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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
遠雷【閑話】
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異世界からのお土産

お読みいただきありがとうございます。

 王国の厨房の一角で、沙耶は厨房を預かる料理長と向かい合って座っていた。


 アルバイトをしてラールヴェル帝国の料理が、かなりシンプルな味付けになっているのを確認した沙耶は、自分の『自分で自由に使えるお金を稼ごう』計画に、確かな手応えを感じた。

 アルバイト先の店では、沙耶が作った『餃子もどき』『天ぷらもどき』『蒲焼もどき』は概ね好評で、店のオリジナルメニューとして人気になった。

 仕入れ値とか原価とか値段設定もその時に、女将や料理人の話を聞いて、筋書きくらいは描けるようになった。


 そう、沙耶は飲食店を開こうと考えていたのだった。労働力は、養護院にいる人たちをあてにしている。職がなくて食べられずに、保護を受けている人も多いのできっと新しい働き口を作ることにもなる。

 その飲食店のメニューは『カレー』と『ラーメン』

 日本人の国民食と言えるものだ。


 そこで、沙耶と料理長が何故向かい合って座っているかに戻る。

 二人の前には、沙耶が異世界から持ってきたご当地ラーメンのカップ麺がある。すでにフィルムは剥がされお湯が注がれている。

 このカップラーメンを開けることに少なからぬ葛藤が、沙耶を襲ったことは想像が容易だと思う。


「4分経ちました。」

 スマホの画面で時間を測って、蓋をペリリっと剥がす。豚骨醤油のいい香りが放たれる。


「これは、なんと良い香り。豚のベースにしているのでしょうか。」

 流石は料理長、匂いだけで豚骨と見破った。

「しかもお湯を注ぐだけでできるとは・・・神子様の魔法でしょうか?」


「違います。」

 沙耶は取り分けたラーメンを料理長にすすめる。

 料理長は恐る恐るフォークを伸ばす。沙耶もすする。


(久しぶり~胃袋にしみる~)


 やっぱり美味しい(久しぶりなので余計)と思うが、料理長はどうなのだろう。

 唸りながら、食べ進める二人。


(足りない。)


「このスープは絶品です。重層された旨み、いや、麺ものど越しがよく尚且スープとの絡みが良い。一体どこの名人が作られたのでしょう。しかも、お湯を注ぐだけとは!軍の糧食としても優れています。」


「カップ麺を作ることはできないでしょうが、こういったスープと主食が同じカップにあるという料理を作りたいのです。厨房の片隅で構いませんので、貸していただけますか?」


「いいでしょう。料理人たるもの、未知の味の探求を厭うことはできません。是非ともお手伝いをさせていただきたい。」

 料理長は胸を叩いた。


「手伝っていただけるのですか?」

 本職が手伝ってくれるのは、心強い。


「はい。ですが日常の業務の合間になってしまいますが、よろしいでしょうか?」


「はい。お願いします。ラーメンの他にカレーも改良したいのでそちらも助言をお願いします。」


 カレーは香辛料の輸入の道をつけ、やっと少し入ってくるようになった。入ってくる香辛料のほとんどを沙耶が確保することになる。輸入ものだけに、値が張る。その資金は、『生理用品』の委託販売が軌道に乗りつつあるので、その売上を流用した。その貴重な香辛料を使って作ったカレーは、『薬』と称してティルルにも、食べさせたが概ね好評だった。暑い地方の食べ物とはいえ、唐辛子の発熱作用は体を温める。


 カレーとラーメンを別々な店でやるとして、ラーメン店ではサイドメニューに肉まんもどき(肉少なめ)を作る。肉まんもどきはテイクアウトもできるとなおいいだろう。

 カレー屋では、カレーの値段が高めになるので、カレーヌードル(カレーうどんです。)が主力。焼き鳥をサイドメニューに。やはりテイクアウトできるようにしたい。


 本当は甘味店をやってみたかったのだが、自分が食べたいクレープとかソフトクリームなどは、乳製品の乏しいラーヴェラルでは難しかった。


「牛も飼いたいな。これがモノになったら牧場を作ろう。」

 鳥、豚に対して帝国で牛の飼育数が少ないのは、効率によるところにある。鳥ならば50日ほどで出荷ができる。豚は6~7ヶ月ほどだが、一回に10頭近く出産し2年間のあいだに60頭ほど子供を産む。対して牛は一頭から取れる肉の量は多いが、出荷までに2年以上かかる。それで途中で事故で死んでしまえば元も子もない。飼料も牧草だけなら、まとまった土地が、とうもろこしなどの穀物を与えるとしたら、そのとうもろこしを人が食べたほうが多くの人を養えるのだ。乳牛という選択肢がなければ、牛はリスクの多い家畜に入ってしまう。帝国はそのリスクを犯せないほど貧しくなってしまっていたので、ティルルが牧草地を潰してしまった経緯がある。


 夢が突っ走り過ぎて、限度を知らずに手を出した結果オーバーワークでブッ倒れ、ティルルを筆頭に周り中から、ボロクソに言われた沙耶であった。


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