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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
能力発現編
44/112

隷属の呪紋

読んでいただきありがとうございます。

「本当にごめんなさい。」

 ユリルが侍女たちに謝る。


「ユリル様、もう頭をお上げください。」

 お姉さん格のセリーンが言う。


「ユリル様の思うこともわからなくもありませんから。」

「ユリル様は役立たずじゃないですよ。」

 ほかの二人も口々に言う。


「改めて、私と仲良く・・・・あの・・・友達になってくれるかしら。」


「どうしようかな~」

「パソコンで素人メイクをまた見せてくれます?」

「ちょっと、待ったー。それは違うでしょう。」

 ツッコミを入れた私にレシュがふふふっと笑う。

「ということで、もう一度街に繰り出しましょう!」


 連れ立って外に出ようとしているところを、エンデに捕まって、結局みんなで居酒屋に繰り出しました。

 とっても楽しくてお酒を飲みたかったけど、後一歩というところでゼートに取り上げられてしまいました。

 実年齢は27才。こちらの世界で17才は、お酒は飲める歳のはず。

 理由を聞いたら、皇帝陛下ティルルに呑ますなと言われているとの事。

 なんででしょう?


 翌日アーカネとウルドイア、ルルスを除いて皆二日酔いでした。

 沙耶はことごとくブロックされて飲めなかったので、朝からご飯もりもりです。


「出発する前に、ダグルの領主に会います。くれぐれも軽率な行動は謹んで下さい。」


(気が重い。だが、背けないと誓った。)


「わかった。なるべく蹴っ飛ばさないように自重する。」


「くくく。」

 アーカネが楽しそうに笑う。こいつの笑う顔、初めて見たかも。


 予想外です。

 ダグルの領主はイケメンでした。

 嫌な奴=コステリオ大司祭の図式が出来上がっていて、ゴメンナサイクラスだと思っていたので、戸惑った。

 年は60才くらい。面長で切れ長の目、芸術家のようなオシャレ感が漂うタイプ。ルルスが警戒しているということは同じタイプ(おんなたらし)か。


「はじめまして、このダグルを治めているラキート=シンミャ=ラジャックと申します。いやいや、どうかラキートとお呼びください。」


「ラジャック公。こちらは、ラールヴェル帝国の」

「わかっている。動物混じり(ミクスチャー)ごときが口を挟むでない。」

 アーカネの口を封じる。

 はい、やな奴、決定。


「はっ。」


「いやいや戦神子様におかれては、躾をきちんとなされた方がよろしいのではないかとご忠告申し上げる。」


「私についてきている者たちは、十分良くしてくれます。」


「きちんと首輪をつけませんと、不純物が混じっている者共です。いつ暴走するかわかりませんよ。」


「ラジャック公のお気遣い、お気持ちだけいただきます。」

(もう、帰ろう、即帰ろう)


「いやいや本当のことですぞ。つい2、3日前にも一部の奴隷が逃走を図りましてな。」


 顔に出たのだろう。

「いやいや、ご心配召されるな。昨日捕らえております。」


「その人たちはどうなりますか。」


「脱走した罪で、鞭打ち50回ですな。女は打ちませんが・・・商品価値が下がりますからな。いやいや戦神子様も女性でしたな。これは失礼を。・・・神子様にはさぞ言い値がつきそうですな。」


 ゾワッ 

 鳥肌がたった。


 身震いしたのをまた誤解したのか、

「反抗しようにも『隷属の呪紋』がありますから、万が一にも御身に危険が及ぶことはありませんぞ。」


 そのあと、お茶でもとか、観劇(旅芸人が来ているらしい)にでもといろいろ誘われたが、断って早々に帰ってきた。


 コステリオ大司教が最下位から一つ上がりました。


 宿に帰ったら、荷造りが終わっていた。


 宿屋の入口で

「もういちゃうの~」

「あなただけあともう少し。」

 とか

「これ、旅の途中で食べてね。私が焼いたの。」

「これ、私だと思って大切にしてね。」

 と言う甘ったるい声に、


「君のことは忘れないよ。」「ダグルに寄ったときは必ず声をかけるよ。」「君は素敵だった。」


 と返す巻き毛君に、ユリルが明るい声で、

「は~い。邪魔だからね。どいてね。この荷物運んでおいて。」

 としきっていた。ユリルもカミングアウトして、重りが取れたみたいだ。


 私は、ティルルにメールを打った。


 『隷属の呪紋』って何?





「エリドゥからの輸入品の値が上がっています。」

「やはりな。守銭奴(ガランティア)はわかりやすい。」

 ティルルは口の端を軽く上げる。


「皇帝陛下のご賢察通りです。」


「世辞はいい。」


「世辞など、申しません。陛下のご指示通りに、値上げ前の値で少しずつ買い、備蓄してございます。この値上げで苦しいのは、ラールヴェルではなくエリドゥの商人でしょう。」


 ティルルは頷く。

「あとは向こうが値を下げるのを待つだけだ。」


「値崩れを起こすのは時間の問題でしょう。」

 いくら女帝が値を決めようが、実際に売るのは商人だ。他の物をタダでつけて売ればいいことだ。



「マッシュールの緩衝地帯はどうなっている。」


「ビスカス公爵が、ほぼこちらの希望通りに運びそうとの報告が、スローンが受けております。」


「戦闘バカと思っていたが、サヤの言う通り見せかけだったようだな。」

 マッシュールの『金剛のスサノオ』に対して交渉を持ちかけたところうまくいった。


「はい。流石サヤ様です。」


「緩衝地帯のコチラ側の養蚕の事業化を進めろ。」


「はっ。」


「さて、」ティルルは待たせておいた男を呼び入れさせる。

 大きな巨体の持ち主だ。


「マーズ=スローン=ナーズ。御前にまかりこしました。」


 ティルルは紙をナーズに見せる。

「?なんでございましょうか?」


「『モールス信号』というそうだ。スローンスローンの、うさぎ(コエッリオ)うさぎ(コエッリオ)のガイア・ネットワークがあるが両者をつなぐ第三のガイア・ネットワークだ。」


