五大国会議(G5首脳会議) 三日目
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昨日の昼食会でとりあえず沙耶の出番は夜の晩餐会までない・・・わけがなかった。
あれ?昨日と同じ・・・
小型のキマイラは人間の世界にも出没する。それは文字通り血のにじむ研究の成果で、気脈というものに乗って奈落から来ているということがわかった。
キマイラが湧き出るするのではないと安心は出来たが、具体的には被害が大きいところの周辺にはキマイラが出る《あな》があると判断して警備を厳重にすることのみしかできない。これはどの国も同じはずだ。だが、エステリオ王国は違う。出現しないのだ。昨日の昼食会で国王にそのワケを聞いてみた。
すると『シンの能力です。』という返事だけが帰ってきた。
そこで聞き出せという指令が下ったのだ。
「あまり磨かなくて良い。ドレスではなく騎士服で行ってこい。」
ティルルはそう言って会議へと出かけていった。
「心配なのですね。」
「何を?」
レシュが髪をすきながら言うのに問い返す。
「サヤ様が。」
「ちゃんと聞き出してみせるって。」
「そうではなくて、サヤ様と『冷徹なる宣告者』とお二人にすることがです。」
(そう言えば『冷徹なる宣告者』っていう異名を持っていったっけ。能力と異名がそぐわないなぁ。)
「二人きりになんかならないよ。ギイルとウルドイアも一緒にいくのだから。」
「サヤ様。一度聞いてみたいと思っていたのですが、皇帝陛下とキスなさっていましたよね。」
レシュがズイッという感じで聞いてくる。
「いいいい一回ね。」
前に出られた分後ろに下がる。
「皇帝陛下のことをどう思っておられます?」
「どうって・・・好きだよ?かっこいいし、皇帝として頑張っている姿を見ると手助けしてあげたいと思う。でもあまり役に立っていないみたいで、ティルルの方はがっかりしているかもね。」
(あれからキスもしていないし)
「がっかり?」
「最近あまり魔法の練習をしなくていいって言うし、帝国内の巡視にもあまり行かせたくないみたいだし。昔ほど頼ってくれなくなった?」
レシュとセリーンは顔を見合わせる。
(これは皇帝陛下にガツンと言わなくては!)
(そうね。魔法の練習をさせないのは危険な目に合わせたくないための気持ちがあるからだし、巡視は傍から離れるのを嫌がっているだけだとわかるのに、裏目に出てるわね。)
(陛下も悪いのよ。あの口の利き方だと、惚れていますとは受け取ってもらえない。)
(大概サヤ様も恋愛力は低いと思うわよ。)
(ルススにでも相談する?)
(何故か嫌だけど相談してみる?)
ティルルとしては元老院の反対がなければもうすでに寝所を一緒にしても良いとまで思っていた。
下手をすると、反対があってもだ。
だから、『良い雰囲気』にしてしまうと歯止めが効かなくなりそうで、もともと気持ちを素直に表す方ではないのだが、ことさら突っぱねた言い方をしてしまう。
それが沙耶には、壁を作られているようで『あの時のキスはなんだったの』状態になりつつある。
「今日はまた凛々しいね。」
シンは両手を広げて歓待してくれる。
「昨日に引き続いて、お時間を取らせて申し訳ありません。」
「そんな他人行儀な言い方しなくて良いよ?」
「お体は大丈夫ですか?」
「サヤが居てくれるからかなあ。調子は良いね。」
「私が居るからではなくて、気が張っているからでしょう。後でがっくりきてしまいますから、お話を伺ったら早々に退散いたします。」
「本当にサヤが居てくれるからだよ。」
ルビーの瞳が揺れる。
(イロッポイ・・・)
「気をつかっていただいてありがとうございます。」
それとなくそらすと、勧められたソファーに腰を下ろす。
シンは前に座るかと思いきや、
「脇にいいかい?こちらのほうが楽な姿勢が取れるから。」
「では私があちらに。」
腰を浮かせると手を引かれる。
「せっかく座ったのだから構わないよ。それでキマイラのことについて聞きたいということだよね。」
仕方がないので腰を落ち着ける。
至近距離の超絶微男子は心臓に悪い。
傍から見ると銀と黒の対の美神に見えるのだろうが、いかんせん沙耶は自分の顔がそこまで破壊力があると思わない。
「領土内にキマイラが沸かない理由をお聞かせ願えますか?」
「キマイラはあくまで生物だ。ゲームみたいにポップしないよ。」
う~んこういう会話は久しぶりかも。外見が突拍子がないので実感がわかなかったが、同じ世界から来ているのだと思う。
「気脈を探知できるのですか?」
「私があげた『種子』を持ってきていないでしょう?」
この人はいつも話が飛ぶ。
「宿舎に置いてきています。」
「何も見えないし、何も聞こえない。」
しかめっ面で言う。ここまで整った顔だとしかめても絵になる。
サボテンはテントから離れたところで光合成中だ。
「キマイラを捕まえて『種子』を付けて離す。キマイラは餌を持って奈落に帰る。その経路を見ることができる。こちらの入口が判明すればそこに楔を打てば良い。」
「戦神子の能力なので、他国には真似できないということですね。」
「『ラーヴェラルの白き守護獣』はサヤの言うことを聞くの?」
三日目ともなるとさすがに判る。この戦神子は話題をそらしているように見えて、実のところ関連した話をしているのだ。
「言うことは聞かないですね。猫ですから。もともとは犬みたいな性格の猫なので、こちらの言わんとしていることはわかってくれていると思います。」
「じゃあ、手伝ってもらえそうだな。」
「手伝う?」
「そう、スベルト島と帝都を短時間で行き来しているという噂は本当?」
「本当です。」
「では、シロ猫君はキマイラの通る『気脈』を使って移動しているね。」
「キマイラの通る道ですか?」
「シロ猫君は、噂の通りに馬ぐらいに大きい?」
「はい、こちらに来た時は普通の猫でしたけど、だんだん大きくなってすぐに虎ぐらいになりました。」
虎に間違えられたことは数知れない。間違えて攻撃しないように、布告してもらったほどだ。
シンは少し考える様子になった。
「間違いないね。帝都周辺の気脈の穴から出てくるキマイラを捕食していたのだろうね。それで異世界を渡って付いた能力でキマイラの能力やら力を取り込んだ。」
「シロはキマイラ化しているということですか?」
「そう、サヤは本当に理解が早いね。」
沙耶はそれどころではない。
「シロは大丈夫なのでしょうか?」
「そんな心配そうな顔をしないで、って私が言ったことが原因か。今まで問題なく来ているのだからこれからも大丈夫と言っていいかも知れない。」
「・・・・」
「サヤ?」
「シロに何かあったら、どうしよう。」
一緒にこの世界に落ちてきた“家族”だ。あの白いふわふわな毛並みを撫でて、のんびりと昼寝をしている姿を見ていると、本当に癒される。その存在を失ってしまったら、どうなってしまうのだろう。そう考えるだけで、今も声や手が震えてきてしまいそうだ。
「シロがサヤの知らないところでどんなことをしているのかを知ればその不安も少しはなくなるかもしれないね。手伝ってくれるかな。」
G5首脳会議も終盤。
あとは教皇主催の晩餐会を残すのみ。




