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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
異世界召喚編
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21/112

胸襟と拾った親子

 戦神子の一行の構成は、まず戦神子、三人の侍女。アビスの3人、第6騎士団の10人という構成だ。

 騎士団は隊長を除いて月単位で入れ替えるということになった。

 向かうのは帝都から一番離れたアッシュール王国の国境線と奈落マレフィスクとの境だ。北西の端だ。

 そこに着くまでには一ヶ月はかかる。

 そこを起点に奈落マレフィスクとの境界を旅をする。上位種のキマイラが出る危険性はまずないが、逆に小物のキマイラは出る。気の抜けない旅だ。


 馬車が今度は4台だ。2台が糧食用。

 そして2台が私と侍女たちが乗るための馬車だ。

 今回は長旅ということでセエルさんが3人とも連れて行くようにねじ込んだのだ。

 申し訳ないが、私も話し相手は多い方が楽しい。

 今回はスマホとタブレット(通信機能有り、音声通話機能なし)を持っていくことにした。

 気がついたことをすぐググるためだ。

 パソコンは城に置いて。ユリルさんに充電を頼んでおいた。

 出先まで使えたら、この帝国内はほぼ圏内(谷とかは無理だろうけど)ということになる。

 おいてきたパソコンでユリルさんとは定時連絡をすることにした。

 私がナッソー行きで留守にしていたあいだもユリルさんはずっとローマ字を勉強していて(漢字はさすがに難しいと)電報調なら互いに通信できるようになっていた。


「それが、異世界から持ってきた機械パソコンなるものですか?」

 アーカネが首を伸ばして覗き込んでくる。

 中食の休憩時間だ。

「まあ、似たようなものです。パソコンは城に置いてあります。

 ユリルさんが打てるようになっているのでこれから通信してみようと思っているのです。」

「それは、面白そうだ。見せていただいても?」

「どうぞ。」



 インターネット アクセスについてはまだ納得しづらい。

 アクセスはできるが、こちらからは発信できないのだ。

 親が気になって、メールをしようとしたのでわかった。

 会社のホームページに入ってお客様の声にメッセージを送ろうとしたけどはねられた。

 電子メールは送受信できない。

 仕組みなど全然わからないので、説明のしようがない。


 電話と住所を言って料理を注文する“デリバリー”

 出向いて行って、バイキングの違いかしら

 ??

