帝都にて
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グルグルグルグルグルグルグル
図体が大きいので遠くで雷が鳴っていますかと聞きたくなるくらい音が、傍でしている。
「シロ?」
『ん~?』
シロのザラっとした舌で舐められる。
加減されているのでそんなに痛くはない。(でも痛い)
沙耶は寝床から手を伸ばして、シロの顔を触る。
柔らかいシルクのような手触りが気持ち良い。
沙耶は帝都に帰り着くやいなや、シロのもとに行きモフり倒した。
シロもまたしばらくぶりの沙耶に、甘え倒していてべったり状態だ。
強力な麻酔薬の影響はなかったらしく、シロの体調は好調だ。
沙耶がシンに見せてもらっていたように、スベルトで上位キマイラを倒し血肉を取り込んだので麻酔薬の効果が薄れたのではないかと、考えられていた。
キマイラの死体とキマイラの胎児は研究所に回されたそうだ。
シロの体調は好調だが、沙耶の体調は最悪になった。
召喚されて二年、自分の存在がいらないものとされないように、女性用のグッズを作り、飲食店を経営し(今は丸なげ)、『なんとか役に立つものです首にしないでください』とずっと働いてきた。休むことなく帝国中を巡視もしてきた。それ以外でも、なれない上流社会での生活は『常時仕事』の感覚で、くつろげる時はほんの少ししかなかった。
病名診断は『過労からくるナーズ熱』
エステリオ王国でもらってきたらしい。
睡眠不足から抵抗力が弱ってきていたので、かかったのだろう。
『ナーズ熱』は生死に関わる病気ではない。寝込んだ途端に今までの反動で、沙耶は動けなくなってしまった。
「俺もいるのだがな?」
シロと別サイドからここにはいないはずの人の声がする。
「ティルル?・・・まだ昼間だよ?仕事は?」
ここのところ沙耶が寝込んでから、ティルルは朝夕必ず沙耶のところに来る。
「休憩だ。今日は顔色が少しはいいな。」
口の中が熱でやられていて、食欲もないので顔がほっそりとしてやつれている。
高熱は収まったが微熱で潤んだ目と気だるそうな感じが色っぽい。
「ん、早く治さなければいけないのに、ごめんなさい。」
「何度も謝るな。今までゆっくりさせてやれなかったのがいけなかったのだ。俺の責任だ。早く良くなって欲しいのは確かだが、それは・・・俺が沙耶の元気な姿が見たいから。」
言いにくいことを言ってしまったので居直ったらしく、ティルルはさらに
「治ったら離宮でゆっくりするのもいいな。帝都は寒さが厳しくなるので病み上がりの沙耶には応えるだろう。俺も二、三日沙耶と過ごしたい。」
「嬉しいな。じゃあティルルのためにも早く治らなきゃね。」
小さくガッツポーズをとって笑う。
「そうしてくれ。」
二人のあいだに極めて良い雰囲気が漂う。
『あ゛』
「シロも一緒ね。」
沙耶を挟んで火花が散る。
それからさらに四日後
ベッドにくくりつけられたような状態は改善したが、まだ好調には程遠かった。
だが、沙耶本人としては良くなっているという感じはしている。
「明日くらいから少し起きていようと思うのですが、ダメでしょうか?」
「まあ、少しずつならその方が体のためにもよろしいでしょう。ですが少しずつです、サヤ様は頑張りすぎるキライがあります。それから出来れば皇帝陛下がおいでの時は、まだしばらくは寝ていてください。」
「ティルルが来ている時?」
「はい、起きていらっしゃると何かと後でご下問がうるさいので。」
(皇帝に『うるさい』って)
腑に落ちない顔をしているとセエルが
「サヤ様がお病気になってから、オンク医師は皇帝陛下から毎日責め立てられております。」
「え?私の治りが遅いからですか?」
