曲者揃い
お読みいただきありがとうございます。
見覚えのある場所に通された。
国教会の三つの尖塔の中庭にある東屋だ。ジョニー君に魔法のことを教えてもらった場所。
そこに円形のテーブルが置かれお茶やお菓子が並べられている。
「お酒がよろしい方はそちらをどうぞ。五大国会議と違いこちらは気楽にやりましょう。」
超越美形が話す。声も澄んだテノールだ。
(非の打ち所がありません)
「お酒か!いいな!ビールある?ない?知らないの?そっか~残念だな~じゃあさワインかシャンパンある?シャンパン!ドンペリ!なっつかしいなあ~ない?ワイン?じゃあ、ロゼだな。彼女も飲む?」
酒盃を持ってくる助祭にせわしなく聞くマッシュールの神子。
沙耶にその神子が勧める。
「いえ、私はお茶にします。」
テーブルの上のスイーツが私を誘惑しているのに、お酒を飲んでいる場合ではない!
「私はお付き合いしますよ。メドー公国の戦神子はいかがです?」
エステリオの神子が柔らかく言う。
「もらいます。」
こちらは対照的に言葉少ない。
「ジョニー君、一緒に座ろう?」
沙耶はジョニーを誘う。
「う、はい。」
「背、伸びたね?」
「そうですか?まだ小さくて、お母様がもっと大きくなれっておっしゃります。」
「じゃ、俺は彼女の横ね。」
これはマッシュールの神子。この人はもう放っておこう。
席に着くとお茶やお酒が配られて各々が好みのものを取る。
「先程は名前だけでしたので、詳しい自己紹介を。まず私から致しましょう。私はメドー公国とエリドゥ帝国とに挟まれているエスリテア王国の戦神子です。『シン』と呼んでくださって構いません。出身はシンガポールです。マリンスポーツの最中にこちらに召喚されました。」
「あんた、シンさん、元から赤い目なの?」
マッシュールの戦神子は物怖じしないらしくすぐに突っ込んだ話をする。
「こちらに来て間もない戦神子には何もかもわからないことだらけですよね。召喚されると何かしら体が変化します。この目と銀髪はこちらに来てからです。」
「そっか~俺はさぁ」
「では、マッシュール王国の戦神子お話ください。」
シンさん、あなたはもしかして聖人ですか?よくこめかみがピクピクしなくて済みますね。ティルルだったら蹴飛ばしているところですよ?
「あ、ああそうだな。俺は保坂 賢治。日本人だ。本当だったら40過ぎのはずなんだけど、昔のモテまくってた時に戻っている、これがそれってわけだよね。元ホストでさあ、結構もててたわけさ、この頃。金貯めてホストクラブを作ったけどうまく行かなくて借金が増えちゃってさ、やばいとこから十一で借りてたもんで、焦げ付いてさ、ちょっと・・じゃないか、か な り やばかったんでこっちに来てラッキーだなんて思っているわけ。」
(うまくいかなかったわけが、解りすぎる。40でその話し方?ジョニーくんの方がよっぽどしっかりとした話し方だよ。)
「あ、そうそう俺のこともケンジって呼んでよ。彼女はダーリンって呼んでくれてもオッケーだよ。彼女のこと聞きたいなあ。」
テーブルのしたで拳を作る。いや、構うまい。
「では、ラーヴェラルの『ルイーズの女神』。」
「女神って!マジ!」
ぐああ!落ち着け私。
「その異名は恥ずかしいですが、私は皇 沙耶。日本人です。平凡なOLでした。私は年齢も外見もかなり変わってしまって別人のようになりました。」
「サヤって呼んでもいいですか?」
シンが聞いてくる。
「はい。」
俺も俺もという声が聞こえるがスルーする。
「サヤにはナイトがついているでしょう」
「ナイト?」
「一緒にこの世界に召喚され」
「え~彼氏付きで召喚?ありえないでしょ!」
「人ではありませんよ。」
シンの口元から笑みが消えない。これだけでも大人物だ。
「あ、はい。飼い猫が一緒に来ました。すっかり大きくなって今は馬ぐらいの大きさです。」
かえって私のほうが申し訳ない気持ちになる。
「『白き守護獣』でしょ!僕!会ってみたいなあ!」
ジョニー君が食いつく。この子は動物が好きみたいだ。
「何それ?称号?リング名?俺も欲しいなぁ。」
つけてやろう。『チャラ男』『軽薄魔人』『空気読まないホスト』『うざさ世界一』さあどれがいい!
