名案④
唇が触れた瞬間、ふわりといつもの包み込むような感覚が俺を襲う。
(そうか、これ)
癒しの光が出るからだとばかり思っていたが、キスってみんなこんななのか。
(というか……柔かすぎだろ)
意識した途端、頭が真っ白になる。目を閉じているせいか、唇から伝わる感触だけが、やけにはっきりとわかった。
カイルとする時とは何もかも違う。温かくて、ふわふわしてて。ほんの軽く触れているだけなのに、むずむずと体の奥がくすぐったくなった。
(……ヤバい)
あいつとは一秒でも早く離れたくてしょうがないのに、ユナとはもっとくっつきたくてしょうがない。ユナの肩に置いた手を、おそるおそる背中に回した。
(ユナも嫌がってないよな?)
このままもう少し。って、ちょっと待て! これ、もしかしてこのままもっと深いキスにいけたりとか……するのか!?
そう思いついた途端、ぎゅんっと、ものすごいドキドキが襲ってきた。
(いやいや、まだ早い? でも! てかどうやってそれに持ち込むんだ!?)
緊張が限界に達しそうになりながら、そろりと唇をほんのわずかに開いた瞬間。
「んんんっ!」
いきなり肩をばしばしと叩かれ、慌てて唇を離す。
(やっぱまだ早かったか!?)
だが、目の前のユナの様子が何やらおかしい。怒ってるわけでもない。恥ずかしがってるようにも見えない。なのに、何かを必死に訴えるように目を見開いていた。
「ロ、ロイ! 光! 光出てた! え、なんで!?」
「は?」
「だから! 光! んー、もう自分で見て!」
そう言うと、ユナがいきなり俺の口を唇で塞いできた。
「むぐっ……」
(見る? 見るって何を)
ふわりと、またあの感覚が全身を包む。ユナの唇はやっぱり柔らかくて、その心地よさに委ねるように俺は目を閉じた。
「もうっ! 目瞑ってどうすんの! 開けてて!」
口を離してそれだけ叫ぶと、ユナがまた、むぎゅっと俺の口を塞ぐ。
(怒られたんだが)
意味はさっぱり分からないが、仕方ない。今度は言われた通り、しっかり目を開けたままユナを見つめる。だがすぐに、俺は息を呑んだ。
ふわり。
口元から淡い光が零れ、ゆっくりと俺たちを包み込んでいく。柔らかな光は波紋のように静かに広がり、部屋の中を優しく金色に染める。
(は?)
驚きすぎて、唇を重ねたままだということさえ忘れていた。目の前ではユナも大きく目を見開いている。
(何で、光が……)
見間違えるはずがない。もう何度も見てきた、あの光だ。カイルの時と同じくらい――いや、それ以上に眩しく輝きながら、光は次々と溢れ出していく。
俺たちは互いを見つめたまま、ただ呆然と光に包まれていた。




