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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
激震編
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89/112

寝起き

お読みいただきありがとうございます

短いです

 ・・・・・


 ・・・・・


 状況を整理しよう。


 昨日『白亜宮』に到着、そののち寝床を作って、ブッ飛んだお風呂に入って、ご飯を食べて、シロと寝た。

 ここまでは確かだ。

 何故目を開けると、ティルルがいる?

 しかも爆睡中。

 目の前で手をひらひらさせても反応がない。

 シロがティルルに変身したとか?

 いや、背中にある毛皮の感じはシロだ。

 シロもよく寝ているみたいだ。

 まだ朝には早いのか?

 窓のカーテンは冬の冷気を逃がさないために分厚く、外の明かりもあまり差し込んでこないが、早起きの鳥の声もしないところを見ると、起きるには早すぎるのだろう。

 お酒を飲むと気が大きくなって、誰彼構わずひっつくという酒癖があるサヤだが、異世界(こっち)に来てからはほとんど飲んでいない。

 ティルルに寝酒を勧められたが、断ったはずだ。

 ティルルか?

 飲むと人恋しくなるのか?

 飲みすぎて寝床がわからなくなったのか?

 それならば元の寝床に戻してあげたほうがいいのではないか?


 そう思い身を起こすと、ティルルが身じろぎをする。


 明け方は一番気持ちよく寝れる時間だ。

 この時間に起こされるのが辛いということは知っている。

 もう少しこのまま寝かせてあげようか。


 サヤは再びティルルの横に収まる。


「う~ん」


 ティルルの腕がサヤの胸にかかる。


(!!)

 ゆっくりと仰向けから横向きになって、ティルルの手が胸から外れるように誘導する。

(ひえ~、わざとじゃないよね?寝ているよね?そういうキャラじゃないよね?)


 横向きになったせいで、ティルルの顔が至近距離に近づく。

(鼻息かけちゃいそう。)

 上掛けを引っ張り上げる。

(近い。ティルルって意外にまつげが長いんだ。北方の人って色白いよね。)


 ティルルの顔がしかむ。

(え?鼻息かかった?)

 かけられていた腕がどかされて、ティルルがその手を自分の顔に当てる。


「ティルル?どこか痛いの?」

 そっと小声でささやく。


「・・・・寒い」


「寒いの?」

 沙耶は自分の掛け布団をティルルにかける。


「・・・・絶対に許さない。」


「ごめんなさい。って寝言?」


「父上・・・母上・・・誰もいないのか?」


「ティルル、いるよ?そばにいるよ?」

 顔を掴んでいる手をとって言う。


 悪い夢を見ているときは、目を覚まさせてあげたほうが良い。


「手が・・・・」


「手?」


 手の甲に少し手触りが違うところがある。怪我をして治ったあとだ。この傷が気圧の変化で痛むのかもしれない。それが記憶と結びついて悪い夢になっていく。

 手を優しくさすっていると、ティルルの顔から力が抜けていく。


(ティルルのこと、何も知らないなあ)


 どんな人生を歩いてきたのだろうか。

 周りの人の話から、順風満帆の人生ではなかったとは想像できる。

 同じ純血種よりも動物混じり(ミクスチャー)への思い入れが強いのも、人に対して善意とか好意を期待しないで切り捨てるところとかは、その生い立ちが影響しているのだろう。

 本当は優しい人なのに。


 柔らかくなった顔を見ているうちに、沙耶はまたとろとろと眠りに吸い込まれていった。




 ・・・・


 ・・・・


 状況を整理しよう。


 シロに引っ張られてサヤと同じ寝床にねる羽目になった。

 それはいい。

 だが

 何故俺の手はサヤに握られているのだ?

 しかも、この密着度は!



 ティルルが対応しようとあたふたしていると、サヤの向こうから白い毛皮(シロ)がむくりと起きる。

 子供の腕ほどもある牙を見せて大あくびをすると、グルーミングを始める。


「ん・・・シロ・・・もう少し寝ようよ。寒い。」

 そう言うと掛け布団の中に潜り込もうとする。

 自分がなにか(・・・)を握っていたのに気がつき、目を開ける。


 目が合う。


「・・・・」


「・・・・」


「お、おはようございます。」


「・・・おはよう。」


「一つ聞いていいですか?」


「なんだ。」


「何故ここに?」


「シロがここに連れてきた。」


「本当に?」


「嘘をつくようなことか。こっちもひとつ聞いていいか?」


「はい。」


「なんで手を握られている?」


 サヤの顔が紅に染まる。

「・・・それはですね。ティルルが明け方に手が痛いとうなされていたので、マッサージを。」


「明け方・・・マッサージ。覚えていない。」


「マッサージしたら、また気持ちよさそうに寝れたみたいですね。」


「昨日結局薬は飲まなかったはずだが・・・本当にひさしぶりにぐっすりと寝たという気がする。」


そろそろ事態は動いてきますかね?

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