配達員の信用は欲しい:解呪組
ハクトさんは悪い人じゃない。むしろいい人だ。
誰だって嫌なことをされたらその人を警戒する。そのイメージが根強ければ強いほどその周囲の人、大きい括りだと種族まで嫌うことだって往々にしてある。
「すまない。オレが人間を嫌うのは、この固定観念があるからなんだ。お前は、何も悪くない」
ハクトさんは過去のイメージと葛藤している。だからこそ、今苦虫を嚙み潰したような苦しそうな顔をしている。
「私も同じ人間だからって、その種族ってだけで手離しで受け入れ得られるわけじゃないです。むしろよく知らないなら疑って当然です。ハクトさん、話してくれてありがとうございます」
「いや、オレは…………」
ハクトさんは少し驚いた表情で、言葉に詰まってしまった。
うん、これはもう単刀直入に聞いてしまおう。決して私がこの空気に耐えられないからじゃないよ?
「ハクトさん、ぶっちゃけ私の事どう思ってます?」
「はぁ!?どうって………?」
「一応これから運ばれる身なので、信頼まではいかなくても変な所で落とされないだけの心の保証は欲しいんです」
「荷物みたいに言うね~」
「実際、私なんて荷物みたいなもんですよ。いや、楔梛様抱えてるから実質キャリーバック?」
「ハッハッハッ!こんな有能で可愛いキャリーバックがあったら相当価値があるだろうな!」
「うんうん、王室御用達だしね!」
「可愛いは否定しますが、結界無視できるのでお得でしょう?」
「めっちゃお得!めっちゃ有能!」
「今ならお買い得価格でご提供すんぜ!ただし、クロのお眼鏡にかなった方だけの発送とさせていただきます!」
「何言ってんだお前ら」
私的にはこんな生きたキャリーバックはいらんとですよ。てか、ハイタカさんとカルヴァロさんノリいいな。ハイタカさんに至っては完全に通販番組のノリだ。この世界でもあるのかな?…………意外とありそう。
3人でふざけていると、ハクトさんが言いにくそうに話し始めた。
「あーまあ、そうだな。お前は人間だが王を救った張本人だからほかの人間より、まあその、なんだ、嫌いではない。あと、途中で落としたりはしないから安心しろ」
「ありがとうございます」
それだけ聞けたら満足です。途中で落とされないっていう言質もとったしね!
「ハクトがデレた」
「でも嫌いじゃないって、素直じゃないね~」
「好きでも嫌いでもないだけだ」
「それで十分ですよ」
そう、それで十分だ。だってまだ会ったばっかなんだもん。
「いいのかよ。オレは人間嫌いだぞ?」
「はい!」
「清清しいほどいい返事だな」
「人間っていう生まれの問題はどうにもできませんから、それ以外で嫌われてないならそれでいいんです」
「………………変な奴だな」
「ここにきてからよく言われます」
ハクトさんが呆れたように笑った。さっきまでの刺々しさはもうなくなっていた。
「戻った」
「おかえり~」
「おかえりなさい」
「ポイサロとの話は終わったんですか?」
「ああ。それより、なんだか空気が柔らかいな?」
「そう?多分、ハクトがちょっとだけ素直になったからかな~」
「カルヴァロ!」
ハクトが大声を出していたが怒りというより恥ずかしさからにみえた。それに、優維がその様子を見て笑っている。どうやらハクトと打ち解けることができたらしい。
「優維」
「何ですか?」
「よかったな」
「?はい!」
優維は一瞬何が?という顔をしたが、すぐに理解したように元気よく返事をしてくれた。
「乗るか?」
「え!?嬉しいんですけど、さっきまでずっと乗ってましたし逆に申し訳ないというか」
「む………」
何故だか無性に優維を肩車したくなったが、断られてしまってはしょうがない。
「あ~乗ります!むしろ乗らせてください!」
「無理してないか?」
「楔梛様の鬣はもふもふで最高なので、むしろご褒美です!」
「そ、そうか」
「じゃあ、お耳が垂れてる楔梛様に肩車してもらおうね~」
カロが優維を持ち上げて俺の肩に乗せてきた。優維は下町でしていたように、俺の毛を軽く握って落ちないようにしていた。
「もふ~」
「アハハ、本当に気持ちよさそうだね~」
「恐れを知らんのか」
「俺が許している」
「はっはい」
俺も優維が近くに感じられて心地いい。たまにくすぐったいが、それも嫌じゃない。