「自分で話せるかい?」
シンがジョニーに聞く。
「はい。僕はジョニー=ケネル。今はエリドゥ帝国の戦神子で皇太子です。」
「おっほ、未来の天皇か?」
「テンノウ?」
「違います。それは日本でのこと、エリドゥは帝国なので皇帝です。」
堪らず沙耶が訂正する。日本人がこうだと思われるのは釈然としない。
「なある、皇帝ね。すごいじゃん」
「ごめんね、続けていいよ。」
「えっと・・・?」
「アメリカ人だったよね?」
「あ、そうです。庭で遊んでいる最中に気がついたらこっちに来てました。」
「あのおばさん、あれ以上太るとぽっくり逝っちまうぜ?そうしたら皇帝か~。ジョニー仲良くしようぜ!」
「最後は俺だな。俺はガストン=マクベイン。イギリス人だ。仕事中にこちらに来た。」
「お仕事は?」
「MI6だ。」
「えむあいしっくす?会社の名前か?」
「そのようなものだ。」
あ、面倒だから流したね。
「英国情報部ですね。メドー公国は、強そうな戦神子を召喚しましたね。」
すかさずシンがフォロー。
「イギリス?」
「007の世界ですよ。」
「おおおおおおおスパイきたー!」
「スパイ!」
ケンジとジョニーが食いつく。男の子ってやつは。
「シングルナンバーは殺しのライセンスを持っているって聞いたことあんだけど、あんた持ってる?」
一般常識も知らんような奴が何故そんなことを知っているんだ!内心突っ込むことに大分疲れてきた。
「そんな派手な世界じゃない。」
「さてケンジとガストン?」
マクベインは頷く。
「は召喚されてまだ間がありませんが、戦神子のことをどこまで知っていますか?」
「『敵』から国を守るために召喚された勇者だってよ。」
「この世界は戦神子の存在を前提にして成り立っているといったことだな。」
「そうです。この世界は我々なしでは滅びてしまうのです。そのために我々は変質し異能を獲得します。二人は既に能力を得ていますか?」
「さっぱり解んねえわ。」
お手上げ状態のケンジ。対してガストンは
「多分『銃』だ。」
「メドー公国は大変不安定な政情にあります。そこに置いて戦神子の能力がいち早く発現したのは、喜ばしいことでしょう。」
「あんたたちはどんな能力なの?」
ケンジが聞く。物怖じせず知ったかぶりをしないですぐ聞くところはいいと思う。今のところ取り柄をしいてあげるならば。
「私は『種子』の能力ですね。これです。」
そう言うと手のひらを皆に向ける。
手のひらから『種子』が出てくる。
「この『種子』は楔の力を増幅します。これによってエステリオ王国はキマイラの侵入を阻止する力が強いのです。」
あれ?
「私は召喚師と聞いたのですが?」
「そう言われていますね。でも『種子』の方が正確です。種子から発芽してくるものがいろいろありますので、それで説明するのが面倒なのでそのように言っているだけです。」
「勝手に思い込んですみません。」
「いいえ、気にしなくていいですよ」
にっこりとされると天上の者のような神々しさだ。小うるさいケンジも思わず男なのに見とれている。
自分でそれに気がついて慌てて
「そっちのガ・・ジョニーは?」
「ぼ、僕は『人形使い』。」
「?」
「ゴーレムと言って土などから生み出した人形を自由に使役できるのです。やって見せてあげれるかい?」
「いいよ。」
そう言うとジョニーは昔沙耶に見せたのと同じように、小さいゴーレムを作る。
「すごいな、ボウズ。」
「でも、出来がやっぱり気に入らないや。」
そう言うと手で潰す。
「サヤは?」
「私は大したことができなくて、シロ『白き守護獣』がいて助かっているくらいで。」
「サヤおねえちゃん、虹を作ってくれたよね。」
「ああ、そうだね。」
そう言うと虹を作る。
「花火も上げれるようになったんだよ。」
「花火!見たいなあ、今は昼間だしなあ。」
「夜でも今は葬儀の最中だから上げれないよ。」
「残念。」
ケンジが強烈なのでガストンが埋もれています。