 とにかく、ググる事とこの世界にある機械どうしの通信しかできない。


「いまは ごはんです。そちらは どうですか」

 まあこんなものでしょう。


「その記号みたいなものは、異世界の文字ですか?」


「そうです。」


「なんと?」


「手始めに何をしているかを聞いています。」

 電子音が返ってきた。


 ユリルさん早いです。

 受信画面を開く。



 わたし たべた しろ いない



 ・・・・・


「なんと?」


「ご飯を食べたか?と聞きました。返事はもうすんだという返事ですね。

 シロはお出かけしているそうです。」


「シロ?来ていますよ。急遽馬車を追加しました。」


「す、すみません!」


「気にすることではありません。シロは立派な戦力です。」


 そうですね。私は戦力外です。

 でも、シロは私と来たから、私の功績よね。

 能力は分散され、戦闘力はシロにいった。

 そういうことだ。

 私は、ググって他の人の知識を借りてこの世界で生きていけばいいんだから。


「おや?落ち込むかと思いましたが?」


「居直りました。私、昔から追い詰められると居直るたちなんです。

 どうこう言ってもなるようにしかなりません。

 出来ることをするだけ、単純なことにしました。」


「それが一番です。それならば、提案です。部隊で移動しているときは同僚として扱ってもよろしいですか。」


 願ってもいないことだ。

「ずっとでも構いません。」


「アビスのものも?」


「騎士団の人たちも、クレイ、セリーン、レシュも」

 沙耶は頷く。


 この世界の人になる。

 拙いけれど、そう決めた。

 神子としての役目はこなすが、奉られるのは嫌だ。


「では我らの名も呼び捨てでかまわない。命を預け、預けられるのだから他人行儀はやめにしよう。」




 少し前の話だ。


 皇帝から役目の引き継ぎを言い渡されたあと、アーカネは神子の人となりをリガードに聞いた。


「神子様は、まじめな方だ。戦神子としてこちらの期待に答えようと常に努力されておられる。」

 リガードはアーカネを自分の部屋に呼んで、話しだした。


「前の世界の姿でも20歳位(日本人は総じて若く見られがちです)なのに、なかなかにしっかりとした方だ。

 それだけに今回のことを重く受け止めておられる。」


「神子さんはこっちに連れてこられてから、錯乱状態にならなかったって?」


「さみしそうにしておられることはあったが、取り乱されるということはなかったな。」


「あのな、40過ぎて独身の忠義一筋のやつには荷が重かったかもしれないが、それは『無理』をしているってものじゃないのか?」


「そうなのか?・・・かもしれんが、新しいことに対する好奇心もお有りになったので、紛れていたのでは?」

 リガードは自身なさげに答える。

 言われなくても、彼女無し歴=年の自分は男の心理は読めても女は無理とわかっている。


「20やそこいらの、ど庶民がノブリスオブリージュをすぐさま実践できると思っているのか?」


「相談や弱音なら受け止めるつもりでいたが、神子様は気安そうに見えて、最期に拒絶するようなところがあった。」


「・・・なるほどな。皇帝と似た者同士か。だから、俺らにしたんだな。」


「な、私では役不足だと!」


「あたりの柔らかいリガード様なら神子の警戒心を解くにはいいが、もうその段階じゃないしな。さすがに皇帝陛下だ。よく目が届く。」


「どういうことだ」

 皇帝は戦神子を憎んでおられるのではなかったか。

 戦神子のために、自分を外してこの男をつけたというのか。

 この男は動物まじり(ミクスチャー)でありながら、アビスの実質的長官だ。

 陛下もこの癖の強い男を信頼なされているようだ。


「神子様と奉ることで、自分はこの世界から一線を隔していると思わせたということだ。」


「しかし、気安くなど。」


「だからアビスにお鉢が回ってきた。・・・俺のやり方でやっていいってことだな。」








 馬車が止まる。しばらくしても動く気配がない。

「動きませんね。」

 一緒に乗っているクレイがいう。


「シロが何かやらかしたのかしら?」


「聞いてみます?」


「お願い。」

 クレイは地獄耳のクレイ。

 セエルさんの足音を聞いて警告してくれるので、気を抜いてくつろげる。

 そういえば、“ザ・特訓”はまたお預けだけどこの反動がこわい。


 耳の後ろに手を集音マイクのようにして集中していることしばし、

「シロではないようです。行き倒れの親子らしき二人連れと言っています。」


 昼を過ぎたばかりで、次の街まではまだあるはずだ。

「降りてみます。」


「心配することはありません。ただの行き倒れです。」

 アーカネがこちらに気がついて言う。


 ただの・・・って

「行き倒れって死んでいるわけではないのでしょう?」


「まあ、このままだと確実に死んでしまいますな。」


 倒れている二人をシロが匂いを嗅いでいる。

