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第十三話

 闇深き地の底に眠る壮大で神秘的でどこか不気味な遺跡の中に似つかわしく無い一羽の鳥。パタパタと懸命に羽を動かして必死に宙に浮いている。まるで飛び方を今まで忘れていて、ついさっき自分が飛べることを思い出したかのように。


 一羽はそのまま暗い道をぎこちなく飛び続ける。まるで何かに呼ばれるように。だが努力虚しく体力の限界か地面が徐々に近づいてきてそのうち地面に足を付いてもう進むことはできない。歩いて進もうにも余力は無く自分の体を支えることができず、その場に倒れこむ。


 このままではこの哀れな小鳥はそのうち命を落とすことになるが、そんな哀れな小鳥に歩み寄る影が一つ。影から優しそうな、しなやかな手が地面に伸び倒れている鳥を優しく拾い上げる。


 闇の中から現れたのは大きく何もかも包み込んでしまうような包容力に頭のクラゲのような傘が特徴的な女性だ。掬い上げた小鳥を見つめた後、彼女の傘から複数の触手が伸びての手の中の小鳥に向けられる。すると触手の先端が発光しその光が包み込む。


 完全に暗闇の空間で微かでも光が生じるのは彼女にとってよからぬ者を呼び寄せる危険性があるが彼女は露ほども疑わない。なぜならそのような存在から自分を守ってくれる絶対的な者の存在が彼女のそばに居るからだ。


 彼女の光がその明るさが失われ、辺りが光の存在を毛ほども感じさせない暗闇に包まれたとき彼女の手に包まれた小鳥が再び起き上がり辺りを見回した後、彼女を見つめながら元気よく鳴いている。


 本能的に自分を助けてくれたのを理解しているのだろう。その様子に彼女は満足そうに微笑みそのまま小鳥を抱え込みながら彼女の主の元に駆け戻る。






 ・・・






 クラゲちゃんの手の中には俺が暗示をかけ自分のことを鳥だと思ってる瓦礫の欠片がピーピー鳴いている。


 目の前で起きてる事が衝撃的なことの連続のため整理する時間が滅茶苦茶欲しい。瓦礫にこっちにこいと暗示をかけたらズルズル体を引き摺りながら向かって来た。 不気味すぎる


 次に自分は鳥だと瓦礫に暗示をかけたら、徐々に瓦礫が鳥の姿に変わっていって、しまいには飛び始めた。それで終わりかと思ったら()()()のどこから声を出してるのか分からないがピーピー鳴き始めた。 意味が分からない


 てかクラゲちゃんから触手が生えて、光って、弱った鳥が動き始めた……

 はあ?


 いや回復スキルは向こうにも持ってる人がいたから珍しい物じゃないけど、それにしたって何処を治した? それじゃ無きゃその鳥に何をした? なんで(おまえ)は「助けてくれてありがとう!」みたいな雰囲気でピーピー鳴いてるんだ。


 俺はただ視界に映る光景を口を半開きにしながら眺めることしかできなかった。しばらくこの光景を眺めているとクラゲちゃんが自分の成果を見てほしいのかこちらに鳥を差し出してくる。


 我に返った俺はとりあえず鳥を元の姿に変えようと鳥を掴もうとすると、それを察してかクラゲちゃんは素早く腕を引き、鳥を俺から隠してしまった。呆気にとられたがクラゲちゃんが大事そうに鳥を見ているのでしょうがなく元に戻すのは止めておいた。


 それよりも大事なのは俺のスキルついてだ、このスキルは相手に俺の指示やお願い、命令、さらには俺の気持ちや感情を相手の無意識に送るスキルだ、送った後の行動は言ってしまえば相手次第だ、暗示を受けっとった相手は無意識に思ったことに違和感や嫌悪感を感じれば暗示通りに動かない。


 そういった知能と言うか自我とも言える精神が大なり小なり備わっていれば俺の暗示を振り払うことができる。ではそういうものが無ければ?


 瓦礫には勿論だが思考や自我、意識と言った物は備わっていない、暗示という言葉通りなら意識の無い瓦礫に暗示をかけても意味が無いはずなのだが…… 


 今起きた結果とこの考察で俺の頭から導き出される結論は、意識の無い無機物には俺の暗示が際限なく効くということだ。 馬鹿が考えたスキルか?


 どんな最強スキルだ!? 意識があると暗示が効かない可能性があると言ってもクラゲちゃんで試した時のルールさえ守ればそんなの些細な問題だ。



 やべえ



 自分の未熟な語彙力ではこれで精一杯の表現だ。すごすぎて高揚感が湧くと同時にそれ以上に、このスキルをどう使っていけばいいのかという困惑が溢れてくる。


 チラッと彼女のほうを見ると鳥と楽しそうに戯れてる。決して羨ましくなった訳では無いが俺は彼女のほうにより手の中の鳥を覗き込む。


 クラゲちゃんも察してか手を差し出し鳥を撫でることを促してくる。俺はそっと割れ物を扱うようにやさしく指先で触ってみる。


 質感は完全に石、それも体から生える羽の一枚一枚がしっかりと石で出来てるようだった。だが鳥の動きを見る限り石のような硬さは無く体は問題なく動いている。

 撫でると石の感触はすれど本物の羽毛のように撫でた場所が沈み込み、目で見る情報と手で触る情報があまりにも乖離しているため頭がこんがらがってくる。


 自分の手に乗せもっとよく観察すると、トクトクと小動物特有の速く何処か頼りない感触が指先に伝わってくる。自分の中にある、それが紛れもなく生きてるという事実にハッとした後、自分の手からピリピリと力が抜けていく。


 触っていた手をそっと離し鳥をクラゲちゃんに返す。俺は振り返り道を進み始める。当然クラゲちゃんもそのあとを付いてくる。


 歩きながら俺は自分のやったことについて考えていた。あの鳥を最初はただ瓦礫が鳥の形を成しているだけだと思っていた。だが違った…… 

 あれは紛れもなく今を生きていてそして、これからも生きていく。あれを元の瓦礫に戻せるかは正直分からない。あの鳥は意識の無い瓦礫から自分で考え行動する自己が備わってしまった。

 今から、お前は瓦礫だと暗示をかけても芽生えた意識が違和感を感じて暗示を振り払うかも。そもそも自分で生み出したものをそんな簡単に消してしまってもいいのか?


 クラゲちゃんに拾われる前に懸命に飛んでる姿を見た、あの時は特に何も思わなかったが今は違う、あの時のこの鳥はたぶん苦しかっただろうし、怖かっただろう。周りは暗く何も見えなくて突然この場所に放り出されて自分が何なのかどうしてここにいるのかわからず教えてくれる奴もいない。



 俺も似たような体験をしたからわかる。まさか俺自身がそういうことをしてしまうとはな…… もうこんな命を作るような使い方はしない。絶対に


 それと、この鳥にもっと安全で問題なく生きていける場所を見つける。



 俺は固く心に誓う。

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