第百六十三話 序章
「ふぅ……」
サラは深いため息を吐く。長い戦いを経て生き残った事の安堵なのか、蓄積された疲労や緊張から解放されたからか、よくわかってなかったが兎に角体の中に溜まった何かを吐き出さずにはいられなかった。
その場に倒れて何も考えずに眠ってしまいたいがそうも行かない。未だ呆気に取られる仲間たちにサラは声を掛けようと取り敢えず一番近くに居るレックスに声を掛ける。
「立てるか?」
「あ、ああ」
そう言って手を地面に付いて立ち上がろうとするが途中で態勢を崩してしまう。仕方なく手を貸して起き上がらせ肩を貸そうとするが、あまりの身長差に物理的に貸せない。
「……チッ」
「痛!? 何すんだよ!」
自分の恵まれない体格とレックスの体格差を感じて半ば八つ当たり気味に雑にレックスを地面に降ろす。急に雑に扱われたことに声を荒げレックスが抗議する。
「それだけ喋れるなら大丈夫そうね。ケビン! イブは無事?」
呆気に取られていたレックスと違い事態を素早く察して、ついさっき死ぬ寸前だったイブに駆け寄り怪我の具合を見ている。
大声でケビンに問いかけると振り返り大丈夫そうだと目配せしてくる。それを見て一安心する。
と言ってもケビンに肩を貸してもらって立ち上がったイブは今にも倒れてしまいそうで仕方なくケビンがイブを抱えてやってくる。
「上手く行ったな」
「じゃ無きゃ今頃全員お陀仏だったよ」
「フッ……そうだな」
「おいおい、どういう事だよ?」
イレギュラーは明らかにこちらを格下だと認識していた。ケビンの刀をものともせずイブの蹴りやレックスの雷撃をいともたやすく躱していた。だが、それらの攻撃の中に唯一真面目に躱していた攻撃があった。
言わずもがなサラの槍による攻撃だ。
しかしサラとイレギュラーの力の差は歴然で如何に道具が優秀でも当たらなければ意味が無い。そこでサラは戦いの中、自身のスキルを使い身を隠し潜伏した。
奴が油断する一瞬を狙うために。奴にただ一回攻撃を当てれたのは奴が攻撃を仕掛ける、いや、トドメを刺そうとする瞬間だったことを思い出しサラは一番狙われそうなレックスの傍で今まで待機していたのだ。
「は? 俺を囮に使ったてのか!?」
「仕方ないだろ、それしか思いつかなかったんだから」
「あの時俺がイブを助けなかったらどうするつもりだったんだ? 見殺しか?」
「……。言い訳だけどあれはあたしも予想外だったのよ。怪我を負ってるレックスが最初に狙われると予想してたから。まあ、それを言うならあんたも予想外だったんだけどね」
微妙な表情でレックスが固まる。
「まさかイブを助けるとはね。そこまでするとは思ってなかった」
「チッ、別にたまたまだ! てか、ケビン!! 今思えば手ぇ抜いたな? イブは体張って守ろうとしたくせに俺には刀一本かよ」
「……フッ」
「この野郎」
「あんまりじゃれ合うな、ここは片付いたけど向こうでも何か起きてるみたいだから。ケビン、イブを寄越しな、あんたは代わりにレックスを担いで。行くよ」
これで一先ずは一件落着という雰囲気がサラたちの周りを漂うが、門を目視できる場所に戻った時に目にした光景は。
悪夢そのものだった。




