選定会議エレクト
お読みいただきありがとうございます。
すみません!!!
エステリオとコステリオ間違えました
なんで自分はこんなに紛らわしいネーミングをしたんだ!!!
教皇の死去はマッシュール王国、メドー公国の戦神子の相次ぐ死よりも早かったが、発表されたのは後になった。
発表が後手に回ったのは、国教会の中での綱引きがあったからだ。
実際に教皇の選定会議エレクトに出席できるのは、“エ”と“ロ”の称号を持つ枢機卿のみだ。しかし司教の趨勢は影響する。次期教皇になれるのは“エ”の称号を持つもののみ。
名を挙げられたものは二人。
ナル=ディーノ=エ=アシュタ
マカナン=ディーノ=エ=マクリール
この二人のマエール国教会でのスタンスが違う。
マクリール枢機卿は沙耶を呼んで、『魔法』についてのレクチャーの場をセッティングした人物である。若くして枢機卿の地位につき齢を重ねて、教皇選定会議エレクトで数度候補に挙がったこともあるほどの実力者である。本人としては特になりたいという野心を持っているわけでもないので、直截な口の利き方が煙たがれて教皇の地位につけずにいるが、彼のことを無視できるものなどいないほどの実力者である。
奈落に対抗するためには、五大国の均衡を保ち戦神子の力を対キマイラに向けなければならない、とする均衡派を代表する。
アシュタ枢機卿は、マエール国教会は世界の中心であり、五大国は聖都マエールを守護するための国であるとする国教会至上主義を取る者たちの、旗手になっている。
この二つの派は、戦神子の扱いも違っている。至上主義派は、戦神子は国教会の『持ち物』であって、各国に『貸出』しているといった考え方だ。従って、契約の儀を所属する国の元首が行うことについて、常日頃異論を唱えている。メドー公国とマッシュール王国の戦神子の不在は、彼らにとって二つの国に圧力をかける好機であった。
マクリール枢機卿が、教皇治癒のために集まってきている大司教と随行の司教らを支部に帰そうとするのに対し、戦神子の相次ぐ死と教皇の死を報じることは民心に不安を与えるという建前で、時期をずらす事を提案したのだ。
何度となく選定会議エレクトに教皇候補として名の挙がっているマクリール枢機卿に対し、アシュタ枢機卿はまだあまり司教クラスにまで名が通っていない。司教は投票権を持っていないとしても、首をかしげられては不利には違いない。選定会議エレクトまで時間稼ぎの意味も持っていた。
加えてメドー公国に、ある書簡を秘密裏に送った。
それに対する密書がメドー公国から来たのは、教皇の死後3ヶ月後。徐々に教皇の死去が噂になり始め、選定会議エレクトを開かない方が、民心の不安を煽るようになり、引き伸ばしももはやこれまでというタイミングであった。
マエール国教会の三つの尖塔のうちの一つ、教皇の間の真下に選定会議エレクトを開く場所がある。二階層をぶち抜いた広間には、窓がひとつとして付いておらず、出入り口は二つだけ。一人は出席する枢機卿が入る入口、そしてもう一つは新しい教皇が自らの首座へと付くための通路につながる。実質の出入りはひとつだけだ。その入口は分厚い木の扉と鉄格子で閉ざされ、尚且武装した神殿騎士兵によって警備されているさまは枢機卿がまるで罪人かのような環境下で選定会議エレクトは行われる。
選定会議エレクトに出席できる資格のあるものは、16名。
記録員として数名の助祭が入る。
その密室で、教皇が選出されるまで延々と閉じ込められているわけである。
さて、ここでこの密室で行われた一部始終を描写することはできない。諸氏も結果のみを知りたいと思うだろう。
新教皇になった者は、教皇のみが通行を許される通路を使い、首座への道を歩む。
前教皇の葬儀は新教皇の手によって行われ、終了した時点で白の法衣をまとい、“ア”の称号を名乗ることが許される。それまでは、最も地味な法衣“灰色”の法衣を纏う。
ゆっくりと今まで来ていた“朱”の法衣を脱ぎ、“灰色”法衣に手を通す。
どちらかといえば浅黒い顔に深いシワを刻んだ顔は、興奮を抑えかねているようだ。
「寸法はいかがでしょうか?聖下。」
介添え役がそっと聞いてくる。
聖下。
その言葉にぶるりと身が震えた。
「も、」少し高めの声を修正する。
「問題はない。」
扉が細めに静かに開けられて向こう側から声がする。
「聖下、皆広間にて打ち揃いましてございます。ご出座いただけますでしょうか?」
「う、うむ。わかった。」
「ナル=ディーノ=アシュタ教皇様の御成りにございます。」
(“ア”の名乗りまではもうすぐそこだ。)
居並ぶ枢機卿、大司教、司教らが最敬礼を取る。
最前列はプエブロ=シンミャ=エ=コステリオ、コステリオ国王にして枢機卿。