「もしや、これは『ルイーズの女神』のが発案でございましょうか?」

 ティルルは質問を無視する。


 質問をしていいのは、自分が許可した時だけだ。

「こちらの世界に馴染む形に見直し、即刻各地に伝達せよ。そののちこの『モールス信号』の暗号化の通知もする。」


「は、かしこまりました。」


「いつできる?」

 近日中という言葉は求めていない。ティルルは命じるとき、必ず期日を言わせる。その期日に仕上げれば、褒める。

 出来がよければ、報賞も与える。遅くても、早くてもいけない。自らの能力ときちんと相談して仕事ができる、それをティルルは求めている。できなければ、今ティルルに言うべきなのだ。


「伝達まで5日かかります。あとは習熟にかかります。伝達後のやり取りを『モールス信号』というものにすれば、習熟には10日。15日後には暗号化の通知に対応することが可能でありましょう。」

 ティルルは頷く。


 ナーズは用が済んだと見て、深々と礼をして退出しようとした。


「待て。」


「はっ。」


「『ルイーズの女神』とはサヤのことか?」


「サヤ様・・・はい、神子様のことでございます。1年前の国境安定記念パレードの際のお姿が、誠に神々しく幼子が思わず口走った言葉に、皆さてこそと思い、その呼び名が広まってございます。」


「わかった。」

 ナーズは改めて礼をして退出する。


「サヤ様は、臣民に人気があります。」

 リガードが一息つく主のためにお茶を入れる。


 戦神子が持つ異世界の知識は、この世界にとっていつも目新しいものだった。

 しかし、それは戦神子の異世界での生活に根ざしたものだ。

 だがサヤの知識は、本人が『他力本願』というように、本人の知識によるところではない、逆引きができるのが最大の特徴だ。


 例えば、ゴミの処理だ。


 サヤ本人には、バイオマスやコンポストという知識はなかった。

 そこで、サヤにゴミの処理について、調べてもらい上記の知識を得た。

 このような、問題→逆引き→実現可能な方法→実行は数多くあり、すぐに解決・改善できる物が多い。そして生活に密接している。

 つまり、『神子のおかげ』が日常生活の中に歴として存在するのだ。


「人気がでない方がおかしい。」


 そのサヤから、メールが届いた。

 一文だ。


 『隷属の呪紋』って何?


 何が起こったかは、スローンとユリルからのメール(スマホ)で知っている。

 ユリルを除いて動物混じり(ミクスチャー)で構成されている旅団だ。

 聞きにくいのだろう。


(だが、カンジで送ってくるな!)


 読み上げソフトがなければ、答えたくても答えられないではないか!


 それだけ、思いつめているのだろう。

 ならば、包み隠さずに私情を交えず、教えてやろう。




 純血種。人の遺伝子に何も混じっていない人のことを言う。

 固有能力スキルはない。

 何も特化したものもなく、知力も特に優れているわけではない。

 その純血種が、支配者層を独占できるわけ、それが『呪紋』の力だ。

 戦神子と子供を作れるのは純血種のみ。

 そして生まれた子は薄くではあるが、戦神子の能力を継いでいる。

 その力を、対象物に“呪”として刻印することで、対象物に影響を及ぼすことができる。

 沙耶に付けられた『ことはの呪紋』もそのひとつだ。

 契約の儀を済ますと必要なくなるので、いまは消してある。

 ロウソクに『ひかりの呪紋』を施せば、短くならないで灯り続ける明かりとなる。


『隷属の呪紋』


 サヤも検討は付いていると思うが、呪紋を施した者への反抗を許さない、支配者の呪紋だ。

 これで、純血種は能力に勝る動物混じり(ミクスチャー)を支配することに成功した。

 ほぼ全臣民が、『隷属の呪紋』をしている。

 マエール国教会で生まれた赤子に、施すのだ。

 施されることを拒否した子は、国内に住むことはできない。

 キマイラの恐怖がある限り、呪紋を受けざるおえない。

 その国の民は、その国の元首が施した呪紋に相当する。

 王宮で働くものや軍属はさらに、私の呪紋が施される。

 反乱は決して起きない。

 呪紋の重ねがけの効力は、生死の与奪の権限に等しい。


(筆者注  平仮名で送っております。平仮名で全部打つと大変読みづらいので、あえて漢字を入れました。

 これは全部平仮名で書かれていると仮定してお読みください。)



 時間をかけて打ち終えたあと、ティルルは彼らしくもなく、フウとため息をついた。

 サヤはこれを読んでどう思うだろう。身分の格差の少ない異世界から来ているのだ。

 反発や嫌悪があるだろう。

 それに

 ティルルはサヤにまだ話していないことがある。

 このことは、メールでは説明できない。

 自らの口ではなさなければ。


皇帝陛下の仕事っぷり・・・

濃い人ランキング1位が登場しました。

こういう人を書くのって楽しい(*´ω`*)

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