0.好き
ほんの少し真面目。
シリアルくんが出ます。
シリアスくんは逃げました。
私が15歳の誕生日で魔法使いのスキルを受け取ってから数日。まだほとんど使えていなかった時。
軽く散歩している時にふと耳に入ってきた話し声。
「あいつうざくない?」
「あいつって誰よ? 勇者勇者うるさいやつ?」
「そいつといつも一緒の女よ。ちょっと見た目がいいからって、また告白されたらしいじゃん」
「あーね。どうせいつも通り断ってるんでしょ? これで何人目よ?」
「知ってるだけで6人は超えてる。しかもその中には隣の学校のイケメンもいるって噂もあるし、有り得ないんだけど」
「うわーないわ。しかも断る理由全部好きな人がいるからって言ってるらしいし、あの勇者バカのどこがいいんだか」
「見た目は悪くないけどそんだけじゃん? うるさいしバカだし。脳みそあんの?って感じ」
私は別にいい。嫉妬は慣れてるから。でも、あいつの悪口はいけない。それを言っていいのは私だけ。何にも知らないやつが、軽々しく言うのは我慢できない。
そう思った途端、私が制御していない魔法が出てきた。それも複数、続けて。
いつもならそのまま立ち去って。少し腹立つけどあいつと騒いで忘れるのに。
タイミングが悪かった。たまたま、魔法使いのスキルを受け取ったばかりで、使いこなせていない時だったから。
火が、水が、風が、土が、雷が、氷が、岩が、光が。
様々な属性が行き場のない感情を暴走させる様に。
否、行き場はある。悪口を言っていたやつらに。
「え? は? ちょ、なに?」
「やばい、逃げるよ!」
「あ、うん」
2人いた内の片割れの判断が早くて助かった。あと少しで私は人殺しになるところだった。
それでも多少傷ついて血を流していたのは、少しスッキリしたけど。
そんな冷静な私の感情とは裏腹に、魔法の暴走は止まりそうになかった。
周りの道や家を破壊していく。威力はそこまでないから、被害が少なめなのは助かった。通報してる人がいるだろうから、スキルの暴走に対処する人達も来るだろうし、きっとそのうち止むだろう。
安堵したのがいけなかったのか。
遠目にあいつがいるのが見えた。
今の私を見てどう思うだろう。怖いと思われたかな。自分を制御できてない、ダメなやつって失望されたかな。近づくな、なんて言われたら立ち直れないだろうなぁ……。
そんな私の考えと違ってこっちに近づいていた。
まだ魔法の暴走はしていて、私の周りは酷いことになっている。燃えている庭もあれば、凍った窓もある。バラバラになった植物も、地面にめり込んだ岩も。
「なんで近づいてるの? 馬鹿なの?」
「……」
あいつは答えない。聞こえてないのかもしれないけど。
やめてよ、近づかないでよ。
右腕に炎が、左足に風が。傷ついて血を流しているのを見て、目を強く瞑った。
「こないでよっ!」
身体を引き寄せられ、抱き締められた。いつの間にか目の前にまできていたらしい。
「だって、お前が泣いてるから。大丈夫だから。俺がそばに居るから」
「え……?」
あいつが真面目な声色なのも驚いたし、かっこいいとも思ったけど、その時初めて自分が泣いていることを自覚した。
暴走していた魔法は、消えていた。
まぁ、その後倒れて、火傷凍傷裂傷打撲等全治3ヶ月の怪我してたのは締まらないけど。意図的ではないとはいえ、私のせいで怪我したから私が言える義理もないけれど。そんなことも感じさせずに、あいつは2ヶ月もしたら、完治したと言ってはしゃいでいた。
私は、そんなバカなあいつのことが大好きらしい。それはそれとして。
「スキルもなしに魔法に突っ込むとか馬鹿なの? 死ぬの?」
「すいませんでしたァーーっ!」
悪口言ってる2人の内片方は純粋な嫉妬、片方は話を合わせてました。
何気に主人公かなり我慢してます。種類の違う怪我で痛みがやばい。それを見せないんですね。尊い




