみたいな女の子と付き合っていれば、落ちぶれなかったのにな。俺、仕事がホストじゃん。二枚目半で女の子のいいところを褒めまくっていい気持ちにさせるって方向で稼いでいたわけ。店に来る子はちょっとお疲れちゃんな子が多くて、そんな時見え透いてでも自分を褒めてもらいたくて来るわけさ。でもさ、褒めまくっているとそのうち勘違いしてきちゃうわけ。本当は自分は俺が言っているような人間なんだってね。あれ?何が言いたいんだっけ?あ、そうそう、今の褒めたのは営業じゃないからね。俺さ、この世界で媚売って生きていくのはやめようと思っている訳。」
身振り手振りがとっても激しい。
ホストって聞き上手な方が、売れると聞いたことがあるんだけど、反動でこうなちゃったのか?
よく鳴く犬の散歩のようにケンジを従え(?)ミコト宮の応接室にたどり着く。
もうすでに気力、体力ともにかなり減っていたところに、ケンジの襲来だ。
(私、もつかしら・・・)
「こちらへどうぞ。」
途中から駆けつけてきたケンジの侍従がミコト宮の応接室に案内する。
「今お茶をお持ちいたします。」
ありがたい。ユリルのお茶は飲みはぐってしまったので、喉が渇いている。
マッシュール王国の特産の茶葉は少し酸味があって、ローズヒップ系の味がした。
自分でも驚くほど喉が渇いていたので、おかわりを所望する。
二杯目も飲み干し、三杯目に口をつけ、切り出す
「能力について何かイメージが有りますか?こちらに来てから変わったこととかありますか?」
お茶を飲んでいるあいだも、ケンジはずっとノンストップ。
ケンジに付き合っていたら、百年くらいあっという間に過ぎてしまいそうだ。
「え?早速?もっとお互いのことを知り合おうよ。」
「だから元の世界と変わったことは何かありますか?」
「つれないなあ。・・・若くなったことぐらいかな。俺的に一番モテていた時期。」
「趣味は?」
「ナンパ。」
返事、早!
「他にはありますか?」
「漫画かな。もう読めないな。ま、いいけど。」
腕を頭の後ろに組むと上の方を見る。
「カッコイイ能力がいいよな。せっかくだったら、ヒーローになりたいなあ。」
「ヒーローですか?スーパーマンみたいな?」
「そう!漫画のキャラクターなんてどうよ。あ、特撮ものはなし。あれは顔が見えないからね。マトリックスみたいに手のひらでチョイチョイってのもやってみたいなあ。」
そう言ってチョイチョイとしている。
「もうやっているじゃないですか。」
「危機に絶妙なタイミングに現れて、『俺、最強』なんていいなあ。」
「具体的なイメージがあれば、発現しやすいですが、あくまで能力のイメージで登場シーンのイメージではないですから。」
「つれないなあ。『ロギア系』『アタタタ系』『マトリックス系』『ソーサラー系』。銃はかぶるからな。やっぱりかぶったらつまらないし目立たないからな。目立つのがいいな。サヤちゃんも考えてよ。」
「何をですか?」
「俺の『カッコイイ能力』」
ああ、ティルル。私、帰りたい。




