第十四話
あれから俺の暗示スキルのいい使い道は無いかとしばらく考えていた時、俺はひとつの妙案を思い付いた。どうして今まで思いつかなかったのか今までの自分が情けなくなるが、気持ちを切り替え俺たち二人?と一匹は相変わらずの暗闇を進んでいた。
その妙案とはクラゲちゃんにこの遺跡の出口まで案内してもらうという作戦だ、俺のパーティにか弱い小鳥が一匹追加されてしまったので、いよいよ天井をぶち破る作戦が使えなくなった。そんな矢先に思いついたのがこれだ。
俺はこの世界、この場所に来てから日が浅いし、そもそも下から這い出て来たから上の事なんて知る由もない。だったらこの世界、この場所に俺よりも先に来て住み着いている奴に案内させればいいじゃないかという感じに思いついたのだ。
思いついた俺はさっそく彼女に遺跡の出口まで案内してくれ、と暗示をかけた。すると俺の狙い道理に彼女は俺の前に立ち遺跡を進み始めた。
やはり彼女はこの遺跡を熟知しているみたいで、いくつもの分かれ道があっても迷いなく進んでいくつかの階層を登ることができた。俺が最初に床をぶち抜いて地下から登った場所を1階とするならこれで10階ぐらい上ったはずだ。俺が落ちて来た空間から考えるといくら何でも高すぎる気がするが、まあこれで遺跡を俺が思っているよりも早く脱出することができそうだ。
目下の問題は俺が生み出してしまった、鳥ことピーちゃんだ。安直な名前なのはこの際置いといてほしい。
俺はここに来てから何日か経っているが食事や排泄なんかはしなくても問題が無いため飯の心配はしなくて済んでいるしクラゲちゃんもそういうものを必要とする素振りが一切無いがピーちゃんはそうはいかない。時間たつにつれ、またピーちゃんの元気がなくなっているような気がする。
ピーちゃんの体は石で出来ているが心臓が動いているということは体の中の臓器もしっかり機能している可能性がある。ということは体を正常に機能させるためには飯が必要になる。
草木や、まともな生き物の気配が無いこの空間で飯を調達するのは至難の業だ、ほかの魔獣を仕留めても例えばミラーフェイスの死体なんか食ったら間違いなく体のあちこちに問題が起きるだろう。
どうするか悩んでいるとクラゲちゃんの手が淡く発光する。
ピーちゃんは俺が手に乗せているといざという時、戦えないのでクラゲちゃんに持ってもらっている。ついでにピーちゃんを守るように暗示をかけている。
暗示のおかげかクラゲちゃんはピーちゃんの様子を見ながら、ああして何かしらのスキルを掛けている。スキルの効果のおかげでピーちゃんはかれこれ半日、飲み食いせずに彼女の手の中で元気にピーピー鳴いている。
マジでどういうスキルなんだ?
まあとくに彼女は無理やりスキルを使う素振りが無いので今はとりあえず彼女の好意に甘んじよう。
・・・
新たな問題が発生した。あれから2階ほど階層を登ったがもう五体、魔物と遭遇している。俺が自力で登って来た階層から考えると多すぎると思うのは俺の気のせいだろうか。
戦闘自体は問題ない。が、問題なのはクラゲちゃんがわざと魔物の方に誘導している節があるということだ。道は相変わらず迷いなく進んではいるがここに来て急に立ち止まったり、来た道を戻ったり、何なら階層を降りたりもした。
明らかに不自然な行動に俺も疑わざるを得ない。しかし今になって彼女が俺に対してそんな害になるような行動するとは到底思えない。
それに彼女は俺のスキルの影響下にある。
もしかしたら俺のスキルにかかりすぎて暗示に対して耐性がついて俺の暗示に従う振りをしている可能性も? いや、今でもピーちゃんにあの発行するスキルを使っているし、何より彼女にはあの意味不明スキル名付けて空間断絶スキルがある。
俺の邪魔をしたいならこれを使わない手は無い。いや、あえて使わないのか……
またいつもの悪い癖で考えすぎに陥ってしまった。自分でも直したいとは思っているがどうもこの癖だけは抜けない。人間の頃の俺は悪口とか言われたらすぐに言い返せない性格だったに違いない。
そういえばクラゲちゃんに対する好意的な感情が少し薄れている気がする。嫌いになったわけでは無いし、変わらず可愛いと思う。
暗示をかけたあたりからだろうか? 確か俺に能力を使うなと暗示をかけたはずだ。
そんなことを考えていたせいか背後から接近する気配に気付くのが遅れてしまった。
かなり素早くこちらに近づいてきている。自分の背中がぞわぞわと震えて体が俺に危険を知らせてくれる。ここの連中はどいつもこいつも気配と音を消すのに長け過ぎだと思う。
俺は咄嗟に彼女を抱き寄せ辺りを警戒する。気配は上下左右に移動しながら俺の周りを這い回っているがすぐそこに気配がするのに相手の姿は見えない。
試しに気配のする方に尻尾を振り払ってみるが壁を壊すだけで相手に当たった感触が無い。敵の反撃で俺の背中に衝撃が走り、こちらもまた尻尾で反撃するもこちらの攻撃が効かない。間を置かず鈍い衝撃が体中に走る。
このままじゃジリ貧だ、どうにかして反撃したいがクラゲちゃんたちを巻き込みそうで攻撃できねえ
守りながら戦うのがこんなに難しいとは、それも戦えない原因が自分の力が大きすぎるが故に非常にもどかしい。そんな俺の心情など無視して敵の攻撃の手がさらに激しくなる。この攻撃がいつか彼女たちに当たってしまうかもと思うと心配で仕方ない。
すると俺が体で抱え込んでいたはずのクラゲちゃんたちの気配と感触が同時に消えた。敵の攻撃の激しさが増していてすぐに気付かなかったが、これはおそらくクラゲちゃんのスキルだ。自分たちが戦いの妨げになっているのを察してかスキルを使い一時的に身を潜めたみたいだ。
クラゲちゃんはたまに鋭くこちらの考えを読んで行動してくれる。最初は俺のスキルによって彼女に俺の考えが伝わっていたのかと思っていたが、どうやらそれだけでは無いらしい。
彼女のスキルかそれともただの勘か、どちらにせよ今の状況を考えるとすごくありがたい。俺は抑えていた力を一気に解放し敵の雨のように降りかかる攻撃を振り払う。
俺の予想外の力に怯んだのか、姿の見えない敵からの攻撃がやんだ。だがこの戦いをやめたわけでは無いみたいで、まだ周囲には気配が漂っている。
さあ、反撃と行こうか。