教皇の座を争ったマカナン=シンミャ=エ=マクリール枢機卿。
この二人が居並ぶ枢機卿、大司教を代表するかたちで前にいる。
自分を支持している枢機卿や大司教はその後ろだ。
教皇になるために駆け引きした結果だ。
彼らの顔には多少不満の色が見られるが、後でしばらくの辛抱だと言い聞かせれば良い。
なってしまえば何とでもなるのだ。
自分が教皇になったことで、メドー公国とマッシュール王国は既に国教会の手中に収まったも同然だ。
「聖下。お言葉を賜りますよう。」
「キマイラより人類を守るという尊い使命のもとに、設立されたマエール国教会はいま、相次ぐ戦神子の死去によって、100年に一度という試練に立たされている。私アシュタはここに全霊を賭して国教会といく、コホン 戦神子とのつながりを強固にして、キマイラに対抗していくものである。前教皇の御霊を送った後戦神子の召喚を行うのが通例だが、今回は二国が戦神子不在の折、召還の儀を先に執り行う。そののち五カ国の戦神子をこの地に招き、前教皇の御魂送りに参列させようと思う。戦神子が一堂に会すということは常にないことながら、いま一度戦神子の使命を彼らに知ってもらうためである。」
「聖下のお考えしかと聞き及びました。確かに今いる戦神子も一人は子供。一人はこちらに渡ってこられてから二年足らず。そして新たな戦神子とあらば、我がコステリオの戦神子が彼らの指導を承りましょう。」
エステリオ国王兼枢機卿が、答える。
プエブロ枢機卿は国王を兼任している。その立場から、アシュタらには賛同すまいと思われていた。しかし彼はアシュタ枢機卿に投票したのだ。それにより一気にアシュタが教皇になる方向へとなだれ込んでいったのだ。
「そうか。確かに実力のある『冷徹なる宣告者』ならば、不足のあろうことはない。」
借りは返しておかなければこちらが身動きがとれなくなる。新教皇アシュタは心の中でつぶやく。それにしても、とプエブロのとなりに控えているマクリールを見る。プエブロがこちらに投票したときは確かに驚きを顔に出していたが、今は全く顔に出ていない。古参の枢機卿であり、面倒見の良いところがあって司祭、助祭の人気が高い。すぐに更迭するわけにはいかないが、自分の地位が磐石になった折には、マエールの古文書倉庫の統括でもやっていただこう。
「先達の知恵を多くお持ちのマクリール枢機卿、プエブロ枢機卿、他の枢機卿も我が身を今までよりも一層支えて欲しい。」
「では早速ではありますが、お忙しい聖下に変わりまして、齢を重ねております私が前教皇の御魂送りの差配をお承りしたいと思いますがいかがでしょうか?」
マクリールが半歩進み出て、発言する。
アシュタは少し考える。御魂送りなど事後処理のようなものだ、押し付けても問題はないだろう。支持者に目を向けると、軽く頷き。
「前教皇の覚えもめでたかった枢機卿ならば、お喜びになられるだろう。」
「寛大なお言葉感謝致します。」
マクリール枢機卿は自分の部屋に戻ると、すぐにレイエン司教を呼んだ。
「お召により参上いたしました。」
肩に手を置き、首をコキコキしながら、
「全く疲れた。年には勝てんな。何故、皆ああも教皇になりたがるのか気が知れないわ。」
「ですが、次期教皇には枢機卿が適任と思っている者も多いと聞いております。彼らの気持ちも汲んでください。」
ユールの考えでもあった。
「煩雑なことが増えて仕方がないだけだの。それよりプエブロだな。アシュタ教皇にも困ったものじゃ。エステリオの戦神子ほど危険なものはいないというのに・・・戦神子が取り込まれてしまう危険も気づかないとはな。」
「危険なのですか?」
「あの戦神子の能力なら、他の戦神子を従わせるなど造作もないこと。知っていれば教育係などにできはしないて。ユール、御魂送りの差配を聖下に願い出て許された。準備をするから忙しくなる。」
「枢機卿が自らですか?」
普通は枢機卿になることが決まった大司教が差配することになっている。
「そうじゃ。それで思い出した。本来なら差配する大司教はどのものだったかな?」
「コステリオ大司教でいらっしゃいます。」
「そうか、仕事を横からさらった形になるからの、呼んで断りを入れておくことにするか。それからユール、御魂送りの際に各国の戦神子を一堂に集めることになった。そのことでエステリオ枢機卿に打ち合わせの時間をいただきたいと伺ってきてくれ。」
「かしこまりました。こちらから時間を指定いたしますか?」
「いや、構わない。国元に変えられる前に打ち合わせをしておきたいのでまとまったお時間が欲しいと重ねて言ってくれ。」
「かしこまりました。」
次話 やっと主人公が登場します。
シロの登場はそう少しあとです。
でも出るときはメイン!!!!