「いいえ、このように寝込まれるまでサヤ様の体調の変化に気がつかなかったことについての詰問でしたので、それは受け止めております。今はどちらかというと『滋養のつくものを食べさせたほうがようのではないか』とか『寝ている向きが悪いのではないか』とか『外気を入れるのは良くないのではないか』挙句には『シロの抜け毛はサヤの体に悪そうだ』などと素人判断での思いつきを言われて実行に移してみろと、責め立てられて居ります。」
「・・・・なんかすみません。」
「サヤ様が謝られることはありません。陛下にこういうところがお有りになるということを初めて知って面食らっているというのが、本当のところです。」
オンク医師は穏やかな顔に苦笑を浮かべるとセエルと今後の食事と薬について、話すために別室に下がった。
「もう少し薬は続けましょう。筋力が落ちているようですので、時々マッサージと居間を歩くくらいは始めても良いでしょう。」
オンク医師の指示にセエルは頷く
「はい。少し体を動かされた方がお腹も空くので食が進むかもしれません。」
「おっしゃる通りです。食事の要望はなるべく叶えてあげて構いません。特に控えなくてはいけないものもありません。」
「かしこまりました。」
「陛下は今日もサヤ様と食事を摂られるようですか?」
「その後予定でございます。」
オンク医師は軽く首を振る。
「いやはや、全く陛下のサヤ様に対する対応がここまで変わるとは・・・」
「サヤ様の方はずっとお変わり遊ばしていらっしゃいませんが、陛下は確かにお変わりあそばしました。」
『契約の儀式』をしないことでこの世界に適合するのに苦しんでいた神子に、『死んでも構わない』そのあとも『役にたつのは猫の方』『異世界と繋がるだけの無力な神子』と“冷血”の名にふさわしい扱いをしていたはずだ。
今は滋養に良いからとハチミツを取り寄せさせたり、熱が下がらないことについてオンク医師を“ヤブ”呼ばわりしたり、食が進まないサヤにどうにか食べさせるべく食事を一緒に摂ったりと、永久凍土の大地に芽生えが生じたように、血が暖かくなっている。
他の人間にはそれほど変わっていないのだが、サヤ様といる時だけは『口が多少悪い青年』になっている。おそらくそっちが皇帝の『素』に近いのだろう。
「もっと肉を食べろ。」
フォークで突き刺した肉を目の前に差し出す。
(ア~ンをしろと?回りには侍女‘Sがいらっしゃるのにそんな羞恥プレイできません。ってか、いなかったらするのか、私!)
自分で突っ込めるようになったところを見ると大分元気になってきたらしいと自己分析をしつつ、
「タンパク質なら卵でとっているよ。」
と回避行動を取る。
「タンパクシツ?なんだそれは?肉を食べなくては力が出ないぞ。元気なときにはこのくらい食べていたぞ。」
ほれと目の前に突き出す。
(危ないって。ティルルって世話焼きババアのキャラクター設定してないはずだけどな?)
「胃が小さくなっているのかもね。」
「では大きくしろ。」
さらに勧めてくる。
「陛下、無理強いはいけません。」
セエルが助け舟を出してくれる。
「食べるものを食べていないから動けないのではないか?回復時期にはより多くの良質な栄養が必要だ。見ているとサヤが食べているものときたら『甘いもの』ばかりではないか?」
「口内炎ができているので口当たりの良いものが欲しいだけです。」
ゼリーとか杏仁豆腐とか茶碗蒸し(ほら甘くない)とか蒸しパンとか・・・・
「だいぶ治ったとオンクは言っていた。肉類をとったほうが良いとも言っていたぞ。」
船が沈没しました。事故の原因は伏兵です。
「食べますから、置いてください。」
「そう言って残すつもりだな。」
ティルルの目がすわっている。
「いただきます。」
ティルル、肉大きすぎ、息が詰まって・・・・
「サヤ様!お水、飲んでください!」
ティルル猛プッシュです。
ライバルはシロですね
今のところは