 犬は人の吐く息で、ガンがあるかどうかもかぎわけられるらしい。

 老人ホームで余命僅かな人を教えるといったことも聞く。

 シロもわかるのだろうか。


 沙耶は近づいてみる。

 母親と子供らしい。

 しっかりと手を繋いでいる。

 見るからに痩せて骨に皮が張り付いているかのようだ。

 この国は、貧しい。

 上から見るわけではないが、この光景が特別なものではないと聞いている。


「みず・・・」


「水ですね。」


「助けるのですか?」

 アーカネも後ろについてきたらしい。


「助けることに異論でも?」


 ウェイ隊長が部下に水をもってこさせる。


「いいえ。」


「あと布もください。」

 布はサリーンが持ってきた。


 子供の方を抱きかかえる。

 朽木のように軽い。

 ひび割れた唇に水に浸して含ませた布をあてがう。

 はじめは反応がなかったが、じきに沙耶の手を取り布にしゃぶりつき始める。


 ウェイ体調の部下がそのやり方を真似て母親にみずをやる。


「サヤ様?どうしてそのやり方を?」

 セリーンが聞く。


「何も入っていないところにいきなりはまずそうだと思って。もう器ごと上げてもいいかな。」


「この親子をどうするつもりですか?」

 アーカネがサヤに聞く。


「馬車にのせて、街まで運びます。」


「この親子は無一文でしょう。街まで連れて行っても街で野垂れ死にするだけです。」


「では、見捨てていけというのですか?」

 アーカネはいつもこちらを怒らそうとする。それで本音を見ようとするのはティルルと同じやり方だ。


「この親子を救ったところで、何も代わりはしません。」


「それがこの人たちを、救わない理由にはなりません。この世界は弱肉強食という話を聞きました。それは弱いものが食われるという意味ではありません。この世界は生きようとしない人を奈落マレフィスクが喰らう世界です。偉そうなことを言ってますが、元いた世界で私は何もしていませんでした。私の周りには、大抵のことなら自分で出来ている人が多かったからです。あちらの世界にもあったであろう現実は私にはこちらの世界のことのようでした。ここは現実です。いま目の前に倒れている人を私たちは差し伸べることのできる手を持っているのではないのですか?」


 アーカネは肩をすくめる。

「そうやら、シロも同じ考えのようだ。」


 シロはスタスタと歩き始また。

 今まで占領していた無蓋馬車を明け渡したつもりなのか。


 とにかく空いた馬車に二人を乗せる。


 付き添って乗ろうとしたら、レシュに任せてくださいと言われて下の馬車に戻った。


「見捨てろとは申しませんが、アーカネ様の言い分も最もなところがございますよ?」

 乗り込むとクレイが話しかけてきた。


「最もなことって?」


「街に行って放り出すだけなら一緒ということです。」


「でも、旅に連れて行くわけにはいかないでしょう?」


「そのほうがいいかもしれません。私の考えに間違いがなければ、あの親子は貴重種です。アーカネ様もきっと気づいたのでしょう」


「貴重種?」


「絶滅に瀕している種族ということです。」


「・・・同族が少ないということ?」


「シロが興味を持ったのは嗅いだことのない匂いだからだと思います。」


「貴重種というものだとなんで一緒に連れて行ったほうがいいの?」


「サヤ様の力になるかもしれないじゃないですか。」


「ちから?」


「種族固有能力です。」



 クレイ・・・わからないです。

 助けて ○○えもんじゃなかった。ユリル先生!

 時間外だけどメールを送ってみる。


 きちょうしゅのおやこをほごした。どうしたらいいか。しゅぞくこゆう のうりょくとはなに


 難しい言い回しは読めないのでかなりアバウトだがわかってくれるかな。


 15分ほどたって返信がきた。


 なんのしゅぞくか わかるか

 まちにおいてもしなすだけだ

 つれていけ

 しゅぞくこゆうのうりょくとは

 いいしょにいっているあーかねにきけ



 ?


 ユリルさんじゃない?


 文章になっている。


 へんしんしたのはゆりるさんではないですね。だれ?


 てぃるる。ゆりるからつうしんができることをしって こうていがよこした

 ことばはゆりるよりわかる


 はい。よくわかります。

 ユリルさんの悔しそうな顔が浮かぶ。

 連れて行くのに、親分(皇帝陛下)の許可がいるかしら。

 いっか~許可がなくてももうほっとけないし。

 のりかかった船 だ


 ききたいことがあったら まためーるする


 わかった


 じゅうでんだけは わすれずに


 とうぜんだ


 可愛くないなあ

 でも、ティルルと話が出来てちょっと嬉しい。

次回 シロの活躍です。

この子は使える!

モデルはうちの子です。

名前はハクです。

今日は途中で消されました(>_<)

犬みたいな猫です。

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