第百七十八話
いやー上手く行ったな!
俺は目の前を走る車を追いかけながら、我ながら上手く行ったことに内心結構喜んでいた。
俺の目はどういう訳かマナしか映し出すことしか出来ない。そのため日本に帰るのはいいが、何も見えないという事態に陥ってしまった。こんな事なら異世界で出会った人たちで誰か一人連れて来るべきだったが、奴から漏れ出たマナの残滓を見つけたのが運の尽きだった。
噴きあがるマナを見つけそこまで跳躍するまでは良かったかもしれないが、何かのビルに当たってその場の人たちと一悶着あったり何かして完全にマナが噴きあがった地点を見失った時は頭を抱えたが、そこで妙案を思いついた。
何も見えないがマナを宿していれば問題なく見える。たまたま俺が不時着したフロアにマナを宿している人がいてしかも俺の暗示を聞くことが出来た。
どうやら俺の暗示スキルはマナを宿したモノ限定というここに来てマジかよと言いたくなる事が発覚する事態になったが……まあそれは置いといて。
妙案というのは単純。見える人に案内してもらおうというものだ。
暗示スキルで男の人に奴が暴れていた場所を教えてもらい、そこまで跳んで行く。結構ガバガバだが相棒が上手く跳ぶ場所や力加減などを調整してくれて、そこまで行くことが出来た。
奴が直近で暴れていたおかげ?でその場に近づくと抉られた地面などが俺の視界にも映った。
完全に奴を逃がしてしまい、再び振り出しに戻ってしまったが、俺が着地した場所の近くに運よく俺の目に映る人が居た。
・・・
「おい、奴の動きが止まったぞ」
双眼鏡の先で黒い異形の魔物が項垂れてその場から動かなくなっていた。見てるだけで心臓が握り潰されるような気がして、本能が今すぐ奴を見るなと警告してくるがそれを何とか抑えつけて魔物を監視し続ける。
「これからどうなっちまうんだ……奴が通った跡を見たか? 何もかもが崩れて何も残らねえ。ハッキリ言ってこんなとこに居るだけで気がおかしくなりそうだ」
「落ち着け。牧田さんが今こっちに向かってる。それまでの辛抱だ」
「来たところで何が出来るってんだ!」
奴の今までの所業を考えれば、自分達より数倍強い人間がこの場に来ても何の事態解決にもならないのは容易に想像できる。
だが牧田本人に連絡を取った隊員だけはどこか謎の確信があった。
「黙れ……牧田さんには何か考えがある。それを信じろ」
「そんな……こと、言っても……」
「いいから黙って……っ!? 奴が動き出したぞ!!」
魔物は地面に体を何度も叩きつけ、靄の触手を伸ばし辺り一帯に破壊を撒き散らす。
「こんだけ離れてんのに!? 奴からもっと距離を……」
その時、触手に薙ぎ払われ支えを失ったビルの上半分が崩れ落ち、不運にも隊員たちに向かって倒れ始める。
これだけの質量に押し潰されてはいくらマナでガードしても一溜まりも無い。
徐々に迫るビルの瓦礫が視界を覆いつくし、嫌だと思ってもその先に待ち受ける運命を心のどこかで受け入れてしまった。
目を瞑り、迫る現実を視界からシャットアウトする。
数秒が経つ。
ビルの落下速度的にもう既に自分を押し潰しているはずだが、未だにその衝撃は伝わらない。もしかしてそれすら感じずに死んでしまったのかと思い、恐る恐る目を開く。
それを直視した瞬間、隊員は気を失ってしまった。




